〘4〙
大一が目覚めた場所は少しの物とベッドしかない寂しげな空間だった。黒い窓の先には何も見えない。今は昼なのか、夜なのか。今は何日なのか…。側にあった機械に触れる。
(これはなんの機械だ…?)
ヘルメットのような被り物が取り付けられてベッドの枕元に置かれているところを見るとおそらく、先程まで見ていた自分に都合の良すぎる夢に関係がある。
あまりの静けさにもう一度周りを見渡すが、出入り口のようなものはどこにもなく、自分がいつどうやってここまで来たのかわからなかった。
「まさかこれも夢…とか?」
いやそんなことはない。今口にした言葉は紛れもなく未来の世界の言語だ。夢の中の自分は全く違う言葉を話していた。
全く知らない言葉が出てくるということはつまり言語変換コンバータと学習機能ドライブが働いている証拠である。それならば…
コール=ユエ・コノエ・ヒトエ…
コール=ユエ・コノエ・ヒトエ…
反応がない。
しかもどこかにつながっているという感触もない。そういえば先程、機械に対して疑問を感じたときドライブは働かなかった。
自分から聞き出さないとわからないような情報は検索できないが機械の種類ぐらいなら普通は知っているはずだ。不思議な違和感に大一は黙ってしまう。
そして一刻も早くここから出て、彼女たちに会いたかった。
「だれか!誰かいないのか!」
黒い窓ガラスに駆け寄ってどんどんと叩く。こちらも反応はない…そのように思えたが、
「お目覚めですか。」
窓ガラスだと思っていたところ全体にユエの顔が映し出される。大一はギョッとして仰け反ってしまった。だがすぐに持ち直した。
「よかった、これスクリーンなのかよ。いろいろ聞きたいことはあるし、よくわかないんだけど、まずここから出してくれないか?」
大一は自分の秘書に頭を下げて頼んだ。何が目的なのかも知らないが、とりあえずまずは画面越しではなく直接会話をすることだ。
だがユエの答えは予想と違った。
「それはできません。」
「はっ?」
何故?理由があるならばちゃんと教えてほしい。こんな広々とした部屋に軟禁されていると頭がおかしくなりそうだ。
「あなたはそちらのベッドでお休みになってください。」
「ずっと寝てろって?いきなりなんで…。」
「『王』がお戻りになられたからです。」
その言葉は強く深く大一の胸に突き刺さった。




