〈4〉
「では、よろしいでしょうか?」
ルオンは宙にメモ用のボードを表示する。
「ドゥニア様を元気づけるには、といえば現王様が今お考えのことは何かありませんか?」
「今考えていること…。俺が何かドゥニアに…。」
「ふわふわされてますね。」
その何かを相談しに来たつもりである。
ルオンは手を組み直しメモボードの前に立つ。
「現王様からドゥニア様に、では解決しないのです。」
ペンを取りスラスラと電子のボードに何やら描いている。六人分のデフォルメされた似顔絵。それぞれの顔の下に名前を記しておく。
「あ、絵うまい…」
「ありがとうございます。」
些細なところでわかりやすい絵をかける人というのは非常に頼もしい。ただ、どうして今みんなの顔をかいたかはわからない。相談なら話したことのメモでは…。
「ドゥニア様が落ち込んだ原因は先の現王様への感謝のおもてなしがうまく行かなかったことにあります。」
「二人にお礼を言ったんだけど…それがまずかった?」
キュッキュッと大一とドゥニアとシーラの似顔絵の間に線を引っ張って相関図のようにしていく。
「それはさほど問題はないでしょう。おそらくですが――」
ルオンが振り返る。
「現王様、お礼というのは何に対してのものでしたか?」
それは当然、
「ドゥニアが楽しませてくれたことと、シーラが助けに来てくれたこと、だな。」
ルオンも大げさにうなずく。だが肯定するつもりはなかったようだ。
「それです。現王様がお礼を言ったのは内容ではなく、行動自体に対するもの。」
「な、なるほど…。」
ルオンのおかげですぐにわかった。楽しんでもらおうとしてたのに、その楽しんでもらおうという気持ちを褒められてもあまり嬉しくはない。必要なのは、ドゥニアがしたことが成功することなんだ。大一は納得する。
「つまりドゥニアにもう一度なにかしてもらうのが正解…?」
「ほしがりさんですね。」
「い、いや厚かましいとは思ったけど!」
手の平を突き出してブンブン振ってみせる。
「リベンジのきっかけがないなら作ればいいのです。ただまた現王様がなにか手伝って、お礼をして、では時間がかかる。」
のであれば。ルオンが部屋の隅で待機していた侍女に何かのパンフレットを取り出させる。
「こういうときは行楽です。一緒に計画を立てることがいいかと。」
何気なく受け取ったが、この世界では貴重な紙媒体のパンフレット。厚紙で少し表面に光沢加工をされており高級感がある。ただ内側の折り目が少しクタクタしているのに気がついた。
「もしかして…ルオン、こういうところに行きたかった?」
「……」
ラインマーカーはないものの、読み込んでいることが折り目や少し水分を吸ったページからわかる。
「まさかドゥニア様のことを思って先程用意していたものです。」
「こんなにしっかり読んでるのに?」
「な…」
驚くルオンをみるのは少し珍しく、少しだけからかってみたくなった。
「バレてしまいましたか。まさかこんなに鋭い目をお持ちとは…。」
紙が珍しくない世界ではこれくらいはわかりやすい。




