帰宅部の過去
青木は帰宅部に居ながらも、帰宅部の過去など興味がなかった。
それに引きかえ、こんな男の子が帰宅部の過去を
知っていることに青木は恥ずかしさと劣等感に
苛まれていた。
『噂ですが、10代目部長は部員数50人、全国高校帰宅大会優勝に導いた方です。しかし、部員の集め方として、彼のやり方はひどいものでした。部活をやってる人部活をやってない人、関係なく無理矢理に帰宅部に入部させたんです。それからと言うもの帰宅部は部員数50人になり、全国では最大最強ともまで言われ
10代目部長はこの学校にも恐れられた方なんです。」
それを聞いた青木は衝撃ばかりが走り、開いた口が塞がらなかった。
「それでは、これで失礼します。今日は助かりました。」
男の子はぺこりと頭を軽く下げて帰ろうとするところを、青木が止めた。
「キミ、ちょっと待ってくれ・・・話がある。」
「なんですか?」
「お願いがあるんだ。帰宅部に入部する気はないか?今月までに
3人集めないと廃部してしまいそうなんだ。」
「廃部ですか・・・ごめんなさい、帰宅部にはあまり興味ないです。」
「そうか・・・呼び止めて悪かった。」
男の子は青木に背を向け、そそくさと歩いて行った。
◇
一方その頃、部室に残ってポテチを食い散らかしていた水田に
ある訪問者が訪れていた。
「あんた誰?」
「青木様の恋人候補。2年2組夏川なつみ、よろしく~。」
夏川なつみ。
性格は気が強いほうだが、天然なところもある。
髪はショートで似合っている。青木のことが好きである。
「青木様?部長なら帰ったぜ。」
「そうなんだ。ねぇ、ところでここ何部?」
「帰宅部だけど。あんたよく知らないで青木がここに居るなんて分かったな。」
「ここの教室で青木様が部活してるって聞いたのよ。帰宅部って何するとこなの?」
「ただ、一緒に帰るだけ。」
夏川はその言葉に目が輝きだし、とても嬉しそうに身を乗り出した。
「ねぇ!あたしも帰宅部って入れる?」
「あ?入れるけど・・・なんで?」
「だって帰宅部に入れば、青木様と一緒に帰れるじゃない!それってすごく幸せじゃ~ん」
「青木目当てか!」
「それ以外興味ないわ。さぁ、入部届けの紙ちょうだい。」
「うそだろ!?入部する気か?」
「あったりまえじゃ〜ん」
水田はしぶしぶ引き出しに置いてある入部届の紙を取り出し、夏川に渡した。
こうして、突然ではあるが夏川は帰宅部に入部した。