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この作品には 〔残酷描写〕が含まれています。

魔王を倒したら、「処刑します」と言われた件

作者: 青い山
掲載日:2026/06/06

 俺はどこにでもいる、普通の社会人。


 朝起きて、飯食って、働いて帰る。そんな代わり映えのない毎日を過ごしていた俺は、ある日異世界に召喚された。

 目の前に女神様がいて、「貴方は勇者になりました。というわけで異世界に来てもらいますが、よろしいですか?」って言われて、二つ返事で「オーケー」と言ってしまったのが運の尽きだ。

 いや、ほんと何してんの?


 まあ、チート手に入れたし、冒険は楽しいから別に関係ないけど。

 俺達勇者一行の最終討伐目標は、魔王だ。

 何でも、女神様の悲願なんだとか。いや、自分で倒せよ。と、ツッコミたいところだが、そこはファンタジーのお約束だろう。無視だ無視。


「おい、ユウキ。もうすぐ魔王城だ。気、抜くなよ」

「お前こそな」

「ああん?ん、だと?」

「もう二人共。喧嘩しないで」


 勇者一行は、《攻撃役》の俺――ユウキ、《盾役》の短気な男――ジール、そしてしっかり者の《回復役》――ニナの三人で形成される。

 少ないように感じるが、一人一人の力がずば抜けているので、こんくらいが丁度いいのだ。


「お、見えてきた。あれか?」

「そうだな。……デカ!魔王城デカ!」

「もう!もう少し緊張感を持って下さい!」

「えー、いいじゃん。旅行気分の方が楽しめそうだし」

「これは旅行じゃありません、人類の明日を賭けた戦いなのです!」

「えー、そんな緊張するなって。なぁ、ジール?」

「馬鹿か、ユウキ。緊張感持て」

「あ、お前、この野郎!掌返しやがって!」

「へへ、してやったり」

「てめー……!」

「やめて下さい。貴方達が喧嘩したら魔王が暴れるより被害が大きくなります」

「「確かに」」


 そんなミニコントを繰り広げている内に、魔王城に着く。

 当然の如く、門番には「誰だ!ここは、魔王様の住まいだぞ!許可なく立ち入ることは……」と言われたが、俺が一言「黙れ」と言ってデコピンをお見舞いしたら、「いたああぁぁ!!」と叫びながら吹っ飛んだ。

 力加減ミスった感じするけど、まあ大丈夫だろう。


 俺達は、城の中に入る。内装も外装に劣らず豪勢だった。

 

「スゲーな」

「おい、見ろよこの絵画。これ、俺達が最初に受けた時の依頼のやつじゃね?」

「ん?あぁ……。ホントだ。あれか!偽物だって喚かれたやつか!」

「そうだよ!えー、まじか。まじで偽物だったんだ。よし、奪うか。じゃ、ニナ。これ、収納しといて」

「ちょっ……、アンタ達!私はパシリじゃないわよ!」

「じゃあ、下僕だな」

「ち、違うわよ!私が誰の下僕だって言うの?」

「そりゃ、偉大なる勇者様に決まってるだろ」

「お前こういう時だけ俺を持ち上げんな」


 軽い調子で城内を進んでいく。

 途中、途中出くわす雑魚共は、俺のデコピンで始末する。

 ニナに敵を近づけないように注意しながら。

 なんか、魔王軍四天王の中で最強と自称している奴もいたが、そいつも漏れなくデコピンで倒してやった。デコピン最強。


「弱いな」

「そうだな、味気ないな」

「なら、まだジベリ洞窟の方が楽しめたわ」

「それな、あそこ無限に《モンスター》湧くから楽しかったよな」

「ああ、《不落の洞窟》って言われるのも頷けたわ」


 順風満帆に魔王城を踏破していた俺達、しかしその瞬間の終わりは唐突に訪れる。


『魔王の死亡を確認』

『討伐者は『最強の勇者ユウキ』『鉄壁の相棒ジール』『稀代の聖女ニナ』』

『三人を『裁きの間』に転送』

『準備完了しました』

『実行します』


 頭の中に無機質な声が流れる。

 ジールとニナも同様の声を聞いていたのが、表情から伺える。


「なんだこれ?」

「さあ?てか、魔王の死亡を確認とか言ってたな。ユウキ、お前魔王倒したのか?」

「うーん、あれじゃね?あの、少しだけ図体デカかったやつ」

「あー、あいつか。ニナ《鑑定》してたか」

「する暇もなく殺されていましたわ」

「確かにそうだな」

「『裁きの間』だっけか?聞いたことあるか?」

「ない」

「ないですわ」

「だよなー」


『『裁きの間』への転送失敗』


 転送失敗?


「転送失敗だって」

「ああ、何だった結局?」

「……ユウキ、ジール。何か強大な魔力を感じます。警戒して下さい」


 ……まずいかもしれない。


「おい、ジール……。ニナが暴れるかもしんない」

 

 小声で耳打ちする。


「ああ、まずいな。どうする。気付いてる風を装うか?」

「いやいや、俺達は魔力とか分かんないから、それはむずいだろ」

「じゃあ、どうする?ニナが暴れたら本当にやばいぞ……」

「ふへへ。魔力の高鳴りを感じます……」

「まずい……!ニナの本性が……!」

「抑えるんだ、ニナ!」

「やめろ、ジール。こうなったニナはもう誰にも止めれない」


 俺達が冒険をしている時、なぜニナを雑用係にしたのか。

 それは、パシリやすいからという理由の他に、戦闘狂としての一面を出すのを防ぐためでもある。

 くそ……。さっきまで成早で倒していた努力が……。


 俺とジールが、ニナの暴走を止めるのを諦めた、次の瞬間。

 俺達の真正面に、高速でなにかかが飛来した。


「久しぶりね、勇者ユウキ」

「久しぶり?生憎俺の異世界での友人はこの二人だけだ」

「あら、寂しいこと言うじゃない。覚えてない?私よ。女神よ、女神」

「女神……?ああ、あの時の」

「そう、思い出した?」

「はい、バッチリと。で……、何の用ですかね?」

「貴方達を『魔王虐殺罪』で処刑するためよ」

「……は?」

「死ね!」


 ちょいちょい、待てニナ!まだ、話は終わってない!


「ジール、止めろ!」

「あん?こうなったニナは誰にも止められないんじゃないのかよ?」


 悪戯っぽい笑みを浮かべながらジールが言い返してくる。


「……っく!ふざけている場合じゃないんだ!そいつは女神だ!多分俺達がどうこうできる相手じゃ……」

「死ね!」


 ズドーン!という轟音が、辺り一帯に響く。

 煙が立ち昇り、ニナや女神がどうなったかを確認することができない。


「ニナ!無事か?!」

「ええ、ユウキ。無傷だわ」

「そうか、良かった!で、女神はどうなった?!」

「気絶しましたわ」

「え?」

「だから、気絶しましたわ」

「あ、まじ?」

「はい、まじですわ」


 ……パねーっすわ、ニナさん。








 聖女はその後、十分後くらいに目覚めた。

 「ここはどこ?私は誰?」とか言い出した時は焦ったが、その後すぐに「ここは魔王城、私は女神」と言って覚醒したので一安心だ。


 ……ニナっていう不安要素があるけど。

 まあ、今は落ち着いてるから大丈夫だけど。


「あのー、女神?話せそう?」

「はい、私は話せます」

「そうか、なら良かった」

「というわけで処刑します」

「ちょいちょい待て待て。なんで処刑っていう流れになってんだ?そこら辺説明してくれよ」

「魔王を殺したからです」

「……それの何が駄目なんだ?魔王討伐は女神の悲願じゃないのか?」

「そんな悲願はありません」

「……は?」


 会話は平行線を辿る。

 女神の悲願を叶えるために魔王を倒した俺、魔王を倒したことに憤慨している女神。

 なるほど、見事なまでの矛盾だ。


「お前は俺に、魔王討伐が悲願と言ったんだ。覚えてないのか?」

「はて、そんな記憶は……?」

「当然よ。その女神は本当の女神ではないもの」

「はい……?」

「おいおい、誰だよてめぇ」

「ふふ、また強い人が……」


 もうえらいこっちゃ。

 ジールは怒るし、ニナは涎垂らして今にも殴りかかりそう。

 てかニナ落ち着いてたのに……。もしかして、今日は血が騒いでるのか?慣用表現ではなく。


「あの、貴方は?」

「私は、女神よ」

「女神はもういますよ?」

「こいつは女神ではないわ。魔王の妻よ」

「魔王の妻?!魔王に妻いんの?!凄いなこの世界線!」

「黙れ……!この、勇者め!!!」


 速い……!

 チート補正で、動きがスローモーションになってるはずなのに……。


「うおっ……!」


 バックステップを踏み、間一髪のところで回避する。

 しかし、相手は避けられるのを予測していたのか、次の攻撃の体勢に入っていた。


 ……後ろ蹴りか……?

 いや、口が動いている。


 頭上を見上げる。

 案の定、巨大な氷塊が落下してきていた。

 蹴りはフェイントで、本命はこの魔法だってわけか。


 異世界に来てから初めての本気の戦闘。

 恐怖も感じる。怯えもある。でも何よりも勝っていたのは快楽だった。

 案外戦闘狂なのかもしれないと、自分の認識を改める。


 次は俺からも攻撃を仕掛ける。

 腰に差さった剣を引き抜き、中段で構える。

 一呼吸し、間を作る。この間を作ることで相手の気力を削ぐ!


 一回大振りに振るい、相手が動いたのを確認すると、俺は上げていた腕を中段に構え直す。

 一瞬、相手が微かに目を見開く。その時だけ動きが止まる。

 しかし、それはほんのコンマ一秒。されど、コンマ一秒。


 命懸けの戦闘の最中、それは大きな隙となる。

 その隙を突いた、俺の渾身の突き技。

 これで相手は倒れ……ないだと?


 ――まずい!

 そう思った時にはもう。

 

 決着はついていた。


 大きな隙を晒した俺は、無様にも魔王の妻の攻撃を諸に受けることになる。


「がはっ!」


 胸に大きな、十字の形が刻まれる。

 頸動脈を突こうとした攻撃は辛うじて避けたものの、首筋に掠り、無視できないほどの傷を付ける。

 吐血が激しい。立ち眩みが激しい。


 初めて感じる「死」の気配がすぐそこまで迫ってきてるような気がした。


「終わりだ」


 仰向けに倒れる俺に告げられた、残酷な言葉。


 時間が止まってしまったのではないか?

 そう錯覚するほどに動きが遅く見える。

 しかし、心臓の音だけはやけに大きく響いており、今にも破裂しそうだった。


 ドーン!という音が聞こえる。

 ――俺を殺すだけなのに……。用心深いな。


 その音に見合うだけの痛みがやって……こない?

 閉じていた目をゆっくりと開ける。

 魔王の妻の姿がない。


 周りに目を向ける。

 少し離れたところにニナがいた。

 その下にいるのは……魔王の妻だった。


「ユウキが死にそうだったから、助けてあげたよ!ユウキ、弱いね!」


 あ、はい。そうですか……。まじですか……。


 ……ニナさん、まじパねっすわ。








「驚いたわ、ニナ。勇者を倒した敵をあっさりと倒すなんて」

「まじでそれ」

「ああ、がちでまじで」


 傷を癒してもらい、今は女神に状況の説明をして貰っている。


「魔王の妻って、なんであんな強いんですか?」

「うーん、正直私も想定外だったわ。まあ、概ね夫を殺した恨みといったところじゃないかしら?」

「それだけで、あんな強くなれますかね?」

「女は愛する男ためなら、神にでも反抗するのよ」

「まじですか?!」

「まじなのよ」


 まじか。女半端ねー。

 コエー。


「てか、いつ魔王殺したの?」

「あら、貴方達が殺してたじゃない。デコピン一発で殺しちゃってたけど」

「あー……、あの少しだけ図体デカかったやつですかね?」

「そうよ」

「えー……、俺デコピンで魔王殺してたの?で、魔王の妻に倒されたの?」


 やべー。魔王の妻半端ねー。

 そして、それに勝つニナはどうなってんの?

 ニナが勇者の方が安心でき……ないな。

 うん。この戦闘狂に任せたら色々終わる。

 よし。俺が勇者で良かった。


「で、『裁きの間』っていうのは?」

「それは、魔王の妻が魔王を倒した者のために作った、特設の処刑場よ」

「その場で断罪すればいいだけなんじゃ……」

「なんでも、そこで断罪された時の様子が全世界の人間に共有されるそうよ」

「え?」


 なにそこ、怖。

 良かったー。転送失敗して。


「転送失敗したのはなんで?」

「私が妨害したからよ」

「妨害してくれたんですか?」

「ええ。魔王の妻を倒さなきゃ、本当の意味で魔王討伐とは言わないもの」

「どういうことですか?」

「魔王の妻は、魔王を生み出す能力を持っているの」

「え。つまり、魔王の妻を倒さないと、永遠に魔王が誕生するってことですか?」

「そう」

「恐ろしや」


 気絶している魔王の妻を見る。

 こいつにそんな能力があると考えただけで怖くなる。


「早く殺しましょう」

「ええ、それがいいわ」

「じゃあ、誰が殺す?」

「私が殺したんだから、私が殺りたいわ」

「分かった」

「ちょっと、ただ殺すだけじゃつまらいじゃない。どうせなら、とっておきの場所で殺りましょう」

「とっておきの場所?」

「そう。『裁きの間』よ」







 今、俺達は『裁きの間』にいる。

 女神様が妨害した時に、その座標を固定しておいたそうだ。

 流石女神。


「じゃあ、起こすわよ」

「「「はい」」」

「起きなさい」

 

 それだけで起きるのか?

 そんな不安は、次の瞬間には吹き飛んだ。

 なんと、ニナにボコボコにされて、死んだように眠っていた魔王の妻が一瞬にして起きたのだ。


「……女神」

「魔王の妻。観念しなさい。反撃は不可能よ」

「ここはどこだ?」

「さあ?貴方が一番勝手知ったるところじゃない?」

「…………『裁きの間』か……!」

「ご明察。さ、ニナ。殺っちゃいましょう」

「はい。殺りましょう!」


 やめてくれニナ。そんな馬鹿でかいナイフ持ったまま満面の笑みを浮かべないで……!

 ああ……!こっち見ないで!


「大丈夫ですよ、魔王の妻さん。直に、夫さんのところに逝かせますからね」


 全然大丈夫じゃないよ。


「じゃ、あんまり焦らすのも可哀想なので、もう殺りましょうか」

「待て、せめて遺言だけでも……」

「黙って逝って下さい!」

「ぎゃああぁぁ……!」


 魔王の妻は胴体と首が泣き別れになり、またその胴体も半分に切り裂かれる。


「さあ、魔王の妻の三枚下ろしの完成です!」


 そんなニナの言葉に俺は苦笑するしかなかったのだった。

読んで下さりありがとうございます。久しぶりに書いたので、誤字脱字が多いと思います。また、表現の誤りなどもあったら、感想欄で教えて下さると助かります。

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ミスりすぎやろw ルビ振りミスってる。 |■■■《〇〇〇》 →|■■■《〇〇〇》 こうしないと、執筆してる人しか訳ワカメな文章の出来上がりになるぞ〜 修正がんば☆×5
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