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地球の王のクイーンアソート  作者: アホイヨーソロー
コスモスを添えて
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(2)

 朝が来てしまった。長時間光を見つめていたせいで眠いのに眠れなかった。目をシパシパさせながら大一は床に置かれているものを見る。

 ユエが用意してくれたホロトークという機械。会話のシミュレーションが主な機能のようだが、ホログラムで投影する人物もある程度自由にメイキングすることができる。この機能が優秀だった。

(学習機能ドライブからモデルを引っ張り出して三人のガワまるまる作れるんだな。)

 ルオンなんて二重の人工皮だし。大一は思いついて笑う。

 購入者から評判のいい機種をユエが用意してくれたおかげでやりたいこと準備することちゃんと整えて翌日に臨むことができた。

(俺、自分のことばっかで人のこと見てなかった)

 ホロトークにはシチュエーション再生機能もある。これで大一の目が捉えていた彼女たちの動きを客観的に見つめ直すことができた。そして自分がしていたことも。相手が好意を示してくれてるのにどうしていいかわからず動かなくなる。マリーに対してがその傾向が顕著だ。しかし逆にルオンに対してはそこまでじゃない。彼女が求めていることをなんとなく察して、彼女が思う通りに応えている。

(なんでなんだろうな…)

 今の大一にはその答えは出せなかった。

 大一のやっていたことは反省。そして三人に謝らなくてはならないと思っていた。

 だからユエに今夜は誰も呼ばないでちゃんと彼女たちと向かい合う準備をしたいと申し出た。ユエもそれを了承しこの機械を寄越してくれた。

 偽物だからとか女の子と付き合ったことないからとかではなくて。

(俺は『王』なんだから。)

 ビシビシと頬をうち眠気が抜けない顔に喝を入れる。ともかくも一晩中彼女たちの虚像を見つめていたのだ、まだ不安は残るが慣れることはできたはず。大一はもう一つ気合を入れ直す。まずは今やれることをやろう。

 コンコンとノック音が聞こえた。大一は防音システムとドアロックに解除命令を出す。この使い方はユエに教えてもらった。

「解除したから。」

「おはようございます。現王様。お加減はいかがですか?」

「うん」

 寝室の中を伺うユエに大一は体を振って元気があることをアピールする。

「…お役に立てたようで何よりです。」

 いつも通りのユエの無表情。始めてみたときよりは柔らかい印象になってきたが、相変わらず感情が読み取りづらい。

「ありがとう、流石にこういうのがあると違うな…」

 ホロトークというらしいこの投影機、ちょっと恥ずかしいがこれは要所要所で役立つだろう。大一は床に設置されたその手のひらサイズの丸い機械をひょいと持ち上げ、邪魔にならないよう窓辺に移動させた。

 朝日が差し込む窓の向こうには宮殿の中庭が見える。中央にはあのときの噴水、下を覗くと飛び石の列がきれいに並んで見えた。この部屋の下から飛び出したあの日のことを思い返して少しだけぼうっと外を眺めていた。

 噴水庭園を挟むようにして他に左右に3つずつ、合わせて6つの棟が整列している。王の棟の対面にそびえるのが宮殿の正面。エントランスから客間から大広場まで。もちろん玉座もこの建物の中だ。はじめは整然とした建物の並びに圧倒されるが、何日も見ているとちょっと物足りな差を感じてしまう。

「朝食の用意ができていますので、お持ちさせます。」

 ユエが先程から黙って外を見つめる大一の背後から声をかけた。

「あ。ありがとう。朝食はみんな別々なんだ?」

 姫が入内してからはおはようからおやすみまで一緒だと思っていたので少し意外だった。とはいえ朝に関しては姫が来るまでとさほど変わらない。ユエが朝一で大一に顔を見せ、朝食を運ばせる。これは大一の中でもだんだんと当たり前になってきていた。

 朝食は大きく凝った料理が出ない。ユエとのこの世界の勉強会があった三日間はスピード優先で流動食を流し込まれた。たまに硬いものを噛まされるぐらいで液状かゲル状の食べ物というかなんというか、味のあるものがいに溜まっていった。食べた感じはないのに満腹感はあるのが本当に残念でならない。

 だが昨日の食事で普通の料理も存在してることがわかった。だから今日からは普通の…

「さ、お召し上がりください。」

 ビニル製のチューブを差し出される。嗚呼…。かの王のお食事を摂られるお姿はチュウチュウと赤子の授乳するがごとし。

 大一が心を無にして淡白な食事を終え、ユエがチューブの先に殺菌機を当てながら今日の予定を告げてくる。

「今日はお三方を連れてご遊覧されるご予定です。」

「それは『王』が決めてたこと?」

「はい。」

 三人を一度に集めて遊びに行くならちょうどいい。大一は支度を始める。

「そうだ、遊びってどこへ行くの?」

「昨晩に呼ばれた方の行きたいところへ。」

「え…。」

 大一は呼んでないのですでに頓挫しそうだ。反省と謝罪が主目的のところに、誰か一人を目にかけていいものなのか…。しょっぱなから出鼻をくじかれそうである。

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