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4.
「どんな時も正義を貫きなさい。それが人々を護る魔導騎士の役割なのだから」
それが僕の父の教えだった。
父は魔導騎士であり、僕はそんな父の姿に憧れ魔導騎士の道を志した。
正義の道を行き、人を護る。それが魔術を使う才能を与えられた者の役割。
そんな風に、幼い頃は呑気に考えていた。
だが――
「君の父上は死にました」
魔術実験の暴走爆発。街一つが消し飛ぶ大事故だったらしい。
父はそれを収めるために街に向かい、人々を避難させ――その途中、爆発に巻き込まれたらしい。
死体さえ残らなかった。
それを告げられた時の衝撃は、今でも覚えている。
絶対的に正しかった父上が死んだ。
人生の進むべき目標が突然消えたような感覚。
その時まで、僕は「正しければ、正義であれば大丈夫」なのだと考えていた。
正しきに沿って、正義の道を歩めば、正しく人を護れるのだと。
父が、そうだったのだから。
だが、父は死んだ。正しくあったのに、人を護れず、死んだ。
僕は膝から崩れ落ちそうになる。突然足元が――立つべき所が無くなったような感覚だった。
それでも、その時立っていられたのは――必死に僕にしがみつく、妹の存在だった。
同じく父の死を告げられたラピスは、懸命に僕に抱きついていた。
まるで、溺れる者が藁に掴むように。
僕が崩れたら――妹まで倒れてしまう。
だから立った。
その時から、僕にとっての正義は少し意味を変えた。
倒れてはならない。理不尽に屈してはならない。
正義が負けたら、残された者に道は無くなってしまう。そのまま倒れるしか無くなってしまう。
だから、正義は――負けてはならない。
どんな事をしても、どんな状態にあっても、倒れず、負けず、屈せず――そんなモノでなければならない。
それが、僕の生きる指針となった。




