閑話休題 鬼と狐(2)
メッセージの2日後 喫茶店 17時
2人の女が、向き合い一見楽しそうにおしゃべりをしている。
一人は、セーラー服を着た鬼塚 紅葉 メニューを見ながら
「うーん 何にしようかな〜 ご飯前だしね〜 コーヒーでいいか!
コーヒーお願いします。」
「私は、いい……いらない」
とブレザーを着た戸祭 佑夜
「佑夜ちゃん ここでなんにも頼まないの良くないよ。なにか頼みなよ」
「……………………なら紅茶」
少々お待ち下さいを店員が去っていく。
少しの沈黙も後
「鬼塚さ〜私、 あんたと友達じゃないんだよ。同学年だけどさ。ていうか 会った の今日で2回目だろ なれなれしくない?」
「私さ〜変わったんだよ。だから人と壁を作らない。佑夜ちゃん」
お待たせしました。とコーヒーと紅茶が運ばれる。
ごゆっくりと店員が去っていった。
「でさ、あれ どういうこと。 あんた何、勝手に人の男にちょっかい出してんの しばくぞ」
「うわっ いまどき、しばくって 先輩かわいそう。 たぶんガチガチに束縛されてんだろうね。私ならそんなことしないのに」
「大きなお世話だっての で、どこまで知ってんの 私が狐とか?」
「バレバレだよ。全然隠せてないし。おおかた先輩のひとの良さにつけこんで、既成事実つくらされて、ズルズル関係持たされてるんだろうね。あの人チョロいから」
「へ〜お前もその2本の角 隠しきれてないぞ。地味メガネの陰キャのくせして、少しくらい垢抜けたって、元は変わらないんだよ」
とお互いコーヒーと紅茶をすする。
「あのさ、佑夜ちゃん。あなた妹だよね。そろそろお兄ちゃんを解放してあげなよ。かわいそうだよ。」
「私達は、ラブラブなんだよ。もう毎晩、同じ部屋で愛し合ってるからね。
もう嫁認定されてるから、お前が入り込む隙間はないんだよ。
わかったらコーヒー飲んで帰れ。もう正義にちょっかい出すな。」
「へ〜そりゃ 聞き捨てならないね。
嵌められて無理やり関係もたされて、ほとんど自由がないくらい束縛されて、死ぬまでそれが続くって、地獄だね。
先輩が幸せなら身をひこうかとも思ったけど。
佑夜ちゃん。私、必ず先輩を取り戻すから………」
レシートを持ち紅葉は立ち去った。
会計をしようとすると、佑夜の分も支払っていた。
育ちが出てるっていうか?
こいつ、なんだかんだでいい子ちゃん、なんだよな
大学の講義を終えてキャンパスを出ると、茜色の夕焼けが街を染めていた。
「せんぱーい、今から帰りですか?」
振り返ると、赤いポニーテールが風に揺れる少女――鬼塚紅葉が笑顔で立っていた。制服のセーラー服が少し場違いに思えるほど、彼女は目を惹く存在になっていた。
「うん……今から家に帰るところ」
「途中までご一緒してもいいですか?」
「……帰ろうか」
「はいっ!」
その返事と共に、紅葉は隣に並ぶ。歩幅を合わせるようにして歩くその姿に、ほんの少しだけぎこちなさを感じた。
他愛もない会話が続いた。高校の思い出、部活、進路。紅葉は正義と同じ大学を目指すと語り、正義は大学の講義やサークルのこと、そして――妹・佑夜のことを話した。
妹の話になると、正義の表情がふっと緩む。それは、紅葉の胸に鈍い痛みを残す。
(あの人の表情……あの女を想ってる顔……どうして……)
やがて住宅街に差しかかった時、紅葉はふと立ち止まった。
「……実は、最近ストーカー……かな。後をつけられてる気がして。なんか怖くて……」
「マジか……。じゃあ、今日は家まで送ってくよ」
「やったー! お願いしますっ」
笑顔を浮かべた紅葉に連れられた先は、門構えの立派な和風建築の豪邸だった。木製の扉、白壁に瓦屋根。まるで時代劇に出てきそうな雰囲気だった。
「よかったら上がりませんか? お茶も出さずに帰すと、両親に怒られちゃいますから」
「じゃあ……お茶だけ。少しだけだよ」
靴を脱ぎ、静かな廊下を通ってリビングへ。
出された緑茶は香ばしい香りが立っており、紅葉は向かいのソファで微笑んでいた。
「じゃあ……そろそろ帰るね」
そう言いかけた時、不意に――
「……あれ……なんか……おかし……っ……」
指先が痺れ、体が動かない。まるで体が自分のものではないように。
「先輩……ゆっくりしてくださいね。なんならこのまま一生」
その言葉を最後に、正義の意識は闇に沈んだ――。
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