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地球の王のクイーンアソート  作者: アホイヨーソロー
サターンリンガベル
67/190

〈3〉

 箱。箱。箱。

 もう何往復したことだろう。部屋には山のように積まれた荷物。せっせと女性の従者たちが箱開けをしている。

「あんまり見られると恥ずかしいですよぅ。」

 もじもじとドゥニアが大一を自室の外へと文字通り引っ張り出す。もうどこにも力が入らなくなった大一はなすがままに放り出される。

 朝から大変な重労働であった。

「現王様のおかげで早く終わったぞ!」

 運搬を担当していたタイタンの男たちはワイワイと外で盛り上がっていた。

 大一は自覚している。あまり自分が戦力にはなっていなかったことを。これは気を使っていってくれているのだろう…にしては喜びようが本当らしい。

「よいしょ。」

 ドゥニアは壁に寄りかかって地べたに座った。作業中はずっと動きやすいズボンだったので気にならないのだろう。

「ドゥニア、椅子持ってこないと。」

 ドゥニアはぽかんとした。

「あ、そう!ごめんなさい現王様、気が利かなくって!」

 小さな丸い腰掛けを一つドゥニアが持ってきてくれた。それに座れということである。

 大一が言いたかったのはそれではない。

「いやドゥニアが座りなよ。お姫様だし、女の子だし…」

 つい口にしてしまったが、自分としては妙にキザったらしい発言で顔が熱くなる。

「ほぉお、地球では女性は必ず椅子に座るものなのですね?!」

 大げさすぎる感心。クリクリとした目が余計に大きく丸く見える。

嫌味ではなくどうもタイタン人はリアクションが大きめなのだろう。

「必ずってわけでは…」

「お言葉に甘えまして〜。」

 ストンとお行儀よく椅子に腰掛けた。

「現王様はどこに座るんです?」

 地べたに座る作業員から声をかけられた。

「えー俺は…」

 考えてなかった。ドゥニアに言った手前、自分が地面に座るわけにもいかない。

「あ、じゃあ。」

 ドゥニアは立ち上がると、大一の手を引いて先程の椅子に腰掛けさせる。

「これはドゥニアが座る場所で…」

「大丈夫、です。」

 ふふんと鼻息を漏らし、ドゥニアは再びストンと行儀よく、今度は大一の膝の上に座った。

 タイタン人はその星の地表に踏みとどまるために背は低く筋力が発達している。故に体のいたる部分は筋繊維でぎっしり詰まっており、見た目よりも重くそして硬い。

 そんなことよりドゥニアの体の感触が大一の全身にダイレクトに伝わってきた。

 あれ、硬いはずでは。

 彼女の腿から臀部にかけて、大一の下腹部に沿うようにぴったりと変形している。

 ドゥニアは大一に寄りかかってきた。

 ほんのりと高い彼女の体温を感じる。バクバクという心音は自分のものなのか、ドゥニアのものなのか。

「んー…」

 じゃれつくようにドゥニアは腰をくねらせる。彼女が動くたびに焼き菓子のような香りがする。大一は全身をピクピクとこわばらせた。

「まあ、現王様。もうドゥニア様と仲良くなられましたか?」

 ふいに声をかけられビクリと跳ね上がってしまった。ドゥニアも驚いて一緒に浮かぶ。

「ルオン…。」

 ルオンは従者を引き連れにこやかに歩み寄ってくる。

「水星の姫様。」

「ドゥニア様、『ルオン』でいいですよ。現王様からもそう呼んで頂いております。」

「ルオン様、どうしました?」

 ドゥニアは大一の上から退くことなくルオンに尋ねる。

「いえ、なんてことはありません。少し羨ましいというくらいで。」

 ちらりとルオンの目が大一を捉えた。

「そちらの方々は?」

 ドゥニアは続けて質問をする。後ろに控える従者たちそれぞれが何かの箱を持っていた。

「朝から作業をされていたそうですし、何かお飲み物を、と。」

 差し出された箱にはドリンクボトルがいくつもしきつめられていた。

「え、いいんですか?!ありがとうございます!」

 ドゥニアはパッと飛び跳ねて差し入れに駆け寄った。ワラワラとタイタンの人々がルオンの従者たちに群がる。

「どうぞ。ご苦労さまでした。これから仲良くいたしましょう、ドゥニア様。」

「はい!」

 コクコクと音がなるくらい頷く。あたりは祭の賑わいである。

「はい、現王様。」

 ルオンがそっと取り残されていた大一に近寄りボトルを手渡しした。

「ありがとう、ルオン。」

 大一が差し出された飲み物を受け取ると、ルオンはスッと隣に腰掛けた。

「ふふ、お疲れ様です。」

 胸元から柔らかいハンカチを取り出して大一の額の汗を拭う。香水の匂いなのか、涼し気な鼻を抜ける香りがした。

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