いくら異世界初心者だからといって…
「ん、んむ?出来た!!」
《よしよし、うまく出来たわね!!》
《うんうん、かわいいかわいい。》
《それじゃ、誰か1人お目付け役を決めるからちょっと待ってねぇ~》
ぺたんと座っているぷにしょた、それがこの世界での人型としての姿のようだ。聖樹としてのオレは消えていた。
「んぅー…このままだと騒ぎになるよね。」
《そうだな。幻でも作っておいたらどうだ?》
「その手があったね!!よーし、¨ミラージュ¨!!」
オレの足にさわさわとすり寄る聖草さんの一本の提案に乗り、オレは聖樹(幻)を作っておいた。んむ、満足。
《後は名前かしらん。裸足なのは精霊だからとかでわかってもらいましょ》
「そだねーって聖草さんはじゃんけん負けちゃったの?」
《あぁ、残念ながらな。》
《んふふ、あなたの帰る場所になれると思えばなんともなくってよぉ~》
「わぁ、嬉しいな。オレはここに帰ることができるんだね!!」
スッと影が落ち、薄い透けるようなキレイな緑色の長い髪の精霊がオレを抱き上げた。
「そうよ、ここはあなたの帰る場所。さ、名前は私たちが用意したから、行きましょうか。セイク、あなたの名前はセイク=リッドよ。」
「わー…偉そうな名前ー…」
「あなたは偉いんだもの、いいのよ。」
《そうだな》
《当たり前ね》
《もちろんだよー》
その言葉にオレは首を傾げたが、その仕草に周りの聖草さんたちとオレを抱き上げた聖草の精霊、ユリノキ…通称ユリさんがかわいいを連呼したのでその事はうやむやになった。
行ってらっしゃい、と見送られオレとユリさんは聖域を出るために結界を目指すことになった。
聖域はわりと広く、一度、聖域にある泉に寄ることになった。
「へー…こんなところに泉があったのかぁ…」
「セイク、一度自分の形を見てご覧なさい。」
「はーい。…わかってたけどぷにしょた…エルフ耳…んぅ、今度青年型になる練習しよ。」
ぼそぼそと考えを呟いていたら泉の方から視線を感じ、顔を上げると泉のニンフ三姉妹がいた。
《きゃぁ~!聖樹様だあ!!》
《神々しくも愛らしい…ほぅ…》
《間近で見ることができるとは…私、死んでもいいかも…》
ぽかんとしていたらそんなことを口走る三姉妹。女三人寄ればかしましいと言うけど、なるほどと納得してしまった。
そんな彼女らは体全体が透けていて、見た目が髪の色以外全く同じであった。三つ子なのかな。
「セイク?ーってあら、泉のかしまし三姉妹。」
「知ってるの?ユリさん。」
「えぇ、この子たちは俗世に詳しいから連れて行きましょうか。ールゥ、ミュー、テュー。お供しなさいな。セイク=リッド様の初めてのお出かけよ、光栄に想いなさい。」
《姉さん!!お供できるって、やったね!!》
《光栄だな…。私達にできることは何でもしようではないか。》
《ま、まだ死ねないわ、セイク様とご一緒にいられるのだもの…》
そんなこんなで泉のかしまし三姉妹、元気いっぱいな末っ子テュー、武士のようなキリリとした雰囲気の次女ミュー、嬉しいことがあるとことあるごとに死ぬという無表情な長女ルゥがオレのお供になり、ユリさんと交代でオレを抱っこしながら歩いている。
「オレ、ただ成長してただけだから何も偉くないよ?」
「いいえ~セイク様。私たちはあなたが生まれたから概念として存在できるようになったのですよ!!人間も、魔族も、精霊も魔法もあなたが成長するたびに世界に具現化し、存在したのです!!それを敬わないなんてありません!!」
力説するテューに抱かれながら、オレは久しぶりに眠気というものを感じた。聖樹の時は寝るって概念がなかったからなぁ…
「そっか…ふみゅ…」
スリ…と少しひんやりしたテューの白い手に頬をこすり、オレはうつらうつらした。
「セイク、まだ人型に慣れてないみたいだから寝ていいわ。着いたら起こしてあげる。」
「あいがと…すぅ…」
そのオレの寝顔に四人が身悶えているのはオレが寝ていてもわかるくらいだった。