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ぼくのかのじょは、なまくびさんだ。

作者: 遊月奈喩多

 皆様こんにちはこんばんは、遊月奈喩多と申すものでございます!


 今、緊急で作品を執筆しております(YouTuberかな?)

 SNSで「首なし或いは生首を扱った作品を見たいのぜ」という投稿を見かけた作者は、喜び勇んで執筆したわけなのですが、はてさて……。


 本編スタートです!

 突然だが、僕には大好きな恋人がいる。

 名前は久美音(くびね)実咲(みさき)さん。濡羽色の艶やかな黒髪に、透き通るような瞳。その肌は万年雪を思わせる白さで、目鼻立ちは今までに見たことのないくらい整っている──なんて言っても、僕の人生はせいぜい十数年、誰かと交際するなんて経験も久美音さんが初めてだ。


 そんな久美音さんには、少しだけ変わった特徴がある。

 彼女には首から下がない。

 つまるところ、首だ。

 解雇(クビ)でも先頭(くび)でもなく、本物の生首だ。

 neck。

 骨になればさぞかし綺麗な髑髏(しゃれこうべ)になるだろうことが窺える、あまりに美しい首。

 往年の名作に登場する美女が現在も生きていたら山賊にでも持ってこさせて、自宅で並べて遊びに興じてしまうだろうことが火を見るより明らかな、とても美しい首だった。


 そんな遊びに駆り出されでもすれば、きっと久美音さんのような首はとびきり醜い中年男の首とくっ付け合わせられてしまうに違いない。力任せにぐちゅぐちゅと、肉や皮膚が(えぐ)れてしまうのも構わずに擦り合わされて、その不可逆の損壊(へんか)を肴に下衆たちが穢らわしい妄想に花を咲かせるための材料に使われてしまうに違いない。

 ああ、くそ。

 そんな様を想像したら、(はらわた)が煮えくり返りそうだ!


 かの有名な文学作品の中で、傲慢な絵師に気付きを与えるという口実で燃やされた娘の乗せられた車よりも、今の僕の心は猛々しく、いやもはや禍々しいまでに燃え盛っている!

 久美音さん、久美音さん!

 ああ、久美音さん!

 久美音さんは僕のだ、僕の恋人なんだ!


 下衆どもに渡すわけにはいかない、誰にも渡したりなんかするもんか!!


「はあ……はあ……、はあ……、?」

 ふと、久美音さんが物言いたげな視線をこちらに向けているのに気付いた。いったいどうしたんだろう、ああ、そうか。


「ごめんごめん、怖がらせちゃったかな」

 スクールバッグの中から久美音さんを取り出して、そのつるりと綺麗なおでこに口づける。彼女を不安にさせるなんて、それに僕自身も彼女を信じきれていなかった──そんなの、彼氏失格だ。

「安心して、久美音さん。君のことは僕が守るから」

 僕は、久美音さんの彼氏だ。

 高嶺の花と呼ばれ、誰からも遠巻きに見られて寂しげにしていた久美音さん。才色兼備、学校──いや創世以来の才媛だなんて持て囃されて、どんどん他のみんなからの距離を遠ざけられてきた久美音さん。


 そんな久美音さんが事故に遭って、その首が偶然にも僕の前に転がってきたとき。

 僕は誓ったんだ。


 僕なら、彼女を孤独にはしない。

 誰よりも彼女の近くで、彼女の幸せを守ってみせるんだ。

 今もそれを実践しているし、これからも守り続けていくつもりだ。防腐処理は既に施してあるし、知り合いの医師に頼み込んで切断面も整えてもらった。

 怪しげな高額バイトで久美音さんの唇やら瞼やらのプチ整形をしたり(もちろん、あるがままの姿を保つための処置だ)、抜けていく髪を集めてウィッグ作りだって欠かさない。


 それに、何よりも。


「それでさ、久美音さん。今日の現国は『人間失格』やるんだってさ。ほら、葉蔵(ようぞう)が睡眠薬で自殺未遂するところ……いや、そのちょっと前だったかな。ほら、飲んだくれてたところに声かけてくれたのがきっかけで結婚した奥さんがさ、…………」


 何よりも。

 彼女が孤独にならないように、たくさん声をかけるんだ。

 彼女はいつも、ひとりで文庫本を読んでいた。その目がどこか寂しげだったのに、かつての僕は何もできなかったんだ。


 僕なんかじゃ、住む世界が違う。

 そんな、ありもしない境界線で勝手に彼女を隔ててしまっていた。久美音さんだって、僕と同じ人間だったというのに。

 もう、今は違う。

 僕と彼女の間に、存在しない壁なんてない。


 だから、僕は、ううん。

 僕らは今日も、恋し続ける。


「そうだ久美音さん、こないだ学校の近くにダッカルビ饅頭アイスバーガーおでんの屋台が出てたんだよ。確か好きだったよね、放課後食べに行かない?」

「へぇ、また来てたんだ。私カルパッチョレモンパセリのトッピング頼んでいい?」

「もちろん!」


 綺麗なところはさっきからずっと伝えていると思う。だけど、それ以外にも。


 けっこう食いしん坊なところとか。

 あとそれを言うとちょっと照れるところとか。

 敢えて言わないでいても僕の考えてることをお見通しなところも。

 あと、たぶんちょっとむっつり気味なところとか。


 その全部が、大好きだ。


 そうして僕らは今日も、朝の通学路をふたりで歩いていく。

 前書きに引き続き、遊月です。本作もお付き合いいただきありがとうございます! お楽しみいただけましたら幸いです♪


 さて皆様、生首といえば誰が思い浮かびますか?

 ……………………。

 そうですね、冥法王ベース(ハーメルンのバイオリン弾き)ですね。ひょっとしたらゆっくり解説動画を思い浮かべる方もいらっしゃるかも知れません。

 ゆっくりなゆたです。

 ゆっくりゆづきだぜ。


 ????


 閑話休題。

 生首といえば冥法王ベースという脳回路をしている作者なので、このお話の執筆中はIKEBUKUROさんの「傷だらけのツバサ」や錦織健さんの「未完成協奏曲」を聴きながら書いていたのですが、やはりこういう話を書くときはアニメソングだなと思ってしまいますね。当該作品についてはだいぶ後になってから原作読了後に観たのですが、リアルタイムで放送されていたのは作者が幼稚園に入る前くらいだったそうです。名作は時を越えるのかも知れませんね……それはそれとして原作に沿ったアニメ版も観てみたいけれども!

 上半身も下半身も犬であることでお馴染みの剣客のケルベロス形態も動く画面で観てみたいところですけれども!


※ 作者はわりとアニメ版も好きだったりします。原作のギャグシーンをほぼカットしてドシリアスにキメたことで後味がとんでもない……というかお手本のようなメリーバッドエンドみたいな仕上がりになっていたけれども。たぶん近い将来フルートはハーメルを封印した箱を開けちゃいそうだなと予感せずにいられなかったけれども! 作者はあのアニメ版も好きでしたわよ。


 ただ、それはそれとして原作通りの吐き気を催す邪悪状態なお父さんも観てみたいわというコメントを添えて、『ぼくのかのじょは、なまくびさんだ。』のあとがきとさせていただきます。


 また違うお話でお会いしましょう!

 ではではっ!!

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― 新着の感想 ―
生首保管の正気|《きょうき》がとても麗しく…… え、彼女その状態でしゃべれるんですか!! やったぜ。ぜひ素敵な二人のライフをお過ごしくださいませ!! 
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