表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
地球の王のクイーンアソート  作者: アホイヨーソロー
クイーンテイクアウト
173/190

〔4〕

 イブがスカートの裾をしぼって海水を落としている。

「しまった…」

 彼女は大一の方を見て苦笑いをした。

「いまシーズンじゃないから、ドライルームとかシャワールームとか用意されてないんだった…。」

「ええ?」

 となるとつまり、着替えのあるイブはともかく、何も持ってきていない大一はベタベタに濡れたまま帰ることに…。夏場は服を着たまま体を洗えるシャワールームとそれを乾かすためのドライルームが設置される。全身丸洗いができるのだ。

「どうしよっか…?」

「じゃあとりあえず俺は乾くまでここにいるよ。」

 大一は波が寄ってこないそこら辺の浜に腰掛けた。

「……なら私もそうしよっかな。」

 イブがその隣に座る。風が気持ちよくそよいでいる。自分がここに来る前の浜辺とは大違いだった。

 ずいぶん遠くまで来たなぁ…。

 大一は遠い目をして淡い真昼の水平線を眺めていた。

「ん、ここまでビークルでそんなにかかってないでしょ?」

「あれ…聞こえてたの?」

「ええ、聞こえてました。……今のはどういう意味?」

 大一はドキリとする。それほど深い意味は導き出された背景が危険すぎた。

「…えっと…」

 イブは首を傾げて大一のことを見てくる。「昔の俺からは想像できないくらい、成長してるなってこと。」

「フフ…そう思う?」

 イブは大一の返答に鼻を鳴らして笑った。

「あれ…あんまりそう思われて…ない…?」

「全然まだまだですよ。現王様。ようやく張り合い甲斐が出てきたってところかな。」

 モテる男への道は遠い。別にモテなくてもいいのだが、このままではいけないという不安がどこかに残っている。

「…なに?私達がとられないか心配?」

 イブは意地悪な笑い方をした。図星を刺されて胸がキャッと悲鳴を上げる。

「悪いとは思うけど、現王様以外にもいい人っていっぱいいるしねえ…。」

 姫としてあるまじきお言葉である。

「優しいだけの人は私、好きにならないからね。」

「…ゥグッ!」

 済ました顔をしてとんでもないことを言われる。みんなに好きになってもらえるように努力してきたのだが、イブには全く響いていなかったのだろうか。

「……じゃ、じゃあ、俺のこと…見限って…その………ほ、他の男と…?」

 イブは何も答えない。ただ挑発するやような瞳で大一のことを見つめているだけだ。

「…そうなったらイヤ?」

「当たり前だろ!!」

 大一は勢いよくイブの体を掴んだ。表情一つ崩さずイブは大一に不敵な笑みを投げかけている。

「………なんで?」

「なんで、って…!それは!俺はみんなが好きだから!」

「はい。」

 ポンと音がどこからか鳴った。

「みんな聞いてた?」

 イブは隠していた端末を取り出して、ケラケラと話しかけている。

「ほら、現王様。みんな嬉しいって言ってるよ。」

 イブが自分の端末を大一に渡した。四人の姫の言葉が画面いっぱいに埋め尽くされている。

「私達も結構不安だったんだよねえ。そういうこと全然言ってくれないから。」

 大一は思いがけず、全員に告白をした。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ