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地球の王のクイーンアソート  作者: アホイヨーソロー
キングスブートストラップ
88/190

〈6〉

 何がいけなかったのか。信用していないなんてことはないのに。頭の中でどうしようもない思いがぐるぐると駆け巡る。

 誰かに聞きたい。あれ、昨日は誰のところに行ったっけ…ルオンとイブの部屋にはまだ足を踏み入れたことがない。モニターで会話をしたあと、仕度を終えた姫を連れ立ってどこかへふらふら散歩に出かける。

 シーラとドゥニアの部屋には入ったことがある。ドゥニアはようやく荷解きが終わってきたのかもので溢れかえって一つの洞窟のようになり始めている。ただし窓の周りだけは何も置かないようにしているようだ。曰く、「太陽の光は大事」とのことである。

(そうか、今日はシーラのところへ行くんだ。)

 一つ一つ考えて思い出せた。マリーとの仲がいまいち良くないが、相談してもいいものだろうか。大一は一瞬冷静になり首をひねる。でも誰かに聞かないとどうにかなってしまいそうである。

 ひとまず謝る、という選択をした場合、マリーはきっと余計怒るだろう。「とりあえず謝っておけばいいとか思ってませんか?」などきつい一言で切られる違いない。

 ドゥニアとは違った意味で狭いシーラの部屋。寝室とは他に、お祈りのための部屋があるのが木星信仰の強いカリスト人らしい。

「…なるほど。ヴィクトレア様が左様なことを。」

 対面に座るシーラがテーブルからカップとり口をつける。穏やかに、真面目に話を聞いてくれたので大一もいくらか楽ではあった。

「それでマリーには、私のことを信用していないのか、って怒られちゃったんだけど…」

「そのようなつもりはないですものね。」

 うんうん、と同調する。

「お聞きする限り、意図がわからない憤慨の相手をする必要はないかと。」

 うーん、と難色を示す。

「俺が無神経な言ったなら、きちんと謝っておかないと。ずっとマリーはもやもやしたまま過ごすことになる、それはダメだなって。」

「お気持ちはわからなくないですが…」

 シーラは別の話をし始めた。

「現王様のおっしゃった、己が『王』だから、というのは、私には『もちろんそうです』としか答えようがありません。『王』だからこそ、尊いもの、尊ぶべきもの。崇め称えなければなりませんから。間違っているのはヴィクトレア様ですわ。」

 シーラは手を合わせる。ちょうど大一がこの前うっかりやった、いただきます、の仕草でだった。

「現王様、ヴィクトレア様は少し思い上がっているのではないでしょうか?本来私達が持つべき崇拝する心を彼女は忘れていらっしゃるのでは。合理性を重んじる火星人らしい考え方ですが。」

「思い上がるなんてない、情けないのは俺の方なんだから。」

「まさにそれです。」

 ピシリと姿勢を正してシーラが指摘をする。どれがそれかわからない大一は、何故かキョロキョロとあたりを見渡す。

「己が悪い、己のせいである。このように患う必要は全くありません。」

「私が現王様をお支えします。どうぞ、もっと自由になられてください。」

 そう言って微笑むシーラから大きな豊かさを感じた。マリーの不満の原因はわからないままだが、多少なりとも心の負担は減ったように感じる。…もう少し原因を探してみよう。

「ありがとう。シーラが聞いてくれたおかげで少し、前向きになれた気がする。」

「そんな、もったいないお言葉です。お力になれて光栄ですわ。」

 深く深く互いに感謝する。

「それと現王様。」

 長居をした去り際に、シーラが呼び止める。ドアの前で振り返った。

「私の願い。守っていただいていることに大変ありがたく思います。」

 これはシーラのためだけではない。仮に誰か一人を呼んでかまわないとなったら自分は誰を誘うのだろうか。大一の全身が熱く火照る。

(いかん余計なことは考えないように…)

 シーラに別れを告げ、頬を叩いて部屋をあとにした。

 扉が閉ざされる。

「この前のは失敗したかに思いましたが、現王様はお優しい。素晴らしい方です。」

 シーラは従者が影に隠れるその部屋で、独り言のように話し始めた。

「そろそろ頃合いかもしれませんね。それぞれ各候補者の情報を集めていますね?」

 従者たちは静かにうなずく。

「現王様は必ず私達の元へお迎えするのです。」

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