表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
1/1

メサイアプロダクション

ここは――スターシンフォニアプロダクション。

芸能界でも名の知れた、大手芸能事務所のひとつだ。


私は――赤司花梨あかし かりん

このスターシンフォニアのオーディションを受けていた、アイドルを夢見るごく普通の女の子。


そして今日が、その運命の日。

オーディションの、結果発表。


けれど。


「……ない。私の名前がない……補欠合格の方にも……」


どこを探しても、自分の名前はなかった。


――私は、落ちた。


胸の奥に突き刺さる現実。

涙があふれそうになって、慌てて袖でぬぐった。


何も言葉が出ないまま、私はその場を離れた。


帰り道――。


「ねえ、キミ」


背後から突然声をかけられ、私は立ち止まった。

振り返ると、スーツを着た男性がこちらを見つめていた。


「僕ね、こういう者なんだけど」


そう言って差し出されたのは、一枚の名刺。

その表には――メサイアプロダクションという文字。


(……メサイアプロダクション?)


スターシンフォニアよりも規模が大きく、実力派アイドルを数多く輩出している、大手中の大手。

そんな事務所の名前が、名刺に刻まれていた。


頭が追いつかないまま、私は名刺を受け取り、そのまま家へ帰った。


「ただいまー!」


「なに、花梨、ずいぶん明るいじゃない。もしかして……受かったの?」


「ううん、オーディションは落ちちゃった。でもね、帰り道にスカウトされたの。しかも――メサイアプロダクションに!」


「えっ!? あのメサイア!? すごいじゃない! 今日はお赤飯にして正解だったわね!」


***


翌日。


私は、メサイアプロダクションのビルの前に立っていた。


「……ここで合ってるよね?」


見上げたビルは空に届きそうなくらい高く、胸の鼓動が速くなる。


(大丈夫、落ち着いて。私は、スカウトされたんだから)


深呼吸して、そっと自動ドアをくぐる。


そこには――眩しい世界が広がっていた。


華やかなオーラをまとう男女。洗練されたフロア。

テレビでしか見たことのなかった“芸能界”が、目の前に広がっている。


その瞬間――


突然、照明が落ちた。


あたりが暗くなり、ざわめきが広がる。


そして、どこからともなく響く声。


「おめでとうございます。あなた方は、私の独断で選んだ、18歳以下のアイドル候補生――100名です」


ざわつく会場。その声は静かに続ける。


「私は、愛度塁あいど・るい。今日から、あなた方には共同生活を送ってもらいます。家に帰ることはできません。そして、ここでのルールには絶対に従ってもらいます」


「約束しましょう。このカリキュラムを最後まで生き残った者には――日本一のアイドルグループの座が約束されます」


驚きと緊張が混ざった空気の中で、私はただ静かに息を呑んだ。


(これが……本物の芸能界の世界なんだ)


怖い。でも、ワクワクしている。

私は、この道を選んだ。自分の意志で。


――夢の続きを、私はここから歩き始める。

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ