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地球の王のクイーンアソート  作者: アホイヨーソロー
スターダストダンスホール 後
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(7)

 大一はようやく落ち着きを取り戻した。

「ローズマリーは基本の動きはできてますが、踊りたい踊りが特にないのでしょう。」

 マリーは見栄っ張りだと二人が言う。自分が不利になるようなことはなかなかしたがらない。この三日間の一人ひとりのダンスレッスンは結構なプレッシャーだったのではと分析する。

「じゃあ俺が負担を…」

「全てをご自分の不徳のなすところとされてはいけませんよ。」

 ピシャリとイブがたしなめる。

「現王様のように正直に言ってくださればよかったんですから。」

「でもおっしゃっていたら現王様が『俺と一緒に練習しよう!』などつきっきりになってしまう可能性もありましたね。」

 ルオンが臆面もなく言う。

 イブは頷きはしなかったものの、多少そう感じていたのか無言のまま目を閉じた。

「ともかく、マリーに関してはそこまで気をもまれなくて平気ですわ。」

 イブは大一を慰めてくれた。

 前々から薄々気づいていたが、彼女たちは自分よりも遥かに立派だ。立場はもちろんだが、気丈でずっと前から覚悟を決めてここに来ている。周りに翻弄される人生に嘆き続けてはいないのだ。そのあたりが大一にはまだできていなかった。

(人生まるごと奪われているとはいえ…いつも俺、情けない姿を晒してばっかで…)

 マリーのため息は確かに踊りが苦手なことが原因だとしても、フォローしてあげることができたのではないか。これは、嫌われないが好かれもしない…。

「現王様、それで明日は…?」

 大一はハッとした。

「踊りの相手はいかがしますか?」

 イブとルオンが大一の前に並ぶ。だが大一は違う答えを出す。

「この三日間、楽しかったんだよ。ダンスとかしたことなかったけど、自由に動けて。」

 望んでいた話ではないが何やら重要そうな顔を大一がするので2人は大人しく待つ。

「みんなのことも少しずつだけど教えてもらえたし…」

 検索機では決して引っかからない三人の姫たちのこと。ようやくわかった。三人のことは三人に自分から聞かないとわからないのだ。当たり前のことなのに忘れていた。何が全知だ。

「それでダンスについては一つ考えてることがあって。二人にちょっと協力してもらいたいんだけど、いいかな?」


 ユエが甲斐甲斐しく寝室を整えて大一の周りの世話をしている。この前のこともあり、ユエたち世話役の部署には不信感が募っている。だが今回、彼女の言っていたことがわかった気がする。

「ユエはさ。」

 はい。とベッドメイキングをしながら脇目も振らずユエが応える。

 ベッドメイキングぐらい機械にやらせればいいし、ベッド自体にその機能をつければいいのに。せっせとシーツの表面をなでてシワの無いようにするユエを見て思った。

「もしかして俺を焚き付けてくれてたりするの?」

「何に対してですか?」

 枕をポンポンと何度か叩いて中の空気を調節する。自分が知ってる時代の枕はすでにそれが必要ないぐらいのものもあった気がするが…。

「いや、俺の情けないことをわざと…その、指摘してさ。俺が行動するように仕向けることが目的なのかなって…。」

「現王様がお悩みのようでしたから、正直に答えたまでですよ。」

 パンッと掛け布団を広げてベッドにかける。

 あの時は質問と答えがあってない感じがしたけど…。

「じゃあ俺がユエに失礼なことをしたから怒ってたり…」

「さて?」

 うそぶいているのか、本当にそうは思ってはいなかったのか、鉄面皮は崩れない。

「明日は早いのですからそろそろご就寝なさってください。」

 ポンと楕円型着替え用クローゼットから吐き出される大一。寝間着姿である。いつも前触れがないので着地のときによろめく。星の位置関係上、早朝に出発したほうがいいらしい。天体図が流れて計算式も書かれているが理解できなければそれはただの絵でしかない。

「ではおやすみなさいませ。」

 もはや誰も呼ばないことが当たり前となった王の寝室。ユエはそそくさとそこから立ち去っていった。

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