表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
1/1

序章 銀騎士アレック

アヴァロン聖王国 《玉座の間》


酷く苦い顔をした国王が重々しい空気の中、呻くように声を上げる。


「……我が聖王国は、魔王による侵攻に対応するため……勇者召喚を執り行う」


この国の重役たる貴族たちが集う中、王はそう、仰った。


「王よ!! 本当ですか!! これでようやくあの忌々しい魔族たちに対抗できますぞ!!」


この中で王の次に発言力のあるマルサス侯爵が大声で喜ぶ。


うおおおおおおお!!!!!!!


それに釣られて、ほかの貴族たちも喜びの声を上げる。

隣の父親もだ。僕は喜ぶよりも先に、これから呼び出されるであろう勇者に酷く申し訳ない気持ちに襲われた。


「……召喚の儀は明日の早朝に執り行う。魔術師諸君が今準備してくれている……明日の夕方、もう一度集まってくれ」


そう言って、王は奥に消えた。


……酷く騒がしい玉座の間を僕は、静かに退出した。


=============================================


王城の中庭にあった石に僕は腰掛けた。

僕の名はアレック。アレック・ミレット。

ミレット子爵次期当主で、この聖王国の栄えある聖騎士団の銀騎士だ。

銀騎士とは何かというと、聖騎士団所属の騎士3つの内、王城勤務を命ぜられた者達だ。

他にも、有事の際に出る十字騎士や王都や別の都市や町、村に勤務する普通の騎士もいる。

前者は災害指定の魔物が出たときにそれを退治する、魔物退治専門の戦闘のエリートだ。

……ただ、そこには戦闘に特化しているだけあって、色々と複雑な境遇の者達がいるようだ。

聞いた話だと、大きな鎌で敵をいたぶってから首を切り落とす|《死神》と呼ばれる者や、山のような体躯を持ち敵の如何なる攻撃を受け止め弾く|《聖盾》、敵を一刀の下に切り伏せる|《剣聖》など多種多様の人物がいるらしい。

後者は都市を守るために戦う者達で、入団したての頃はそこで鍛えられ、年に一度ある|《銀騎士選抜試験》や|《十字騎士選抜試験》のために日夜精進している者や、王都から離れた人達を守りたい人など此方も多様な思いの人たちがいる。

僕も数年前まで其処に居たからよく知っている。良いやつばかりだった。今でも彼らとは、時折連絡を取っている。



「だーれだ?」


……そんなことを考えていると、後ろから聞きなれた声が聞こえたと思ったら視界が闇で閉ざされる。


「……アニス様、そのようなはしたないことはお止めください。あなたは聖王国の王女様なのですから」


「むう、いいでしょー!! ていうか、アニーって呼んでっていってるじゃない。何で呼んでくれないの?!」


視界を閉ざしていたアニス様の手が退けられると、僕は立ち上がり、彼女のほうを向いた。

アニス・アヴァロン。この国の第三王女である。

金糸のような艶のある髪に、この国でもっとも高価な蒼翠石そうすいせきのようなきれいな青い目……まるで女神のような美しさを持つ彼女は、正にこの国の宝と呼ばれている程である。

僕は彼女の近衛騎士である。なったばかりの頃彼女は人に対して壁を作っていた。

今もあまり変わらないが、何故か彼女は僕に対してだけは心を開いてくれている。

「申し訳ありません。私は一介の騎士ですから、アニス様を愛称で呼ぶことはできません」

あえて恭しく騎士礼をすると、嫌そうな顔になったが、目的を思い出したのかすぐにいつもの顔にもどった。


「勇者が召喚されるって聞いたけど、本当なの?」


「ええ、本当ですよ。明日の朝に召喚の儀式を執り行うと王様が」


それを聞くと、彼女は苦い顔をした。


「……お父様、決めたのね。ごめんなさい、今日はもう部屋に戻るわ」


そう言い残し、彼女は中庭を去った……。


=============================================


翌日、早朝


鍛錬場で朝の鍛錬をしていると、王の呼び出しがあった。

急いで着替え、王の居る玉座の間に向かうと、そこには見たことのないほど黒い髪と目をした少年だった……。









評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ