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地球の王のクイーンアソート  作者: アホイヨーソロー
サターンリンガベル
68/190

〈4〉

 作業員たちはドカドカと宮殿を後にした。大一、ルオン、ドゥニアの三人はそれの見送ったので宮殿の外へ出ている。

「部屋の片づけはよろしいのですか?」

「うん、あたしが手伝うとごちゃごちゃになっちゃうので。」

「ご自分のお荷物ですのに。」

 ルオンは笑った。

「午後には空箱を回収する業者も来ますよ。」

 ドゥニアがそう告げてくる。

「圧縮して転送すればいいのでは?」

「ドゥニアはどうして人力にこだわるの?」

 これは少し前から大一が気になっていたことである。自分も手伝ったが、ほとんど人間の手による作業で、ここに来てからずっと聞か影に頼りっぱなしだった大一にとっては新鮮であった。

(人力の方がなじみ深くはあるけど。)

 ドゥニアは目をつぶって考えるしぐさをする。

「使わなくても何とかなるから…ですかね?」

「現王様、タイタンの人々にとってはこれが普通、なのです。常識に根付いているため理由などは気にされない方が多いんですよ。」

 そうだと思います、とルオンの言葉に合わせるドゥニア。

 タイタン人のことを脳が調べると、彼らは他の星より離れたところに住んでいるので、自給自足を余儀なくされた人々。困難を解決するすべは自分たちの手の内にある技術が主になる。

 おいそれと近くの星へ救援要請が出せないことが影響して、技術を他の星から取り入れるという発想が出てきにくくなってしまったようだ。

「でも俺はタイタンの人のその、自分たちで何とかしようってのは好きだな。」

「本当ですか?」

 ドゥニアは自分たちを評価されてうれしそうだ。

「現王様も、手作業で手伝われていましたものね。」

 つまらない意地でルオンの提案を断ってしまったのは、大一の心に引っかかっていた。だが、その時は、タイタン人たちのパワーに影響されてか、どうしても自分でやるという気持ちを曲げることができなかったのである。

「ごめん、せっかくルオンに気を遣ってもらったのに。」

「謝らないでください。せっかく現王様がワタクシに歯向かってくれた記念の日なのですから。」

「え?どういうことです?」

 ドゥニアも大一も頭に疑問符を出す。

「ふふ。ここに来てからというもの現王様はいっつもそうやって『ごめん、ごめん』と謝ってばかりで…」

 日が高くなってきて、宮殿前広場には光が集まってきた。そこの真ん中に三人で並んで立っている。

「謝ればすむとお考えになっている節がありますね。」

 大一にもその節は思い当たる。何なら今も「ごめん」と謝ってしまうところであった。

「現王様をワタクシのお尻に敷くのも悪くはないですが。」くすくす、ルオンが笑う。

「せっかく噂と正反対のお方だったのです。少しぐらいああやって我を出していただかないと。」

 ルオンは大一を見てほほ笑みかけた。

 いつも彼女には許されている気がする。彼女のおかげで助かったことも何度もあった。もうすでにお尻に敷かれ始めている気がしないでもない。

「お尻に敷くのならあたしもさっきやりましたよ。」

「うらやましい限りです。ワタクシも後でさせていただきましょうか。」

「い、いやそういうことじゃないよねっ?」

 ルオンはくるりと宮殿の方を向いて歩き出した。彼女は振り返ることなく大一に話しかけてくる。

「でも現王様、この間の『貸し』。まだ返していただいてませんわ。」

 彼女の背を見つめる。今、向こうではどんな表情をしているのか。

「待っていますからね?」

「う、うん…。」

「絶対ですよ?」

「うん…。」

 返す気持ちはあるが、返し方がわからない。期待に沿って見せたいが、期待の大きさもわからない。大一は頭を抱えた。

「現王様、現王様。」

 ドゥニアが袖を引く。大一が小さな彼女と目を合わせると満面の笑みで話し出した。

「でしたら、あたしたちはまた『借り』ができました。必ず返しますよ!」

 ぴょんと大一の目の前で一回跳ねてからポーズをとってみせる。

「何にしましょうか、何がお好きですか?」

「え?」

 急に言われても考えは浮かばない。大一は歩いているルオンの方を見たが、小さく手を振ってその場から立ち去っていく。

「と、とりあえず考えておくよ。そろそろ部屋へ戻ろう。」

 その場をごまかしてドゥニアを引き連れルオンの後を追っていった。

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