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心の雫-ココロノナミダ-  作者: B-B-Fly
零章
5/5

居場所

その言葉を聞いた途端

波多野さんは心から叫ぶように泣いた、

この広い空一杯に響き渡る声で泣いた。

その声からは色々な感情が読み取れる。

その全てが同じ色の感情だ。

冷たい感情、温もりなんてない。



暫く泣き続けた後、少し落ち着き

フェンスの先にいる波多野さんに

手を貸し、こちら側へと迎えた。


「あの…その…ぐすっ、ありがとう…。」


僕達とは目を合わせず(ウツム)きながら声を出す。

泣き叫んでいたせいでその声は

酷くかすれていた。


「ううん、ただ当たり前の事をしただけだよ」


「あ、そうだ月詩!!

俺達まだ返事してないよな!?

改めて返事しないとな!!」


「ああ、そうだな」


「え…?」


僕達2人は拳を固めて

波多野さんへと並んで突き出す


「「これから友達、よろしく!」」


「ああっ…えっとその…、うん…!よろしくね…!」


そう言った後に、波多野さんは

僕達と同じように拳を突き出し

それぞれの拳と拳をグッと押し当てた。



「波多野さん、立て続けに悪いけど僕達は

謝らなきゃいけない事があるんだ。

話してもいいかな…?」


「うん、もう大丈夫。」


話していい事が分かると

僕は隠していたことを

包み隠さず話した。


「そっか、見られちゃったんだ、あの時。」


少し難しい顔になり、口を開く


「謝らなきゃいけないのは私の方で。

隠していた私が悪いの。

でも言っちゃうときっと皆と仲良くなれないし

離れちゃうと思ったから…。

ごめんなさい。」


「それは仕方がないよ、はたのっち。

この俺だってきっとそうしてたさ!」


「ありがとう、海堂君」


照はそんなに大したことを言っていないが

鼻下をこすっていた。


「私もこれからは2人には隠さず

ちゃんと向き合って話していこうと思う。

話すのは怖いけど、嫌顔せずに聞いてほしいな。」



────私の体の事、過去の事、そしてこれからの事。


「なっ!やべっ…!なあなあ!とりあえずさ!!

お昼休みもう終わるから

また放課後とかにしないか?!」


「ああ、そうした方が良さそうだな。

なら今日3人で一緒に帰るか?」


「いいの…??」


「答えはYESしかない!!!」


「じゃあその時に話すね、私のこと!」



こうして今日は3人で一緒に帰ることになった。

その前に、教室に帰り

騒動を沈めなければいけないのだが。

まあ、なんとかなるだろう。


少し急いで歩き教室の前に戻ってきた3人。

やはり教室の中からざわざわと聞こえてくる。

やはりか、と肩を落とし

教室へ入ろうと扉に手をかけた時


「皆!!こいつの言う事を信じるの?!」


これは宇宙野さんの声だ。

流石クラス長をするだけの事あって

声は迫力もあり馬鹿でかい。


「こいつが今までしてきた事を

皆は知ってるでしょ??

貴重品は盗むし、女には手をあげるし、

そして気に入らないやつはいじめ。」


「はっ!何が悪いィ!」


そう言い返すのは内田の声だ


「ほんとクズね、もういいわ。

これ、何かわかる?」


「ただの携帯だろゥ??

それがなんだよ??」


ピッ…


「さあ、さっさと脱げよゥ!

この内田金彦様がお前の

淫らな姿を見てやるって言ってんだァ!さぁ脱げ!」


「いやっ離して…!!気持ち悪い…触らないで!!」


ピッ…


おいおいなんだこれ?

ええーキモー

これ内田の声でしょー?

クラスメイトが大きくもなく小さくもない声量で

周りと話し始める


「そそそそ…それはァ…そそそその

なんといいますかァ…

俺に見てくれと言うもんだからそのォ…」


「はい??なんですか??

ちょっと聞き取れませんが???」


宇宙野さんとは思えない冷徹な声で

内田を言葉で突き刺す。


「私、最近

こういう目にあってるんです。

と私に相談してきた女の子が

自分の身を削ってまでも録った証拠よ。

これを先生、いや校長、会えて内田の親に

突き出しても良いかもしれないわね。

どうなることでしょう??居場所は無くなるかもね??」


教室の中がピリピリしてる中

僕達教室の外では


「なあ月詩、宇宙野さんやべえよ。

半端ねえ。俺恋に落ちそう。

俺将来、ああいう奥さんに尻に敷かれたい。」


「照ごめん、場違い過ぎて

リアクションとれねーわ。

見てみろお前波多野さんを、真顔だわ。」


教室の中は決着が着いたのか

内田のすみませんでしたというセリフが

聞こえた。

教室内からは大きな拍手と

流石クラス長!という声が聞こえる。


ガラガラガラ────


僕達は教室の扉を開けて中に入り

波多野さんだと分かると

抱きついてくる女子や

「蒼ちゃん大丈夫?!」「ごめんねさっきは…!」

という心配の声と謝罪の言葉が耳に入ってきた。


僕と照は波多野さんから

引き剥がされてしまったが

皆に取り囲まれて笑顔の波多野さんを見て

良かったと、そう思った。


「わわわっ…!ちょっと押さないで皆っ…!」


私は初めてこんなにも温かさを感じた

心配されるってとっても温かい


「宇宙野さんに皆、本当にありがとう。」


「そんなのいいんだよー!

蒼ちゃんは私たちのクラスメイトなんだし!

仲間でしょ!


蒼ちゃんの居場所はここ!」



居場所…


これまでに居場所なんてなかったな。

ここに居て、いいんだ私。



また────ここに来ていいんだ。



とーんちーんかーんこーん

とーんちーんかーんこーん♪

お昼休みが終わりを告げた

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