【令和学問のすすめ】所得税基礎控除「103万円の壁」突破問題、実はこれだけ壁が有る
「金を手にして好い気になるのは、愚か者だけ。」
~曹操~
「成功したければ、踏みならされた道を選ぶな。」
~曹操~
「政治こそ、人間の仕事のうちで、最高な理想を行いうる大事業だ。」
~曹操~
「 大きな仕事を手軽にやってのけるのが、大事を成す秘訣。」
~曹操~
「事業は、我がためより、他のためから、出発せよ。」
~曹操~
何度でも書くが、およそ2000年近く前の政治家にも劣る、今の日本の官僚と政治家とは・・・。
さて、現在絶賛審議中の所得税基礎控除「103万円から178万円に引き上げる」問題について、実はこれだけ「越えられない壁」が有る事を解説したいと思う。
こんな事を解説しているが、作者自身は所得税基礎控除の「178万円」への引き上げには賛成だ!
しかし実態として、「コレだけの諸問題が存在するので、実現が困難」な事を知って欲しいのだ。
所得税の基礎控除とは、簡単に言うと現在なら、「年収103万円以下の労働者からは、所得税や住民税は徴収しない」と言う意味になる。
住民税非課税・ただし、世帯収入(家族全員の収入)が103万円を超える場合、住民税非課税【世帯】には成らない。
さらに、年収103万円以下の労働者が、誰かの扶養家族になっている場合、103万円以上に成った場合扶養家族から外れて、所得税が課せられる。
この場合、今まで扶養控除を受けていた扶養者は、扶養控除が外れるために増税となる。
ちなみに、「年収103万円」とは、月収に直すと約8万5千円ぐらい。
単身者なら、普通に生活は出来ないレベルだな。
この場合、実は「生活保護」が受けられる。(世帯収入が103万円以下の場合でも)
例えば、住んでいる地域の自治体の生活保護支給額が「月額14万円(全国平均・単身者)」だった場合、14万-8万5千円で、5万5千円の生活保護支給が受けられる。
プラス、健康保険料免除・医療費自己負担免除・住民税非課税などが受けられるが、自動車の所持や持ち家の所持は認められない(課税対象および財産に成るから)。
万が一の場合も含めて、知っておくと良い情報だろう。
さて、話が逸れたが、所得税基礎控除を年収178万円に引き上げる根拠としては、この29年間の最低賃金の上昇率の1.73倍、これに合わせた額に引き上げ、パート・アルバイトなどの労働環境を改善し、人手不足の解消や世帯収入や個人収入の引き上げを目指すためだ。
年収178万円を月収に直すと約14万8千円に成るので、ギリ一人暮らしが出来るかな~?ぐらいには成る。(まぁ、余裕はゼロだが)
しか~し!ここで最初の壁が立ちはだかる!!
それは、「社会保険106万円の壁」問題だ!!
社会保険は、年収106万円から入らなければならない。(健康保険・厚生年金保険)
ただし、106万円の壁では、すべての人に健康保険・厚生年金保険への加入義務が発生するわけではなく、勤務先の規模や労働時間、賃金など下記の条件を満たす場合に加入義務が定められている。
勤務先の被保険者の総数が常時51人以上
1週間の所定労働時間が20時間以上
賃金が月額8.8万円以上(残業代は含まない)
継続して2ヵ月を超えて使用される見込み
学生ではない(夜間の学生などは対象)
そして第2の壁「年収130万円の壁」がさらに立ち塞がる!!
年収130万円からは、扶養家族から外れて、「国民健康保険」と「国民年金」への加入義務が生じる。
所謂「国民年金第3号被保険者」問題と言うやつだ!
「国民年金第3号被保険者」とは?
※会社員の配偶者(第2号被保険者)に扶養されている、年収130万円未満で20歳以上60歳未満の人は、自身で保険料負担をせずに基礎年金が受け取れる制度
の事だ。
つまり、所得税控除を178万円まで引き上げても、社会保険料負担が増えてしまうと言う問題が有るのだ!!
無論、これらのデメリットよりも、年収や世帯収入が増えるメリットの方が大きい場合もある。
その分岐点と成る年収の目安が。
<106万円の壁を超えて働く場合>
およそ125万円以上
<130万円の壁を超えて働く場合>
およそ156万円以上(勤務先の社会保険に加入する場合)
厚生労働省「社会保険加入による手取りシミュレーション」 (https://www.mhlw.go.jp/tekiyoukakudai/koujirei/jugyouin/)より引用
となる。
まぁ、この辺は、それぞれの個人や家族の考え方次第であろう。
いっその事、この辺も年収178万円まで引き上げられれば良いのだが、流石にそうも行かないだろう。
年金事務所や、厚生労働省や財務省からの反発も大きいだろうからね?
そして、コレが最大の「越えられない壁」!!
「地方自治体の税収が激減する」と言う大問題だ!!
もし、住民税の非課税額が178万円まで引き上げられると、なんと!地方税収が4兆円?!も減ってしまうのだ!!
これは流石に無視出来ないし、軽視も出来ない大問題であろう。
何せ地方自治体は、「通貨発行権を持たない」ので、本当の意味で「税収=財源」だからだ!!
地方自治体も「地方債」でその年の支出を支払い、翌年の税収で返済するのは国と同じなのだが、残念ながら「地方債の日本銀行の引き取り」には、上限が設けられている。(地方債の上限規制)
しかも、これも消費税に関わる大問題なのだが、消費税の導入により地方交付税」が軒並み減額されているからだ!!
何度か解説しているが、地方消費税は「最終消費地に再交付する」税金なので、当然、東京のような人口密集地域ほど、再交付される税源は多く成ってしまうのだ。
逆に言えば、人口減少が激しい過疎化地域に成ればなるほど、地方消費税の再交付額が減ってしまうのだよ。
実に残酷な話なのだ!!
故に、地方自治体の財政は「東京」を省いて火の車状態が継続している。
当然、地方自治体の首長(知事)などが、基礎控除178万円引き上げに猛反対するのは当たり前。
少なくとも、減収分を「地方交付税」で補ってもらえなければ、タダでさえ苦しい地方財政が、さらに苦しく成ってしまう。
ちなみに、地方自治体の財源の不足分は、地方交付税で補う事が「法律で決まっている」。
【昭和二十五年法律第二百十一号 地方交付税法】
第三条 総務大臣は、常に各地方団体の財政状況の的確な握に努め、地方交付税(以下「交付税」という。)の総額を、この法律の定めるところにより、財政需要額が財政収入額をこえる地方団体に対し、衡平にその超過額を補することを目途として交付しなければならない。
まぁ、この法律がキチンと守られているのならば、そもそも、地方自治体の財政が「かつかつ」で、非正規公務員や警察官や消防士の、不足が起きたりしない筈なのだがね?
まぁ、地方交付税や地方債に、「キャップ」が掛けられている。
これは、北海道の「夕張市」が、地方債を発行し過ぎた挙句、財政破綻した事から、地方債の発行に制限が掛けられ、地方自治体の基礎的な活動コスト(人件費・インフラのメンテナンス費用など)にも、事実上制限が掛けられたから、「水道民営化」だの「非正規公務員」だのが出てくるのだ!!
まぁ、それもこれも、政治家の責任なのだが・・・。
地方債や地方交付税に「キャップ」を掛けたのも、財務省が「ご説明」したとしても、最終的に決議した政治家が悪いのは確かな事だからね。
まぁ、住民税は従来通り「103万円以上から課税」に成る事も考えられるけどね?
うがった見方をすれば、「地方自治体潰しをしているのか?」と言う話にも成るので、「小さな政府論」大好きな新自由主義者達は、寧ろ大歓迎するかも知れない?
とまぁ、「財務省の猛反対」を省いても、これだけの問題が立塞がっているのだ!!
財務省からすれば「普通に共働きして、156万円以上稼げカス!!」だろうし、地方自治体も、そう考えてしまうだろう。
年収103万円以下で働いている主婦の方々は、子育てや介護などの時間的な制約も有るのだろうから、一概に「もっと働け!!」と言う訳にも行かないだろうし、下手をすれば、子育てや介護の時間が取れないので、結婚を諦める若年層が増えて、さらなる少子化に拍車が掛かるかも知れない?
中々に、この問題は、実は「根が深い」のだ!!
※「税金は財源では無い」
※「変動為替相場制で、自国通貨発行権を持ち、自国通貨建て国債を発行できる国は、財政破綻出来ない」
が、国民や政治家や官僚に浸透しないと、この問題は簡単には解決出来ないだろう。
減少する税収を、「国債でカバーする」と言う「当たり前の政策」が、出来ないのだからね。