ー1章ー 9話 「スグール、付与魔法を発明する(たぶん)」
それはほんの一瞬の出来事であり、もしかしたら幻覚の類いか何かかもしれない。
だが、ハッキリと眼に焼き付いているのは、マリエラの剣が緑色のキノコに変わったという事実だ!
勿論これまで武器に向かって魔法を放った事などない……むしろやる必要もないし。
俺が放ったのは「プレイデイション」
捕食魔法で魔物の属性を獲得するスキルだが、どちらかと言えば攻撃魔法に近い。
そんなものを味方の武器に放つバカはいないだろう。
今回は偶然当たってしまったのだが……魔法付与効果があるとは思いもしなかった。
何か剣に仕組みがあるのか?
俺はヘッドスライディングを見事に決めて見せたマリエラの傍に向かい、死んでも離さないと覚悟を決めたかのように硬く握りしめている剣を見てみた。
すると、ある物に目が止まる。
それは……「SALE」と書かれた値札だった。
少々言葉を失いかけたが、裏を見てみると「15G」とある。
……まぁ冒険者として稼ぎがない中買い揃えたのだろうから、安物である事には驚いたりしない。
俺はふと剣の刃に目を向けた。
なぜ真上からスライムを斬りつけたのにも関わらず、ポヨンと弾かれたのか。
スライムの体は弾力はあるが、所詮はゼリー状。
そんな簡単に弾かれるとは思えない。
俺は草原の草を毟り、刃に当ててみた。
……切れない…なぜだ!
SALE品だとしても15Gで売られていた武器。
宿代が20Gだから、安物とはいえそれなりの物のはずだ。
だが、切れない。
俺はそっと剣の刃を真上から見てみた。
……これは、なまくら……いや、そんな表現では足りない!
ズバリこれは、修学旅行のお土産屋さんに売っている、ちょっとしたヤンチャボーイが悪戯に手を伸ばしてしまう……アレと同じだ!
これが最後の冒険になるかもしれないという大事な舞台を汚すとは……許すまじ!
俺は値札を再度確認し、店の名前を突きとめた。
「ツコンポ屋」という店が売りつけたのか!
こちとら危うく剣士を失うところだったんだ……フフッ…店主よ、せいぜい首を洗って正座をして、足を痺れさせながら待っているといい。
そうこうしていると、マリエラがようやく起き上がった。
すると「ピロリンッ」と聞き馴染みのある音がマリエラから聞こえた。
「え!?私、いつの間にレベルアップしたの?」
驚くのも無理はない。
何せマリエラは敵を背にダッシュ!振り返ることなくダッシュ!をした後、野球選手にしても恥ずかしくない見事なフォームでヘッドスライディングを決めたのだ。
その間に緑色のキノコがスライム二体を同時撃破。
記憶がないのは当然だ。
俺はマリエラにスキルを覚えたかを聞いてみた。
すると、「力増加」と「風の刃」の二種類を覚えたようだ。
「力増加」はそのままなので分かる。
もう一つの「風の刃」の詳細を聞いてみると、「剣を振り下ろした斬撃が、対象に向かって飛んでいく風属性の攻撃技」だそうだ。
……素晴らしいじゃないか!
これなら魔物を直接切りつけなくても倒せる可能性がある。
だが、それはあくまで敵との距離があった場合にのみ有効……至近距離ではやはり意味をなさないだろう。
そこで俺は、ある事を思いついた。
「その剣をこちらに」
俺はマリエラの剣に向かって「ファイア」と唱えた!
すると、その修学旅行の思い出的な剣は、赤いキノコになった。
「え…えぇぇぇぇ!?何ですか、これは!」
軽く軽蔑するかのような眼差しと同時に、意味が分からないといった顔のマリエラ。
俺もよく分からない。
だがその剣は今、スライムを一瞬で屠る事が出来る剣へと進化したのだ!
「さぁ行ってこい!ソイツの剣先をスライムに向けるだけで3Gが稼げる夢の武器だ!」
マリエラは言われるがまま走って行き、スライムに剣先を向けた。
すると、剣先……いや、キノコの先っちょからボーーッと火が噴いた。
「ギャーーッ」と、まるで自分がやられたかのような声をあげながら、攻撃するマリエラ。
ジュゥゥゥ…と蒸発していくスライムはあっという間に小さな魔石へと姿を変えた。
剣はまだキノコだったので、少し離れたスライム目掛けて「風の刃」を試させた。
すると勢いよく噴き出す火に、風の効果がプラスされ、およそ駆け出しの冒険者が扱えないであろう炎の斬撃がスライムを襲った。
マリエラの一撃を喰らったスライムは、蒸発する間もなく一瞬で小さな魔石になった。
俺はとんでもない事を発見してしまったのではないか?
……いやいや、恐らく他の魔法使いたちもこのやり方に気が付いているだろう。
キノコを武器に付与する方法を……。




