帰宅部、廃部
ドアを開けると、そこに青木がいた。
彼女は水田が一人だけだと思っていたので、青木の姿を見て驚いた。
「なんで青木が居るのよ」
青木も同様驚いていた、まさか水田の彼女が三宅先輩だなんて思わなかった。
「まさか、水田の彼女って三宅先輩なのか?」
水田は照れくさそうに彼女を紹介した。
「隠してて悪かったな、俺の彼女三宅先輩なんだよ。青木にはちょっと
言いづらくてな」
三宅あつこ。3年2組、長い髪でスラッとしてて、とても頼りがいがある。
今は退部しているが元帰宅部である。
水田から事情を説明され、三宅は恥ずかしく笑った。
「ばれたかぁ、しょうがないね。それより、そこの女の子もしかして部員さん?」
夏川は慌てて立ち上がり、自己紹介をした。
「は、はじめまして、夏川なつみです。ごめんなさい、水田くんの彼女が帰宅部の先輩とは知らず、水田くんに出しゃばったことを言ってしまって。」
三宅は夏川ににこっと微笑んだ。
「良いのよ。こんな可愛い後輩が入部してくれてとても嬉しい。
じゃあ、宅也もう行こっか。」
水田は頷いて、三宅と一緒に部室を出ようとしたとき、三宅は振り向いて青木にこう言った。
「あ、そうそう青木くん、帰宅部廃部になるって本当?それだったらなんか寂しいな」
青木は急に顔が青ざめた。
「誰から聞いたんですか?」
「浅中くんよ。浅中くん噂広げるの好きだから、あたしまで話してくれて。宅也も
にも教えちゃったけど。」
青木は水田に顔を移した。
「水田、廃部のこと知ってたのか」
水田は小さく頷いた。
夏川は何がなんだか分からぬまま一人だけ話についていけなかった。
「なに?どういうこと、廃部って?帰宅部終わっちゃうの?」
「夏川、ごめん。隠してた事だが今月まででこの帰宅部廃部が確定するんだ」
「ええ~、うそぉおお!?」
◇
次の日、青木は浅中先輩を訪ねた。
昼休み、浅中がいる場所は決まって屋上らしい。
青木は屋上のドアを開けると、すぐ横で日陰に隠れて
うたた寝をしていた浅中に声をかけた。
「浅中部長・・・」
「ん、んん・・おお、青木じゃねーか。どした?」
「浅中部長、廃部の事知ってたんですか?」
「俺はもう部長じゃない、部長って言うのは勘弁してくれ。俺は帰宅部の顧問から聞いたんだ。今月終わるの何日だと思ってるんだ?あと10日だぞ。あと10日で帰宅部も終わりだ。なんか寂しくなるけど、しょうがないよな。」
「俺はこの帰宅部を立ち上がらせたいんです。続けたいんです。
あと2人だけでも入部してくれれば・・・。」
「もう無理だよ。諦めな、帰宅部は廃部だ。」