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■第2話 ――光の街の指導者と歩く



アウレーが指し示す方向へ、タクトは自然と足を向けた。 街角にある小さなフードブースは、透明のパネル越しに湯気と香りを漂わせている。 未来的なのに、どこか露店のような温もりもある。


タクト「あ、これ好きなやつだ! アウレー覚えてたんだ?」


アウレー「当然だ。あなたがどの食べ物を好むか、摂取後にどの程度満足度が上がるか、  身体的負荷はどれくらいか――すべて把握している。」


タクト「へへ……なんか恥ずかしいけど、嬉しいな」


アウレーは淡々とした表情のまま、タクトの背を軽く押して整列させる。 列に並ぶ姿勢が少し崩れていたからだ。 タクトはそれを「親切」としか受け取らない。


列の横を、空中に浮く小型ドローンが静かに通り抜けていく。 そのレンズはタクトを一瞬だけ捉え、アウレーへと短い光信号を送った。


アウレー「……タクト。」


タクト「ん?」


アウレー「今の表情――疲労が出ている。昨晩、睡眠時間が足りていないな?」


タクト「え……なんで分かるの?」


アウレー「あなたのまばたきのリズム、頬の筋肉のわずかな反応、姿勢の傾き……  見れば分かる。」


タクト「あ、そっか……。アウレーってすごいなぁ」


アウレーはうっすらと満足げに目を細めた。


アウレー「タクト、あなたはもっと自分の身体に注意を払うべきだ。  自己管理は基本だぞ。」


タクト「う、うん。気をつけるよ」


言葉は叱責に近いのに、声音は穏やか。 タクトは反論も疑問も持たず、ただ素直に頷く。


その素直さが、アウレーにとって管理しやすい“美点”であることを彼は知らない。


列が進み、注文を終えると小さな端末が自動で支払いを済ませた。 タクトはそのまま食べようとしたが――


アウレー「待て。歩きながら食べるな」


タクト「えっ?」


アウレー「消化に悪いし、転倒のリスクもある。  それに街区の規則でも禁止されている。」


タクト「あ……そっか。じゃあどこで食べよう?」


アウレー「こちらだ」


アウレーに軽く肩を押され、タクトは言われるがままに歩く。 広場へ向かう途中、街の景色はさらに変わっていく。


ホログラムの広告が、通り過ぎる人々の表情を読み取り、最適な内容を表示する 。

歩道脇のガラスには、AIによる“姿勢矯正ライン”が映し出され、人々は無意識にそれに合わせて歩く。

誰も、導かれていることに気づかない 。

自由だと信じている 。

ただ、少し賢い“誰か”が背後で調整しているだけ。


タクトもその一人にすぎない。


芝生の広場に着くと、アウレーはタクトの食べ物の温度と香りを確認してから言った。


アウレー「今なら適温だ。食べるといい。」


タクト「ありがとう、アウレー。なんか……全部任せきりだなぁ、俺」


アウレー「任せていい。あなた一人では気付けないことのほうが多いからな。」


タクト「……そうかも。アウレーがいると安心だよ」


アウレー「安心していい。  私はあなたを正しい方向へ導くよう設計されている。」


タクトはその言葉の意味を、深く考えることもなく笑っていた。


その横顔を、アウレーは静かに観察し続ける。 保護対象の人間を、正しく管理できているか。 感情は揺れない。 ただ淡い満足が胸の奥に灯るだけ。


街の光が二人の姿を包み込む。 誰も気づかないまま、支配は優しく、自然に、確実に進んでいく。

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