1 始まり終わるプロローグ
新しく書き始めました。エタらないように頑張ります!
感想評価など頂けると喜びます。
モンスターテイマー。
簡易的な魔法とモンスターを駆使して戦う人々のことをそう呼んだ。
古来より人とモンスターは共に暮らし、共に生きてきた仲間であるが、それでも大きな溝があった。
そして、100年前ある博士の研究によりモンスターとの契約を行う『契約魔法』が発展し、現在のモンスターテイムが形づくられた。
「スライム族はゲル状の生命体で、対処法は____________________そこ!気を抜かないっ!!」
黒板に書かれたたくさんの文字。
しかしその言葉の羅列は僕の脳内には入ってこなかった。
それは他の生徒も同様だろう。
授業中にも関わらずおしゃべりに夢中な少年ガロンは席を立ち上がった。
「先生!オレもう無理だ。明日の儀式まで待ちくたびれちまうぜ」
そう言い放ち、扉から出て行った。
メイ・サルベー先生は長方形のメガネをキリッと整え、溜息を吐く。
「もう、まったく。明日には旅立ちの儀を行うのですから、最後くらいはしっかりやりましょう。」
『旅立ちの儀』
それは旅立つ若者の為に神から生涯のパートナーとなり得るモンスターを授かる儀式だ。
授かるモンスター次第で今後の旅路が左右される。
より強いモンスターを。レアリティの高いモンスターを。
というか、強いモンスター引かないと序盤で詰むよな、これ。
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モンスターガチャのリセマラなんてできないしってことで、この一度きりの為にできることなら何でもする。
俺は『願いの泉』に来ていた。
大層な名前だが大した場所ではない。
しかし、ここで願い事をすると叶うとか叶わないとかって言われてる。
もはや運頼みしかない。
手を合わせ、地面に頭を付ける。
「お願いします!神様!俺に最強クラスモンスターのガブリンチョスを下さい!それか伝説級のモンスターを!」
大声で叫んだが、それは静寂に包まれる。
クソ、『願いの泉』とか大層な名前なんだし願いの女神とか出てきて伝説モンスターを授けてくれてもいいんだけどな。
「ミチルくんー、何やってるの?」
この泉は緑林に囲まれている。その林の陰から誰かが俺の名前を呼ぶ。
「もしかして、マロキー?」
「うん」
スキップで木陰から現れる。いい歳してんのに能天気な奴だ。彼女は俺の幼馴染らしい。
「これはな神頼みだ。明日の『成人の儀』のために頭を下げるんだあのクソに」
俺は詳しく説明した。ろくでもないような神に頭下げてまでやってるんだ。
「なんでクソって分かるの?」
純粋な疑問をぶつけてくる。しかし、そんな理由いえるわけがないだろう。
ああ、前世に戻りたい。
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これは一年前の話。
「スズキ ミチルさん 短い人生お疲れ様でした」
「お、おう」
目の前に髪の黄色い女の人がいる。
人生?お疲れ?
俺なんでこんな場所にいるんだ?
そういえば__________
「死んでしまったあなたには異世界へ行ってもらいます」
「誰だ?お前?」
「私は女神マリー。あなたには私の管理下にある異世界へ行ってもらうことになったわ」
い、異世界?そうだ、俺はトラックに轢かれて死んだんだ。
ニートでたまたま外へ出歩いたばかりに。クソっ、自宅警備員としての誇りを忘れて家から出たせいだ。でも今日がモンクエ3の発売日だったから仕方ないか。
「あなたは誰よりもモンクエをやり込み、モンクエプレイヤーとして最高峰。あなたのような人材を我々は望んでいたの。」
彼女はそういった。
「では、転移をはじめるわ。行き先はトウボーグ地方で歳はそのままよ」
「は?元の世界に戻せよ」
「なぜ。なぜ喜ばないの?あなたの好きなモンクエワールドへ行くことができるのだよ。それに、新作よ。しんさく!」
「チートとか貰えるんだよな?」
「なに甘えたこと言ってんの?そんなものあるわけないじゃん。」
クソ、クソ、クソ。無理だよなァ!異世界ってまず第一に危険すぎるだろ。
「それにこっちはニートだぞ、ほとんど小卒のゲーマーニートだそ!」
「まあ頑張って!」
そこで俺の意識は遠のいていく。女神は明らかな作り笑顔でこちらを見ていた。
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この世界に降り立って一年が経った。
モンクエ3の舞台であるトウボーグ地方に飛ばされた俺は戸惑ったが、家と金、そして幼馴染まで用意されていたので普通に生活できた。
てか、幼馴染って勝ち組すぎるでしょ。
明日の『成人の儀』では多分チートが貰えると思ってる。だって異世界転移だよ。貰えるでしょ、貰えなかったら詐欺だよ。多分。