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地球の王のクイーンアソート  作者: アホイヨーソロー
コスモスを添えて
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(3)

 大一はまずユエに聞くことにした。

「今回は誰を選ぶとかじゃなくてみんなと仲良くしていきたいんだよ。だからおすすめの場所とかは…。」

「検索されてみてはいかがですか?」

 すでに脳内には大人数で行く候補地が浮かんでいるけれど、そういう検索に引っかかるのはやはりというか俗っぽい場所ばかりだ。一般人の大一としてはその方が落ち着くが、高貴な人を連れまわせるような場所が出てきていないことぐらいわかる。それに例えばお忍びといっても3人の姫とそのボディガードとでかなりの大所帯になるのでどうやっても目立つ。

「ううん…」

 余り危なくなくて、大人数で行けて、俗っぽくないところ…。21世紀市民の限界である。わからないからユエを頼ったのになぜか答えてくれない。大一は半ばあきらめるように笑っていった。

「雲の上とかかなー」

「なるほど。それは妙案かと存じます。ただ高度が高すぎると防寒着を着こまなくてはいけないので、ほどほど高さで。」

 そういうとユエは端末をいじりさっそく何かの手配をしているようだった。あまりにあっさり自分の案を決定されたので大一は焦って遮った。

「待って、待ってって!え、空って?大丈夫なの?というかそんなすぐ決めちゃってもいいの?」

 ユエは不思議そうな顔をする。

「すぐ決めないといけないではないですか。それに現王様がいきたいといえばみなついてきてくれますよ。」

「そうなんだろうけどさ…」

 これからみんなと向かい合っていこうというのにここで失敗を重ねたくはない。慎重に動きたくなるのも当然なのだ。

「では一日中ここで悩んでいますか?」

 昨晩喝を入れたからか大一への意見が強めになったようである。彼女見ると心なしか冷めたような据わったような目つき。だが確かにユエのいう通り、こじれそうな関係をつなぎとめるにはすぐ動かなくてはいけない。

(何もわからないわけだし、時間かけるだけかけて失敗したんじゃ意味ないもんな…。)

 幸い今の大一は現王様なのである。多少のミスも許されるような立場だからこそ、思い切りがよくないといけない。大一はそう考えて納得させた。

「よし、じゃあ今日はみんなで外へ行こう。飛行機かヘリコプターが必要…」

 ではない。この世界ははるか先の技術。空中遊泳、とまではいかないが金星が誇るフローティングシップがある。その大きなビークルに乗り込みのんびり空の散歩をするなど考えただけでもなかなか悪くなさそうである。ユエの方で準備をしてくれるようだ。そしてもう一つ、大一はユエに訊ねる。

「三人に贈り物をしたいんだけど、どういうものなら喜んでくれるかな?」

 これはお詫びと友好の証を兼ねた贈り物。大一は昨夜からそのことについてを少し思い描いていた。食べられるものだとなんだかよそよそしいので髪飾りとかお揃いの装飾品にしようとまでは考えていた。だがユエは少し違った。

「お揃いではダメです。」

「えっ」

 でも平等な感じをだすには…。

「いいですか現王様。」

 ユエがその指を立てていつものようにアドバイスしてくる。

「髪飾り、のようなものを贈ることいいとお考えですが、平等にするためお揃いのものを用意したいと申されましたね。」

 大一は黙ってうなずく。

「そのようにお考えのうちは決して公平な扱いなどできませんよ。」

「その理由は…」

 ユエは首を振ってぴしゃりと言い放つ。

「それがわからなくては『王』ではありません。」

 3人のものはバラバラにした方がいいということはわかった。ユエは取り寄せるための宝飾品のカタログデータを大一に送信し、

「姫君たちにも遊覧のためのお仕度をお願いしてまいります。」

 と言って大一ひとり残し出て行ってしまった。いきなり放り投げられてしまったが、これは自分の問題なのだろう。大一はそう考えて腹をくくった。

(バラバラだと相手の方がよく映って喧嘩になったり値段が高かったりで差が出ちゃう気がするんだけどな。未来人ってそこんところの感覚が違うのかな。)

 ユエの意見がまだ腑に落ちなかったが、急がなくてはいけない。ユエが遠隔タイマーをこちらと共有してくれ出発の時間が脳内でチカチカと点滅している感覚がある。

(あと5時間ほど…)

 出発は昼頃になったようだ。そして品物の取り寄せの時間は30分程度。運送技術の発達にはさすがに舌を巻くしかない。だから考えるのに与えられた時間は4時間半…、いや身支度まで入れると4時間ないか…。

 髪飾りを渡そうとは決めていた。ユエが大一の髪形を決めるときも何やら楽しそうだったのを思い出していた。ルオンは後ろでまとめて上にあげた形。イブはサイドでまとめ肩の方に垂らしている。そしてマリーはショートヘアで駆けたり跳ねたりするとそのさらりとした髪質が感じ取れた。それは立体映像を注視したおかげである。彼女たちは3人とも髪に気を遣っている、そんな印象を大一は抱いていた。

(ルオンが笑ったのも髪の話だし…)

 今は人工毛が植えられている元ハゲ頭を軽く撫でてみる。髪飾りなら間違ってないと思う。下手にネックレスとかだとイブはもうすでにかけるところがないぐらい身にまとっているし…。いろいろカタログ内を検索してみるがいまいちピンとこない。それどころかアイテム数が膨大で一つ一つ調べるのが少しくたびれてしまいそうだ。

 だがそれをやらずして何が謝罪か、何が有効の証か。眠気と疲れを残しながらも気合を入れなおす。景気づけに朝食用のチューブを引っ張ってきて吸い上げる。当然朝食は終わっているので何も出てこない。口にも疲労感をまとわせながら一つ一つじっくりと見ていった。

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