王都がお祭り騒ぎなんだが…
白樺くんの情報通り、勇者が召喚されたようで、その歓迎お祭りが催していて王都はにぎやかだ。
「おお…人間がいっぱい…」
そしてオレのこの世界初の人間との遭遇でもある。元の世界だったらあり得ない赤、緑、青などのカラフルな髪の毛を物珍しげに見上げながら歩いていたのが悪かった。
「ぴっ!?」
ドンッと体に衝撃が走り、オレは尻餅をついてしまった。どうやらぶつかってしまったようだ。
「セイクっ!!」
「「「セイク様っ!!」」」
側にいたユリさんはオレを抱え、後ろにいた三姉妹は前に出てぶつかったおっさんを睨んだ。おーい、今のはオレが悪かったから睨んじゃダメじゃないかーい。
「あぁん?姉ちゃんたち、今のはそこの坊主が俺にぶつかって来たんだぜぇ?なんで睨まれにゃならんのだ。」
「ぶつかったのが普通の子供ならば私たちもその子に注意して終わります…が」
「この方は特別、ぶつかったのが彼だったとしても悪いのは貴方になりますっ!!」
ぷりぷりと怒るルゥとテューが今にもおっさんに掴み掛かろうとしていたのでケガチェックが終わったオレはユリさんの腕をほどいてぽてぽてとおっさんの足元に行った。
「…なんか釈然としねぇな?坊主。」
「うん、ごめんなさいおじさん。ちょっと過保護なんだ、ウチの奴ら。」
ちょっと不満そうな三姉妹に美味しそうな食べ物を買って来てとお願いし、細マッチョオヤジを見上げる。
オレの頭をワシワシと撫でながらおっさんはニッと白い歯をみせながら笑った。昔はさぞかしモテただろう精悍な顔をしているこの人はなんとなくギルドマスターのような気がする。
「坊主、ケガ無いか?…ん、坊主はエルフか?」
「ケガはないよ!!エルフじゃなくて一応精霊だよ。ね、おじさんはお仕事何してるの?」
「俺?俺はこの王都にあるギルド兼宿泊施設のポッポー屋ってとこの店長さ。にしても精霊なぁ…つーことはそこの姉ちゃんたちもか。珍しい一行だな。」
やっぱりギルドマスターだった。ポッポー屋って…何それ新しい。中二臭くないギルドだな。そういえばギルドってどんな感じなんだろう。討伐とかしてるのかな。
「ギルドってなーに?」
「んー、職業紹介所みたいなところだな。旅人とかがここに腰を落ち着かせることを決めたときとかに人員募集がある職場を紹介する場所だな。」
リクルートですねわかります。なるほど、討伐とかの依頼がある世界ではないのか。
「ありがとおじさん。オレ、人間がいっぱいいるとこ初めてだったから珍しくてキョロキョロしてたの。ぶつかってごめんなさい。」
「セイク…なんて心の広い子なの!!」
「ユリさんはちょっと黙ろうね。」
「ははは、いいってことよ。坊主、俺の名前はガルディンだ。これも何かの縁、覚えておいてくれよ。じゃあ祭りを楽しめよ、セイク坊!!」
豪快な宿屋の店主ガルディンさんは仲間だろう彼と同じような筋肉質な男たちの元に戻って行った。うーむ、細マッチョイケメンオヤジ…あんなのが親父だったら楽しそうだなぁ。
「セイク様、リンゴ飴買ってきましたよ。」
「ありがと、ルゥ。あむ…ん、これは懐かしい味…。サクラも好きだったなぁ。何故かオレが食べたやつを欲しがったけど…」
ちょっと大きめなリンゴ飴は今のオレには全て食べきれないようだ。他のも食べたいからテューにあげることにしよう。
「テュー、あーん。」
「ふへっ!?あ、あーん…もぐ…セイク様の味…ハッ!?いけない、私は変態じゃないよっ!!」
と、言いつつリンゴ飴をしっかり持っている。変態?別に間接キスくらい気にしないからいいのに。
「じゃ、じゃあセイク様、私からは焼きそばを。はい、あーん…姉さん、ユリさん怖いです。」
「あむ。むぐむぐ…ユリさんもミューもルゥも後でしてあげるよ。色々食べっこしよ?」
「「「「もちろんです、セイク様」」」」
ユリさんも様付けとかやめてよ。