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地球の王のクイーンアソート  作者: アホイヨーソロー
カリストとタイタンの王女
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〈2〉

 応接室で待機するのも三人と喋っていればそんなに苦にはならない。がしかし、

「やっぱり何か手伝ったほうがいいような…」

 そわそわして落ち着かない大一である。

「手伝うっておっしゃっても、特にできることはありませんよ?作業工程を知っているわけでも、知識があるわけでもないですし。」

「そりゃそうなんだけどさ。」

 実際、この脳の学習機能を使えば作業工程と知識はいくらでも手に入る。ただできるかどうかは別問題だ。

「どーっしり構えておられればいいのです。現王様。」

 自分よりもゆったりくつろいでいるイブが言う。

「ここまでだらけきるのも問題ですが、ザハブパトラ姫の言う通り、我々にできることは二人の姫を迎え入れることぐらいですから。」

 考えても仕方がなく、実際その通りである。祝辞を述べて粛々と行うのが入内の儀なのだ。

「でもせっかくはるばる遠くの星から来てるんだから盛大な迎え方をしたいかなとは思うんだよ。」

 ルオンが顎に手を当てて考える仕草をする。

「現王様は、意外と催し物がお好きですよね?」

「え、そうかな?」

「わかる。」

 首をひねる大一と膝を打つイブとマリー。

 しかし思い返せば、パレードは自分から迎えに行く形になったし、ただの散歩にプレゼントを贈るし、舞踏会ではあの騒ぎだ。元の世界の行事は頑張っていただろうか…。

(いや、頑張ってたのは…)

「?…現王様?」

 急に黙ってしまった大一は、よほど真剣な表情だったのだろう。姫たちから覗き込まれている。

「何か面白い計画をご思案あそばれてます?」

 くすくすとイブが聞いてくる。そうからかい気味に言われて困り顔の大一に、マリーが横から体ごと割り込んでフォローをする。

「流石に此度は時間がありませんよ。」

「あら、ローズマリー。あなた、舞踏会であそこまでしていただいて今度の二人には何もなしでいいと言うの?」

 至極まっとうなことを言ったはずのマリーがなぜか痛いところをつかれる形になる。

「そ、そういうつもりではないですけど…。」

「イブ、マリーの言う通りたしかに今回は準備時間がないからできることは少ないんだよ。」

「はい、失礼しましたわ。」

 マリーをかばう大一に対して姿勢を正してペコリと謝罪をして見せる。

「……みんなは木星と土星のお姫様のことは知ってる?」

 三人はにべもなく首を横に降る。

「そもそも、ワタクシたちはここに来るまでほとんど面識がありませんでしたから。」

「それぞれの星の住民の気質ぐらいならわかりますけれど…」

 そのあたりは検索でもわかる。

「星巡りをしていただいていたら悩まなくともよかったですね。」

「も、申し訳ない…」

 本当は自分の責任ではないが、彼女たちを落胆させたであろうことは容易に想像できる。初顔合わせの機会がこの代にはなかったのだ。不服に思うのも当然だろう。

「そういえば何故、巡行をされなかったのですか?」

 マリーが訪ねてくる。

 本物がいなくなったから。などとは口が避けても言えない。大一は胸が押しつぶされそうな思いだった。

「…また何か隠していらっしゃいますね?」

 押し黙ってしまった大一を見て、マリーはズンズン切り込む核心に迫りそうな勢いをもつ。イブが大一の様子を慮りマリーを制止しようと手を伸ばすが、マリーのほうが先にふっと力を抜いてしまった。

「…時が来たら、仰って下さいね。現王様も私のことをそうやって受け入れてくれましたから。」

 ふふっと顔の筋肉をほころばして現王様の手をとった。それでも大一の暗い表情は崩せなかった。

 そんな時にユエが扉をノックして入ってくる。

「現王様。姫君の入内の準備が整いましたので、お迎えを。」

 慌てて返事をしてから、いまだつけ心地の悪い冠を頭に乗っけた。

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