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蕎麦屋にて……男たちの会話

今度はWLS編エピローグ直後のお話。

茅ヶ崎と蓮池は蕎麦屋で何を話すのか

 茅ヶ崎と蓮池は蕎麦屋に来ていた。

 何の変哲のない単なる蕎麦屋。

 昼時というのもあって店内は混みはじめている。

 向かい合うように座るとほうじ茶をお盆に乗せたおばさんが来た。

 「お客さん。注文は?」

 「天ぷら蕎麦」

 「カツ丼定食」

 カリカリとメニュー表にメモを取る。

 「天ぷら蕎麦とカツ丼の定食ですね。天蕎麦カツ丼定!」

 おばちゃんは店の奥に叫ぶ。

 「それにしてもここでカツ丼かね」

 「昔から好きなんですよ」

 「まあ、掛け蕎麦を頼んでいる時点で私も同類か」

 ズズズ、とほうじ茶をすする。

 「それにしても、なんで俺なんかを」

 「我々は常に人材が足りていないんだ」

 少し困った顔をして茅ヶ崎は語る。

 「だからって懲戒人事を受けたような奴をそう簡単に信じるか?」

 前々から思っていたことを言う。

 「公安の情報能力を舐めないでもらいたいな」

 「そういうことか」

 公安の役目の一つは裏切り者の粛清である。

 警官一人の今までの評価から交友関係から性癖まで筒抜けというわけだ。

 「まあ、強襲班にも陸自普通科から来た無資格のやつもいるからな」

 「慰めにもなっていないような」

 「刑事警察のやり方が少々苦手なこの組織だ。尾行と監視と尋問は得意だが、聞き込みとか殴って投げて撃ってはとことん苦手でな。君のような人材が欲しかったし、ちょうどいいタイミングで県警本部が勝手に放棄してくれた。捜査一課長なんて厄介払いできて清々したみたいな口ぶりだったな」

 「ひでぇ……」

 怒ることすらできない。しょうがないが、本当に心底呆れてしまった。

 「君もあの職場に未練はなかろう」

 「まだ未練はあるさ。今よりずっと平和だったからな。真下は大丈夫かな……。俺がいないとまるで駄目だから」

 ほんの少しだけ強がりを言ってみる。

 「居なくなってからも頑張っているそうだよ。君のいなくなった穴を必死で埋めている」

 「それはよかった」

 「君が手取り足取りやっているうちに十分な能力を持っていたようだよ。君の技量が高過ぎただけさ」

 課長は再度ほうじ茶をすする。

 「そうだ。湯浅が北海道にとんだ課員に頼んで買いだめた『やきそば弁当』っていうのがあるんだが」

 「蕎麦屋でその話題にしますか!?」

 普通そんな話題をわざわざ蕎麦屋でするだろうか。

 「何を考えたのか百個単位で購入してな」

 百個も弁当頼んだのか!?

 「腐りませんか?」

 「いや、賞味期限は十分大丈夫だが」

 弁当って一日で痛む品のはずじゃ。

 「どういう弁当です?」

 「UFOとか一平ちゃんにインスタントスープが付いた様なモノらしい」

 「……つまりはカップ焼きそば……?」

 「そうだ。マルちゃんの」

 蓮池はつい溜息を吐く。

 「それ先に言ってくれませんか?」

 「すまないな」

 おばちゃんがお盆を二つ持ってきた。

 「はい、天ぷら蕎麦とカツ丼定食」

 天ぷら蕎麦は一般的な大海老天の乗った掛け蕎麦。カツ丼定食はミツバのかかったカツ丼に盛り蕎麦とお新香がついてきた。

 「カツ丼定食って盛り蕎麦付きだったか」

 「それくらい想像できるだろう。蕎麦屋なんだから」

 ツユに薬味すべてをぶち込み七味を振るとさっそく蓮池はずるずると麺をすすり始める。

 「ねぎの食感がこういう時いい味出すんだよなぁ」

 蓮池が独り言を言っている間に課長は麺をすすり、天ぷらを一口かじるとツユを一口飲む

 「知っているか。妙興寺蕎麦の妙興寺はこの市内にあるらしいぞ」

 「見たことないな。妙興寺蕎麦って」

 「白髭大根にゴマとノリがかかったやつだ。さっぱりしていて夏にはいいぞ」

 「そうですか」

 蓮池はカツ丼を掻き込むと「うん、美味い」とひとり勝手に納得した。

 「そういえば、ライノが破損したんだが」

 「替えの拳銃は用意するよ」

 「いや。インチを二つ上げてほしいんだ」

 「バレルを6インチにするのか?」

 「そういうこと」

 盛り蕎麦をすする

 「よかった。4インチモデルを持ってくるところだった」

 天ぷらを一口食べると蕎麦をすする

 「野球見ます?」

 蓮池は何となく話を途切れさせたくなかったため野球の話題を振ることにした。

 「なんとなくヤクルトのファンだな」

 「俺は巨人です」

 そういうと蓮池は盛り蕎麦をすする。

 「中日じゃないのか?」

 「父が巨人党でしたから」

 「それは珍しかっただろうな。愛知出身だろ」

 「そりゃまあ、清州の生まれですから。友達みんな第一次星野監督時代で立浪とか落合とかで盛り上がってる中、斉藤、桑田、槇原の三本柱だったんで中日巨人戦でクラスメイトとよく言い合いましたよ」

 蓮池はもう一度盛り蕎麦をすする。

 「まあ、東京でヤクルトはちょっとマイナーかな。だから気持ちがよくわかるよ」

 ずるずると蕎麦をすすり汁を一口飲むと茅ヶ崎は一息つく。

 「アトムズからスワローズに代わってちょっとしたときに試合を見に行ったんだが、すごかったな、若松のホームランは」

 「若松って?」

 「若松勉さ。背番号はいまじゃヤクルトの永久欠番だな」

 衣がぶよぶよになった天ぷらを食べると茅ヶ崎は七味唐辛子を振る。

 蓮池はカツ丼を掻き込み蕎麦をすする。

 「蕎麦屋で食うカツ丼は一味違いますよ」

 「カエシが違うからな」

 蓮池はカツ丼の最後の一口をほおばる。

 茅ヶ崎は最後の一啜りをすする。

 「ごちそうさま」

 「ごちそうさま。御愛想お願いします」

 茅ヶ崎が店員に二千円を出す。

 つり銭630円をもらうと二人は蕎麦屋を発った。

二人の会話はふたを開ければこんなものでした。

しょうもない話が多い。

まあ、オフだということもあるけれど。

さて、次回は新拳銃の選定会議。

そして庶務十三課がなぜ警察庁で会議をするのかを解りやすく説明します。

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