第一章
夕暮れが校舎を紅く染めている。生徒の多くが帰宅をし、静かになりつつあることと相まってどことなく寂しさを感じさせる。そんな校舎の光景とは逆にまさに今、ボルテージが最高潮の少年が屋上にいた。想いを寄せる少女に自らの気持ちを伝え、返事を待つ少年の感情は短い人生の中でまだ経験したことがない程、体を震えさせ、熱くさせるのだった。
果たして想いを伝えてからどのくらい時間が経ったのだろうか。まださほど時間は経っていないのだろうが、返事を待つ少年にとってはあまりにも長く感じられる。震えて熱くなっている体は汗が滲み始め、表情は告白の言葉を伝えた時のまま、真っ赤である。
「……。ねえ、亮太」
今まで沈黙を保ったままであった少女が少年の名を呼ぶ。とうとう決着の時が来た。少年は覚悟を決めて次の言葉を待つ。その様子を悟った少女は頷いて口を開いた。
「悪いんだけど、私今付き合ってる人がいるから。だから亮太の告白を受けいれられない……」
この言葉に亮太はがっくりと肩を落とす。しかし今の亮太には不思議と悲しみはなかった。むしろ想いを伝えることができた達成感すらあった。しかし、告白を聞いてくれたことに対する感謝の言葉を言おうと顔を上げた亮太に思いもよらぬ言葉が降ってきた。
「だけどさあ、告白する前にもっと確率を上げようとか思わないの? そんななりで告白してくるなんて。多分誰も受け入れてくれないよ」
少女の口から飛び出した辛辣な言葉に亮太は目を丸くした。本当に今の言葉は彼女の口から出てきたのだろうか。そんな顔をしている。
「……理紗……今、なんて……?」
ようやくそれだけ口にできた亮太に理沙と呼ばれた少女はさらに畳み掛ける。
「だってさあ顔はニキビだらけだし、背も私より低いし。そのぼさぼさの髪とかなんか不潔っぽいんだよね」
理紗のあまりの言い草に亮太はとうとう涙を流し始めた。自分の勇気を振り絞った告白に対する返事がこれなのだから無理もないだろう。
「う、ううぅぅぅ……」
亮太の様子を見て、理紗は不機嫌そうに顔を歪ませる。
「ああもう、うっとうしいなあ。もう私は行くからね、それじゃバイバイ」
泣きじゃくる亮太を放置して理紗は去っていってしまった。先ほどは断られたとはいえ、告白できたことに達成感すら感じていたというのに急転直下で絶望に叩き落された亮太はもはや立っていることさえできずに座り込んでしまう。座り込んだ亮太の背中は夕焼けで照らされた校舎よりも寂しく感じられた。
いきなり重い始まりになってしまいましたが、とりあえず「Remodeling」始まりました。前作の「想い溢れて……」が重い上に暗い話だったんで、もう少し明るい作品にしていければいいなと思っています。それでは次話からもよろしければお付き合い下さいませ。