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シーラは難しい顔をして従者たちの話を聞いていた。
「…ですから、此度のことは我々の方でうまくやりますので、シーラ様は何卒。」
「自分たちの尻拭いは自分たちでさせてください。」
平謝りをしながら、従者たちは自分たちが内容を確認しその場で処分してしまったことを明かした。
「何が書かれていたのですか?」
しかしシーラがこのように聞いても、
「我々の口からはとても言える内容ではございませんでした。姫様のお心を患われるわけには行きません。」
と答えるばかり。
「我々の目的を達成するために、姫様に害が及ばぬよう、この身を盾として防ぎましょう。」
シーラは自分で動いてそれが失敗し続けているのが心に引っかかっていた。
「…。」
現王様は自分のことを呼んでいる。普通ならどんな叱責が待ち構えようとそれに応じなければならない。だが彼らは肩代わりをすると名乗り出たのだ。
任せていいものなのか、どうなのか、シーラは判断に迷っていた。
「姫様には歌の練習に集中なさっていただきたい。それで他の姫君たちに正々堂々と勝つことができます。」
ですから、ここは我々が。と言って聞かない。
「どんな内容でも構わないので、現王様が私になんと告げたのか。それだけでも教えられないのですか?」
聞くと、現王様は自分の祈りの時間中にこの部屋にやってきて、そのメッセージカードのことに触れたそうだ。ついにシーラが見ること叶わぬままどこかに消え失せたそ自分に綴った
の内容をどうしても知りたくなってしまった。
そうこうしているうちに祈りの時間になったおとなしくトボトボと扉の向こうに消えていく。
なんだか顔色が優れないシーラとばったり廊下でマリーは出会った。
「…」
礼儀として軽く会釈をして、その横を通り過ぎる。マリーはまだ仲良くなる気になれなかっつ。何度も何度も自分の心を踏みつけようとするものにそうそう心は開けない。
「あの…」
ところが意外なことにシーラの方からマリーに話しかけてきた。
「マリー殿少しいいでしょうか。」
「なんでしょうか。」
一応、マリーもシーラの方を向いて立ち止まる。
「ここで立ち話は何なので、どこか別のところで…」
そうシーラが提案しかけたとき、マリーは首を降って断った。
「込み入った話は申し訳ないけど。…主天たる現王様に聞いていただいたらいかがですか?」
ムキになって煽るように答えてしまう。シーラの回答を得ぬまま、マリーは立ち去ろうとした。
ひどいことをしているという自覚はあるが、どうしても突っぱねてしまう。これにはシーラもひどく傷ついた様子だった。
「はい…すみません…でした…。」
来たときの堂々とした態度からは想像ができないほどか細い声である。この前まではあんなにきれいな歌声を出していたのに。マリーの胸に少し息が詰まった。
「…へえ、私が悪者ですか。そうですか。」
シーラが何も言っていないのに、どう考えたとしても悪いのはマリーの方なのに、彼女はイライラとした感情を直接シーラにぶつけてしまう。
シーラはペコリと頭を下げて、その誰よりも一番大きな体をマリーよりも低くして、通り過ぎていった。
(私…最低かも…。)
すぐさま自己嫌悪の波が襲ってくる。マリーはシーラと同じようにトボトボ歩いていった。
(なんで私、シーラのこと許してあげられないの…?)




