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星々のVIP御用達のマーケットが地球上に存在する。ここには服、靴、宝飾品はもちろん、各星から選りすぐりの品物が揃う物産展も毎月様々なテーマで行われている。敷地は広くてとてもではないが荷物を持ってウロウロするのは疲れてしまう。
大一はユエから出発前にキャッシュを受け取っておいた。受け取ると言ってもお札などではなく、限度額が決められた一枚のカードである。これですべての会計を済ませることができる。
(プリペイドカードみたいなもんだよなあ…)
使用時に必ず生体認証されるので、盗難があってもまず利用できない。使おうものなら即座に情報がキャッシュを取り扱っている会社の方まで飛んでしまいその場で、取り押さえられてしまう。
だがユエはそれすらいらないのではないかと大一に告げていた。
「王宮の金庫には現王様が一生かかっても使い切れないほどのお金があります。なのにわざわざお金に制限をかけてしまっては楽しめないのでは?」
「そもそも俺が稼いだお金じゃないし。」
『王』は存在しているだけでお金が外から入ってくる。働かずとも楽ができる立場がどうして受け入れられないのか、従者たちは疑問であった。
「こうやって限りあるお金を二人でやりくりするのも一つの楽しみだと思うし。」
「そういうものですかね?」
今朝のやり取り思い返す。
「なるほど、じゃあ今回はこれだけしかお金を持っていないということですね。」
持ってきたのは100万クレジット。あまりにも価格がイメージと違いすぎる世界なので対地は渡されたときピンとは来なかったが、このマーケットで取り扱われているもののほとんどが十から二十数万クレジットなので6、7回買い物ができることになる。十分に感じられる。
「それで、現王様はどういったものがほしいんですか?」
マリーが大一の顔をじっとみつめる。少し微笑んでいるようで、大一も気が楽であった。
「まだあんまり、なにか考えてきたわけじゃないんだ。ひとまずお店を眺めながら決めよう。」
「いいんですか?無目的に過ごすと退屈になっちゃうかもしれませんよ?」
マリーがニヤリと笑う。
「が、頑張るよ。」
デートで頑張るとはどういうことだ、とマリーは苦笑した。マリーは頑張ってもらうために手を自分からつないだ。大胆になったものだ。少し緊張が解けていない大一の横顔を見て何度もニコニコと笑う。こんなに意味もなく楽しい気分になったのは初めてだ。それはきっとこれがデートだから。
「いっ!?」
マリーは急に歯を食いしばった。
「どうかした?」
「いっいえ!?なんでもないです。」
マリーの目の端にちょっとだけ写ってしまった怪しげな影。いや、四人の姫たち。
(つ、つけてきてるの?!)
それぞれがバラバラになって気づかれないように遠くからこちらを眺めていた。
「げっ現王様!あっちとかなんか好きそうなのありそうですよ!」
グイグイとマリーは大一を引っ張って、追跡者たちを悟らせないようにした。
四人の目的はおそらく妨害ではない。ただただ今日のマリーの『成果』をその目で見ようとしてきているだけなのだろう。だとしても…
(せっかくのデートを邪魔させるか!)




