名前が植物っぽいからって…
《あー…今日も良い天気だなぁ…》
サンサンと降り注ぐ暖かな日光にオレは身を委ねる。周りには草原が広がり、オレ以外には樹も、もちろん動物や人間はいない。
《ここに来てもうずいぶん経ったなぁ…》
どうしてオレがここにいるのか。それは良くわからないが、ここに来る経緯は小説などで読んだ転生物語とあまり変わらない。
オレ、草間 大樹は転生する三年前、両親を何者かに殺された。もともと仕事仕事で構ってもらった覚えはなかったが、親戚もいないオレは少々ショックを受けた。しかし、オレの家系は呪われているのではと思うほど人に殺されたり、原因不明の死を迎えたりしていたので一年もすれば気にならなくなった。それにオレにはやけに慕ってくれるオレに似てない妹もいた。
その妹も転生する二年前に遊んで来ると言って行方不明になったが。
そんなある日、オレは暴走したトラックに跳ねられ死亡。朝の占いが交通事故に気をつけてなどというピンポイントだったので、あれはフラグというやつだったのだろう。回収してしまうオレもオレだが。
《そういえば神様には会ってないな。》
養分と水、ついでに知識を根っこから取り入れつつ、オレは光合成に勤しむ。
《まさか木になるとは誰が予想しただろう…》
そよそよと吹く心地好い風を枝いっぱいに茂る葉っぱに感じながらオレは声にならない声で嘆いた。
《ほらほら聖樹、嘆かない嘆かない!!》
《そうだよー、ここは良いところだし、キミは立派な大木。》
《私たちが面倒みてあげたんだもの、胸を張りなさい!!》
《ありがとう、聖草さんたち。》
この世界に生まれて、パニックになったオレは今は遠い地面に生えている聖草さんたちに育てられたと言っても過言ではない。
と、言ってもオレがこの世界で初めて生えた木だそうで子育て…いや、木育て?には苦労したそうな。
聖樹、というのはオレのことだが、なぜそんな名前で呼ばれているかというと、オレの生えた場所が聖域と呼ばれる結界に守られたオレと聖草さんたち以外入れない場所であったためだ。
オレの転生した聖樹とやらはやたら長生きででっかくなる種類だったようで四桁をすぎたら年齢を数えるのが馬鹿馬鹿しくなった。
《でも、やっぱり最近は国とか出来てきたし、遊んできたいなぁ。》
《あら、なら精霊として人型になればいいじゃない。》
《そうだよー、キミは養分をたっぷりと吸収してるんだから、出来るよー》
《うふふ、実は私たちもたまに外にお出かけするの》
《本当!?やった!!…どうやるの?》
まだまだ私たちが面倒見てあげなきゃね!!と嬉々とする聖草さんたちにより、オレは人型をとることに成功したのだった。