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迷いの森Ⅳ ~木に擬態する魔獣とだるまさんがころんだ~

 そろそろ森の中間点にさしかかろうとした頃。 

「おかしい、何か変だ。森の声が聞こえない」

 トポロが、ぶつぶつ独り言をつぶやいて、きょろきょろと周囲を見回していた。

 そして、馬車を止めて、先頭を行くウルフ団長に呼びかけた。

「団長、ちょっといいですか」

「どうたした、トポロ」

 トポロは御者台から降りて、団長の所へ。

「何かあったみたいだね。ちょっと様子をみてくるよ」

 母にそう言って、ぼくも団長の所へ。

「どうやら、道に迷ったようです」

「そう言われれば、同じ所をぐるぐる回っているような気がしていたんだ。だが、我々はずっと本道を通ってきたはずだ。なのになぜ…」

「森の木の声が聞こえないんです。こんなに木々がうっそうと茂っている森の中では、木々の声でやかましいくらいなんですが。今、なぜか木々は沈黙しているんです。だから正しい道を聞くこともできなくて」

 さすが、エルフの血を引くトポロ。植物と意思疎通する能力があるようだ。

 トポロの話を聞いて、周囲の様子が気になったぼくは、ふと後ろを振り返った。

「あれっ、今木が動いたような」

 ぼくの言葉に団長が反応した。

「木が動いた?」

「いやっ。気のせいかも。いくら異世界だからって、木が動くなんてねえ…。あはっ」

 へんなことを言ったと思われたくなくて、笑ってごまかすぼく。

 団長が、改めて周囲を見回した。

「ダスマン」 

 団長は後方のダスマンを呼び、何やら話していた。

「サーチ」

 ダスマンが呪文を唱えた。言葉の意味からすると探知の魔法だろう。

「やはり」

 ダスマンが探知結果を報告すると、団長は何かを確信したように頷いた。

「どうしたのですか」

 ただならぬ事態を察した母も、団長の所へやって来た。

「ウッドミミックによって進路を惑わされてしまったようです」

「ウッドミミックですか。やっかいですね」

 団長の話を聞いて、母が顔をしかめた。

「なにが、やっかいなの?」

 二人が何で困っているのか、ぼくには理解できなかった。

「そもそも、この森が迷いの森と呼ばれるようになったのは、ウッド・ミミックが原因なの。ウッド・ミミックに道を惑わせられる人が多いことから迷いの森と呼ばれるようになったの。

 こっちから攻撃しなければ、向こうから襲ってくることはないんだけど、このままって訳にはいかないわね」

「今まで本道に現れることはなかったのですが。本道に溢れるほど大量に出現するとは。まさに異常事態です」

「攻撃してこないなら、ぱぱっとやっつけちゃえば」

「そんな訳にはいかないのよ。ウッドミミックは、木に擬態する魔獣だから、表面は木と同等か、それ以上の硬度があるの。だから、硬くて普通の剣では、表面にわずかに傷をつけるくらいで、倒すことはできない。火には弱いけど、火炎系の魔法を使うと、森中に火が燃え広がって、森が焼失してしまうかもしれないでしょ」

 母の顔に当惑の色が表れた。

「じゃあどうすれば…?」

「ウッドミミックの核を突けば粉砕することができるのですが…」

 ぼくの問いに団長が答えた。

「ウッドミミックは、眼と眼の中央から少し上の部分、人間で言うと眉間に第三の眼があります。それが核です。そこを突くことができれば…」

なぜかもどかしげな表情を浮かべる団長。

「なら、核を突いて倒しちゃえばいいじゃないですか」

「そう簡単にはいかないのですよ。ウッドミミックは、人に見られていないときだけ、正体を現して移動します。見られているときは、完全に木に擬態し、全ての眼は閉じて、硬い樹皮に守られています。

だから、擬態しているときには、核の位置はもちろん、目の位置もどこか分かりません。さらに厄介なことに、やつらは攻撃を受けると粘着質の毒液を吐くのです。しかも、一体が攻撃されると、その情報が瞬時に仲間に伝わり、その場にいるウッドミミックすべてが、一斉に毒液を吐き散らすのです。こんなに多くのウッドミミックに囲まれた状態では、我々の全滅は火を見るよりも明らかです。正確に核を突くことができないと、倒すことは不可能なのです」

「見られていないときにしか動かないなんて、まるで『だるまさんがころんだ』みたいだ。

 ぼくらが見ていないとき=やつらが擬態を解いて正体を現したときが、核を突くチャンスか。相手を見ないで、確実に核を突くなんてできっこないし」

 しばらくの沈黙。

「そうだ!ウッドミミックが見られていることに気づかなかったらどうですか?擬態を解くんじゃないですか?」

「そうですね。そんな方法があればいいかもしれませんが。どうすればそんなことができるのですか?」

「母の魔法です。インビジブルで透明化して、やつらの擬態を解かせ、そこを攻撃すれば」

「それは、いい考えね。どうですか、ウルフ団長」

母もぼくの考えに賛成してくれた。

「うまくいくかどうか分かりませんが。試してみるのも悪くないでしょう。サーヤ様お願いいたします」

「分かりました。案ずるより産むがやすし。とにかくやってみましょう」

 母が、ぼくたち全員に透明化の魔法をかけた。

 透明化している者同士は、おぼろげながらお互いの姿を認識することができる。これなら、同士討ちになったり、戦いの邪魔になったりすることがないだろう。

「これだけ多くのウッドミミックが相手だ。透明化しているとはいえ、どこから襲われるか分からん。みな油断することのないように、気を引き締めて事に当たるように」

 団長がみんなに檄を飛ばした。

 予想通り、ぼくたちの姿が消えると、ウッドミミックは擬態を解いた。しかも、ぼくたちが不意にいなくなったことで、混乱して右往左往している。

その状況に乗じて、ぼくたちはウッドミミックを攻撃した。

団長とリンクスは剣で、ハウンドは槍で、ダスマンは氷系の魔法アイス・スピアで、トポロは弓で、各自得意の武器や魔法で、正確にウッドミミックの核を破壊した。

 ぼくも母を守りながら、細身の直刀に変形した勇者の剣でウッドミミックの核を粉砕した。

 核を壊されたウッドミミックは、次々に消滅していった。

 こうして戦うこと数時間。すべてのウッドミミックを倒したときには、日暮れ間近になっていた。

「アピアー」

母が魔法を解除した。みんなの姿が顕在化した。

「思わぬところで時間をとってしまった。今夜は、ここで野営することにしよう」

 団長の指示で部下の兵士たちがてきぱきと野営の準備に取りかかった。

 ウッドミミックを一掃した跡は、けっこう広い空き地ができた。ぼくたちは、そこで野営した。

 今日は、かなり疲れちゃった。ぐっすり眠って疲れを癒そう。睡眠は美容にも大切だもんね。(花も恥じらう十四歳、乙女の独白)



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