第六五話 オーラ貫通
遅くなってしまい申し訳ありません。
私は何とか気を完成させ、急いで体外にオーラとして放出する。
どうやら竜のブレスとうまくぶつける事ができたようだ。
魔力であれば私では共に到底敵わない出力、量だが、気であれば出力に関しては勝利している。
そのため気が支配から外れることで気を無くして足りなくなるなどのことがなければ、このまま防ぎ続ける事ができるはずだ。
気は完全に支配しておけば消耗は殆ど無く、使い続けることができる。
その為こうなればこのままブレスによる死はありえないだろう。
そう思ったが想像していたよりも貫通力が高い、注意しておかなければ私のオーラでも簡単に突破してくる可能性があるように感じさせた。
受けてみるまでは分からなかったがこのブレス、こちらを抉り取るように回転している。
このブレスを放った者の殺意がひしひしと伝わってくる。
私は気を引き締め直し、オーラの制御を強固にし、押し返し始める。
今の私と竜の距離は30m程だ。
ここに到達しているブレスはすでに制御を離れているようで、散らすことはそう難しいことではない。
だがブレスの魔力を制御している範囲に入れば大変だろう。
今は私の気のみしか制御下にない。
しかし近づけば勿論そのうち向こうのブレスも竜の制御下に入ることになるだろう。
そうすれば更に鋭く私の気の盾を貫かんとしてくるだろう。
その結果がどうなるかなど、分からない。
分からないが確実に有利に立つためにはこのまま防ぎ、私の消耗がほぼゼロでありながら向こうがブレスにより疲弊するという状況を作るべきだろう。
ただそんな戦い方で楽しいのかと聞かれればつまらないだろう。
そもそも私は楽しむためにこのゲームをしている。
そして私は戦い方としてはスリリングな方を好む。
そのため私はこのまま押し返し、竜の下まで向かってみることにした。
魔力同士の繋がりが甘そうな場所を狙って気をぶつけ、次々に打ち消していく。
この調子であれば全然行けそうだ。
このまま竜の下まで向かってみよう。
そう思ったのだが残念ながらブレスが途切れてしまった。
ブレスが消え、私の行動可能範囲が開けた時には既に私に竜の爪が迫っていた。
避けてもいいが次に繋がるように受け流すことにする。
「グッッ」
痛ったぁ!?
何が起こった?
受けたあとで私は自身の失策に気づいた。
どうやらこのオーラは魔力には影響力があるものの物理的に影響を与えたり体の強度を強化する効果はないようだ。
オーラを変質させたのだからそこらへんの事も考えておくべきだったな…
すっかり忘れてたな。
何とか攻撃を流し、直撃を避けることは成功したものの受け流した私の左手の肘から先四分の三ほどが消えてなくなっていた。
急いで私は「黄」を纏い、後ろに下がる。
こちらの状況はかなり不味い。
それだけでなく、私の視界には出血という文字が浮かび上がっていた。
腕から不快感を感じるためおそらくはダメージを自然と受けるのだろう。
おまけに片腕をなくしたと来ている。
片腕では反撃に出る余裕がない。
私は竜の爪をいなし、牙を回避しながら考える。
何故か竜は魔法を放ってこない。
何か理由でもあるのか知らないが今の私からすれば好都合だ。
先程スリリングな戦い方の方が好みだと言ったが、誰が好き好んで確実に負ける戦い方をするのか。
今は一旦形成を立て直すことにする。
攻撃を紙一重で躱しながらMPポーションを飲む。
部位欠損はポーションでは回復しないらしいので、とりあえずSPと違い余裕のないMPを回復させる。
おや?魔法を放つようになってきたが何故か数が少ないな…
まあとにかく回避していく。
私はブレス以外であれば回避、または歯車での打ち消しが有効であるはずだと考え、物理的に影響を与える事ができる気力へ調整を始めた。