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第六四話 気の変化




数秒後ブレスは私に向かって放たれた。

恐るべき速さだが、勿論そちらにも意識を向けることを怠っているはずもなく、横に回避することに成功する。


離れすぎていればすぐに巻き込まれていただろうし、近すぎても回避が間に合わなかっただろう。

私は空中を不規則な動きで移動しながらブレスを必死に躱す。


だが流石に首を曲げる速度と走る速度、どちらが速いかなど考えるまでもなく、はじめこそ回避できていたが、3秒もすれば追いつかれ私の体を飲み込むこととなった。


しかしその時間を私も無意味に過ごしていたわけではない。

私はギリギリで発動できた遮断結界によってできたブレスの内部で体を縮こまらせていた。


いくら私渾身の遮断結界でも魔法型でもない私が長く竜のブレスに耐えることは不可能だ。

そのため私はブレスを流すことにした。

結界の先端を尖らせたおかげで、今も耐えてくれている。


だがそれでもブレスをしのぎ切ることは難しいだろう。

それにもう一度遮断結界を使う魔力はない。

ポーションを使えば可能だろうが、ポーションも今はSPポーションを飲み、クールダウン中であるため使用できない。



ブレスがすぐ横を通るため凄まじい熱気を感じ、おかげで視界の端には火傷(中)という文字が浮かび上がっている。

そして運命の時が訪れる。


止め処無く放たれるブレスによって、結界に入ったヒビが間断なく拡大していく。

そしてヒビの隙間から光が漏れ出たかと思うと、それを皮切りに遮断結界をブレスが突破し、恐るべき速度で私に迫る。

私はそのままなんの抵抗もできぬままブレスに飲まれた。


…果たして私は生きていた。

本来直撃であれば死んでいた威力だった。

そのため私は気を変化させていた。


まだ私は気の変化というのに慣れていないためそれなりの時間がかかってしまったが、それでも何とか間に合わせることができた。





私が遮断結界を張っているとき、爺さんの言葉が思い出されていた。


「ハルよ気の本質とはなにか分かるか?」


「…分からない。」


「ふ〜、やれやれ、そんな事も知らずにこれまで気を使っておったとは、我が弟子ながら何と情けないことよ。いいか、よく聞け。気の本質とは変化だ。」


「変化?それならもう出来てるじゃん。ほら。」


「赤」「黄」「青」と次々に変えてゆく。


「確かにそれも変化だな、だがな、ほれ。」


爺さんの腕には銀色のオーラが纏わりついていた。

勿論そんなオーラは聞いたこともない。

そしてそれが私に向かってくる。


「え?なにそれ、そんなの見、うげっ」


それに瞬く間に包まれてしまう。

なんだ?と違和感を感じたのは一瞬。

気づけば私の体はなにかに固定されたかのように動かず、身動きが取れなくなっていた。


因みに私のオーラは体を強化したりはできるが、物理的には影響を与えられない。


その後私の周りを漂うオーラは恐るべき速度で私のSP、MPを吸収してしまった。

その後HPまで影響を与え始めた当たりで止まったが、爺さんの話を無理やり正座にされて聞かされることになった。


「今やったのはオーラに魔力に影響を与えたり、物理的影響力を与える変化を加えたものだ。この様に気の性質は変幻自在と言っても過言ではない。その程度の変化で自慢げなお前はまだまだヒヨッコよ。」


そして私に銀のオーラが浸透したかと思うと、私は死んでいた。

訓練場の中での出来事だった。


「ではワシはもう忙しいので行くとしよう。せいぜい頑張るといい。」


爺さんの勝ち誇っているのに何処となく焦っている様な声のみが私の耳に残った。





それから私は魔力に影響を与えることができるオーラをイメージし変化させようとした。

気そのものが私の体の中で、変化を続けているのを感じる。


それを魔力と触れさせてみて魔力に影響があるものを探す。

爺さんが見せてくれたものには気の変化の可能性を感じることが出来た。


物理的な影響力を持つオーラ。

魔力に影響力を持つオーラ。


あれはそのどちらも兼ね備えていた。

あの場で性質を変化させたのだ。


あの時のオーラを、再現して見せる!そう意気込んで変化させようと、狩りの合間を縫って必死にイメージし続けた。

そして私は魔力と触れることが可能なオーラを発見した。


ただまだ魔力に影響のある気へ変化させるのに時間がかかる、かつコストパフォマンスもかなり悪いので到底普段使いはできないが。



お久しぶりです。

これからもかなり忙しいので更新の間が開いてしまうと思いますが、ご理解いただけると幸いです。

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