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王子様って…

「ああ、こんなところでなくもっと丁重におもてなしができる場所であったらよかったのに。聖樹様、どうかこの愚かな信者をお許しください。それにしても聖樹であるあのお姿も筆舌しがたい美しさではありましたが今の無垢で清らかなお姿も素晴らしくて私はもう溜息しか出ません。きっとどの腕利きのドワーフであったとしても表現できることはないでしょう!あ、お飲み物は何に致しますか?デザートは?そういえば裸足ですね聖樹様。お靴をオーダーメイドで作らせましょうか?」


土下座をやめさせ、向かい合ってみた王子様はマシンガントークを繰り広げている。返事をしようにも息継ぎすら惜しいというように一息で言われる。とりあえず返事だな。


「…うん、許すし、怒ってないよ。飲み物…はそうだね、牛乳シェイクかな。おなかは空いてないから食べ物はいらないし、裸足なのはもとからだからいいよ。それにしてもオレが聖樹だってよくわかったね。」


しらばっくれてもいいけれど別にオレは正体を隠すつもりはないから、素の話し方に戻して彼に話しかける。


「私は聖樹様の信者で忠実な僕でありますゆえに、貴方の姿が違えど魔力の質、纏っている神々しさは見間違えることはないのです。」


「…へー…」


どうしよう、見た目はキラキラしていてかっこいいのに言っていることと行動が過保護ーずとおんなじだ…


「ところで聖樹様、御顕現なさっているということは何か理由がお有りなのですか?まさか神信教の…」


眉間に皺を寄せ、表情を険しくした彼にオレは答える。


「別に目的なんてないよ。暇つぶし。たまたま勇者とかがいたり、神様がなんかしでかしそうなタイミングだっただけ。オレは寿命ってものがないみたいだからね。だから、面白そうなことは裏方で関わりたいんだ。」


「それは…私に協力しろと?」


「そうだね、そちらと繋がりがあった方が楽だね。勇者とはあんまり顔合わせたくないし。もちろん、断ってくれてもデメリットはないよ。オレはもともと加護とかを与えるようなことはできないし、神様ではないから運命をいじることなんてしないよ。どう?メリットはないかもだけど悪い話じゃないよ。オレに定期報告してくれればいいだけ。」


「…私が聖樹様のお役に立てる日が来るなんて…!そのお話、引き受けましょう。…しかし、定期報告の方法が…」


「ん?ああ、そうだね。ここはまだケータイ電話とかないもんな…ちょっと作るから待って…」


オレはシンプルなケータイを作る。資料作成という項目と音声報告という項目のみの魔道具「報告魔具」というものをオレの髪の毛を一本を媒体に作った。


「ほい、これつかって。たぶん使い方は分かるだろうから、説明はしないけど大丈夫だよね?」


「…っ…ありがたき幸せですっ…ああ、こんなにいいことが続くと城に戻ってあの馬鹿どもと顔を合わせるのが嫌になりますね…」


どうやら、お城で優雅に暮らしている王子様というのはあまりいないようだ。

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