〈2〉
どんよりとした食卓。マリーもシーラも一言も発さず食事を続けている。ジリジリとレーザーナイフが肉を切る音だけがする。
しかしこんな空気の中、口を開いたのは先程は黙って行く末を見届けていたドゥニアだった。
「現王様、このお料理はなんというのですか?」
ペロリと唇についたソースを舐め取り、ドゥニアが話しかけてくる。
「え?えー、と…」
ドゥニアの小さな手が示す皿に、検索機が動いた。
「ミノヤキ。」
ミノって牛のミノかな?クニクニとした食感はまあそれっぽいといえばそれっぽい。丸ごとなんて豪快だな。
「ミノヤキ。…これは?」
今度は小鉢の方を指す。
「それはウエジかな。」
「ふんふん。じゃあこれはなんです?」
いよいよ得意げになって答える大一。
「イタラー…」
「ンプっ!」
ハッとして音の方に目をやる。
「げっ、現王様。先程から何故…何故、お皿の種類を答えられてるんですか?ククク…」
「えっそうなんですか?!」
えっそうなんですか!?大一も驚く。
「現王様、意地悪です!」
「ご、ごめん…そんなつもりヮ…」
ドゥニアに叱られてしまう。
「ドゥニア様、怒らないでくださいな。察するに現王様は本当に勘違いされていたのかと。ぷふっ…」
皿を示されたから脳は皿の方を検索していたのだ。どおりで食材の情報が出てこなかったわけだ。
「これらは私達それぞれの星の伝統料理がもられてるわ。ドゥニア、料理が知りたかったら私が教えてあげましょうか?」
今日の食卓に並ぶのは確かに色とりどり、というか統一感のない皿。検索しても料理名がよくわからない。それが六品。アラカルトばかり。
「料理の名前は実は俺もわかってなかったんだ。」
大一は頭をかいて言う。
「でも、これだけ集められた理由はわかるよ。」
ドゥニアが大一を見つめてくる。
「こうやって色んな星の食べ物があって、文化の違いがあるわけだから…。お互いにちょっとずつ食べて、わかっていけばいいと思う。」
「現王様…。」
シーラが横でつぶやいた。
ドゥニアは身を乗り出して、訊ね始める。
「え、えっとイブ姫様、このお料理は…」
「ん?これはねえ――」
こうして夕食の時間が過ぎていった。
「ごちそうさまでした。」
大一はもう一度手を合わせて食事を終えた。




