友達
体育の時間が終わりお昼休み。
僕達2人は奇怪だろうとやはり
心配な事は確かなので
保健室へと波多野さんを尋ねた
────ガラガラガラ
「失礼します!」
照の声が飛ぶ。
「あら、あなたは海堂 照君ね?
すぐ授業を抜け駆けして
ここに来るから覚えているわ」
そう話してきたのは保健室の先生
片瀬 南先生だ
黒髪で少しショートの美人系。
「あ…あああれはその、先生に会いたくって!!」
「あら、お上手な事♪
で、今日はどうしたの?」
「あ、そうだ!ここに
波多野 蒼さんは居る?」
「ああ、波多野さんならさっき
もう大丈夫だからと言って
出ていったわよ」
どうやら僕達の到着が少し遅く
入れ違ったようだ
「南先生、どこへ行ったか分かりますか?」
そう尋ねると、分からないわ、と。
────一方、蒼はお手洗いにいた
トイレの鏡に写る自分を眺め
ため息を一つ吐き、
大怪我していたはずの右手を見る
「…。」
私は、仲良くなれるのかな
皆と、あの2人とも。
でも私は…
「さ、教室に帰ろ…」
そして月詩と照も蒼と同じように
皆が昼食を食べているであろう自分たちの教室に
戻るのであった
「なあ照、そういえばさ、僕達
転校してきたばっかりってのもあるけど
波多野さんの事あまり知らないよね」
「確かにそういえば、転校してきた時の挨拶は
よろしくとしか言ってなかったし」
「少しずつ聞いていくか、波多野さん自身の事」
そう話しながら歩いていると
気づけば教室に着いていた
波多野さんは…いない
教室の中は賑わい、そして
皆のお弁当の匂いを始め
あらゆる匂いが広がっている。
照は僕の席までお弁当を持って来て
こう言い出す。
「おっ!ハンバーグじゃん月詩!!
俺のプチトマトと交換しようぜ!!」
する訳がない
前提にトマトが大嫌いだ
「蒼ちゃん大丈夫??!
怪我したって聞いたけど!!」
クラス長の元気で大きな声。
どうやら波多野さんが帰ってきたようだ。
「わっ…!ええ、ええっと大丈夫です…」
「良かったー!みんな心配してたんだよー!」
───心配。
でも、本当の私を知ればきっと
皆、怖い顔をするんだ。
心配なんてしてくれない。
こんな体…
「あ、ありがとう…」
そう言って皆の心配の声が舞う中
自分の席へとつく蒼
「大丈夫?波多野さん」
僕は波多野さんへ声をかけた。
「あ、うん…ごめん、心配かけて」
「ね!はたのっち!!血液型は何??
好きな食べ物は??嫌いな食べ物は??
趣味とか!!!」
「おいてるてる坊主お前なあ!!」
クスッ…
「「あ!」」
僕達は同時に声を、出して
波多野さんを見て暫く固まる
波多野さんが再び笑顔をみせた
やっぱり波多野さんは
笑っていた方が似合う、そう確信した。
「あ…ごめんなさい。
やっぱりあなた達は面白くって…」
「悪いのはこっちだよ波多野さん
こいつがあんなガンガン聞くから、ったく。
照!お前鼻にプチトマト詰めろ」
「はい」
「ってほんとに詰めるな、真顔で詰めるな!」
「はははっ、ううん、大丈夫。
血液型はA型で
好きな食べ物は目玉焼きで
嫌いな食べ物はトマト…。
趣味は、空を見ること…かな」
てるてる坊主が質問したことに
全て答えてくれ、こんな下らない事で
笑ってくれ、僕達は
波多野さんへの不信感を抱いてる事が
申し訳なくなった。
そして嫌いな食べ物が一緒だと分かった時に
心の中でガッツポーズをした事は言うまでもない。
「あの、私からも一ついいですか?」
僕と照は、「もちろん」と答えた
「私と…友達になってくれませんか…?」