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地球の王のクイーンアソート  作者: アホイヨーソロー
スターダストダンスホール 後
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(2)

 ルオンがそっと見上げる。

「タイチ様。」

 こんなに近くにいるのに彼女が自分のことを呼ぶ。高鳴る胸の音が相手の肌に触れて自身に返ってくる。

 ユエが言ったことがどうしても頭から離れない。だけどルオンが言ってくれたことも離れない。

「タイチ様はワタクシ達とどのようなことをしたいですか?」

「え、それって…どういう…?」

 クスクスと手を添えてルオンが笑う。

「イブ様から伺ったのです。ワタクシ達みんなを幸せにしていただけるとか。」

 たしかにそう言った。大一は覚えている。

 ルオンは大一の胸に頬を当てた。

「それなら…タイチ様にも幸せになっていただかないと。」

 まだ自分は彼女たちの『現王様』でいていいんだろうか。自問する。

 そしてどうしてもここで聞かなくてはならない、心残りがあったことに気づいた。それを聞いてしまうと自分の心を保てなくなる気もする。それを聞いてしまうともう彼女たちと笑いあえなくなる気がする。だがそれでも。長い沈黙が破られる。

「………ルオンはどうして俺のいうことを信じてくれるの?」

「え?」

 急な質問に一瞬戸惑う。いや、これは今彼が一番聞きたいことなのだろう。心に収め、落ち着きを取り戻して応える。

「それはあなたが…」

 この問をするのが嫌だった。彼女たちは自分が現王様だから近くにいてくれる。大一などどうでもいいと考えてしまう。

「ワタクシを信じてくださるからです。」

 彼女はにかんで目を伏せる。

「噴水広場で出会ったあの時から、ずっと素敵な方だと想い慕っておりました。」

 バカ真面目すぎるとは思いますが。と余計なことを笑って言う。

「でも俺は…」君に何も。

「これから立派になればいいではないですか。プレゼント贈呈もパーティでの踊りもできるようになりましたし。」

 ツンと鼻先を人差し指で突かれた。

「マリー様のことでお悩みなのでしょう?」

 それは半分正解。

「正直、他の候補者に塩を送るマネは以前のワタクシなら絶対ありえないのですが。」

 するりと腕を大一に巻き付けてく。

「マリー様は実はかなり真面目な方なのですよ?タイチ様はあのダンス中のムスッとした表情にやられたのですね。」

 そう、最初の悩みはそれだった。

「あの時タイチ様がワタクシ達とどんなダンスを躍りたいと言ったか覚えておりますか?」

 誰とでも踊れるようになる。大一はようやく自分が行ったことの軽薄さに気づいた。

「ワタクシも他のお二人も」ルオンのぷっくりした唇が耳元でささやく。「特別にされるのが好きなんですよ。」

 ビクビクッ!

 急な刺激に全身に緊張が走ってしまう。

「ご…」

 ルオンはすかさずその指で対地の口を塞いだ。

「許しませんよ。」

 それでも柔らかな表情のルオン。

「今度のダンスパーティでワタクシも待ってますからね?」

 待ってる。俺を待ってくれてる人が少なくとも三人この世界にいてくれる。大一の足はもう宮殿を向いていた。

「そういえば、ルオンは何しにここへ?」

 ルオンの方ももういつもの調子に戻ったようだ。

「ふふ、あれです。」

 外壁を指差して、スカートもあげずにそこまで掛けていく。見ていると壁についた何かを引き抜こうとしていた。

「手伝うよ!」

 慌ててルオンに駆け寄る大一。彼女の柔らかな腰に腕を回す。

「んんん〜〜!」

 結構ガッチリとハマっている。大一もルオンの後ろからその物体に手をかけた。

「んんんん〜〜〜〜!!」

 二人で一緒になって力む。少しグラついたと思った瞬間。

「わっ!」

 ズルズルとその物体が引き上げられた。大一肩幅ぐらいの黒い筒。いや小型の銃砲にみえる。

「これ…」

「水柱を立たせるためにですね、これで堀をズドン!と。」

 ルオンがグーで空をパンチして見せる。

「あの時の。」

「そうですあの時の。あ、ご心配なく。極めて安全ですから。」

 なんの合図か手をひらひらとさせて見せるルオン。

「それは安全でも他の人が門を通る前にルオンの部下たちがこの敷地内に配置されてたってことだよね。」

「ふふ、ごめんなさい、タイチ様。」

 割と大問題なのだけど。

 まあ、地球の人たちは『王』に関心がないから、いいか。

「許さないよ。」

 大一もいつの間にか笑ってそう答えていた。

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