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第6話「バズって、テレビ出演!?」

翌日、蒼汰が畑で収穫したばかりのイチゴを箱詰めしていると、スマホが何度も震えた。


「……うおっ、なんねこれ。通知の嵐やんか!」


 慌てて画面を開くと、SNSの通知が溢れていた。昨夜のいちご祭りライブの動画が、なぜかバズっていたのだ。


『久留米発!イチゴ農家がアイドルってマジ?』

『ベリーズボーイズ、熱すぎて泣いた』

『農業×アイドル=新時代の幕開けか?』


 中には数万回再生されている投稿もあった。


「え、えらいことなっとる……!」


 さらに、地元テレビ局「FKT福岡テレビ」から、まさかのダイレクトメッセージが届いていた。


「よろしければ、今週末の朝番組にご出演いただけませんか?」


「うわあああ……テレビ!? オレらが!?」


 


 数時間後、レンと奏多も集まり、三人で近所のファミレスに陣取った。


「……まさかこんな早く反響が来るとはな」


 レンがスマホを横に置きながら、アイスティーを啜る。


「俺、初めて“いいね”5000超えた……人生で初めてや……」


 奏多も呆然としていた。


「ちょ、どうする!? テレビ出るん!?」


「出るに決まってんだろ」


 レンが即答した。


「露出は大事だ。今のうちに名前を広めるべきだ。逆に言えば、ここを逃したら次はない」


「わ、分かった……けどオレ、テレビとか出たら緊張して歌えんかもしれん……!」


「歌わねえよ、朝番組だから。トークとVTR紹介だ」


「そっちのほうが緊張するやん!!」


 


 数日後、三人は福岡市内のテレビ局に足を踏み入れた。


 局内は思ったより狭く、でも本物のスタジオが広がっていた。出演者用の控室に案内され、スタッフにマイクをつけられる。


「緊張してる?」


 隣にいたメイクさんが、蒼汰に微笑みかけた。


「……はい。正直、畑のほうが落ち着きます」


「ふふ、それ言ったら視聴者ウケ間違いないわよ」


 


 そして本番。


 スタジオには軽快なBGMが流れ、司会者の男性アナが笑顔で紹介した。


「今ネットで話題の、“農業アイドル”をご存じでしょうか? 今日は久留米市から来ていただきました、Berryz Boysの皆さんです!」


 カメラがパンすると、三人が並んで頭を下げる。


「よろしくお願いします!」


 蒼汰の声が、やや上ずっていた。


「いやあ、実際にお会いすると、ほんとに農家さんって感じですね。おいしいイチゴ作ってる?」


「もちろんですたい! 朝4時起きで収穫してます!」


「歌もダンスもすごかったですけど、どうしてアイドルになろうと思ったんですか?」


 司会者の問いに、蒼汰は一瞬、言葉を探した。


 けれど、すぐに笑って答えた。


「イチゴ作ってるだけじゃ、全国の人には届かんとです。でも、音楽でなら届くって、信じたけんです!」


 スタジオに、拍手が起きた。


 


 放送後、再びSNSは賑わった。


「農業アイドル、いいじゃん!」

「なんか元気出た」

「Berryz Boys、推せる……」


 その夜、蒼汰たちは久留米に戻る途中、ファンからのメッセージを読んでいた。


「……“あなたの歌で、頑張ろうって思いました”……って」


 奏多が呟いた。


「なあ、これって……すごくね?」


「……ああ」


 レンもうなずく。


 イチゴだけじゃない。


 彼らは、人の心に何かを植え始めているのだ。


「よし。次は、もっとでかいステージ、目指そうか!」


「おう!」


「次のライブは、福岡市内でいこう!」


 3人の視線は、すでに前を見ていた。


 武道館は、まだ遠い。けれど、夢は――走り始めたばかりだ。


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