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第六三話 再戦



どうやら私のしていた危惧の一つは必要のないものだったらしい。

私はあの洞窟の前に立ちながら、そう思った。


今の私なら感じ取れる。

今の私ならあのとき竜の推測ステータスから1、2倍、いや1、3倍にしても何とか勝利を収められる自信があった。


それ程までに私のしていた心配が嘘のように心配はなくなり、これからの戦いへの期待に胸を膨らませている私がいた。

今度こそ勝って見せる。


この洞窟はそれなりに深いがたかだか奥行きが5,60m程しかないようで、その奥に竜の気配を感じる。

洞窟周りは前回訪れたときと違い、かなり広々としている。

どうやら燃えたらしい。


「久しぶりだね。リベンジしに来たよ。」


「クハハハ、もうそろそろ来ると思っていたぞ。お前ら人間の言う王都とやらまで行って遊んでいたのにわざわざ戻ってきたのだ、せいぜい楽しませてくれ。」


竜が穴から姿を見せる。

相変わらず金ピカで眩しい色だ。

それから言葉は交わされず。

数秒後、なんの皮切りもなく戦いは始まった。


とりあえず鑑定



種族 中位火竜(亜) level84


中位火竜(亜)

竜の中でも火竜種に属する竜の亜種。

火を操ることに長けており、主に火山などの炎のあるところに生息している。




硬った。

それが私の竜をまともに殴った感想だった。

初手からはなってきた炎の槍をことごとく避け、竜からの近距離攻撃も掻い潜り一撃を打ち込んだ。


しかしその結果がこれだ。

鱗は心なしか多少は凹んでいる気がするものの、大したダメージでないことは明らかだ。

一応全力で「赤」を纏ってたんだけどな…


因みに今の「赤」の密度は15倍ぐらいである。

仮面を装備してから感知の能力が格段に上がったこともあって、操作の精度も上昇させることができたのだ。

勿論体に纏っている気もそれ相応に精度が上昇している。


竜を蹴り、一旦距離を取りながら考える。

ただ私は余裕を感じていた。

理由は簡単、私が攻撃を掻い潜れたからだ。


確実にステータスの差は縮まっている。

この程度の差であればいける。

そう思った矢先、竜の周りに数え切れないほどの火の矢が浮かび上がる。


そしてそれは一斉に放たれた。

速い、それでいて制御はされているし考えなしに放っているだけでもなさそうだな。


結界で防御を試みるも、明らかに100を軽く超えているにも関わらず完璧にその全てを操っているようで、何本かの矢は落とせても後続の矢はその場に近づかないようにしているため、まとめて大量に撃ち落とすことは不可能に近そうだった。


私も結界を足場に縦横無尽に駆け回るが、この数はいくら何でも避け切れるものでは無さそうだ。

私は少し早いが、便利な道具を使用することにした。

急いで空中で体制を整え、インベントリからそれを取り出す。


それ、鋼線の先端に結び付けられた█壊の歯車を鎖鎌のように振り回し、火の矢を次々に撃墜させていく。

空中で勢いをなくし、一瞬で「ポスッ」という効果音が似合いそうな消え方をしていくそれを見る竜は驚いている。

どうやら上手く行ったようだ。


「…何をした。」


「この武器の効果だよ。こんなふうな弱い魔法には効果抜群なんだ。」


「チッ、人間の世界にはそんな物まで有るのか。」


厳密には弱い魔法ではなく、(魔力の支配が)弱い魔法なのだがそこまでは言わなくていいだろう。

それにほんとに強い魔法とかだったら魔力が多すぎて直ぐには打ち消しきれないと思うし。


ただでさえおそらくステータスでは完敗している相手だ。

使えるものは何でも使っていこう。


竜は2、3回試した後、流石に私の言葉が嘘ではなく、魔力の無駄だと気付いたようで今度は火の矢よりも一回り程大きい火の玉、更に大きい火の玉、火の槍を一つずつ私に放ってくる。

おそらく私の武器でこの魔法を消すことができるのかを計ろうとしているのだろう。


私はこれぐらいの魔力量と支配の強さなら打ち消せる範囲だと考えながら、武器をしまう。

勿論そんなあからさまな魔力の節約の為の行動に乗ってやる必要はないだろう。


あと壊れたら計画がおじゃんになる可能性があるので使いすぎないように気を付けたい。

武器をしまい、最高速度で竜に近づくために駆け出す。


ただ流石にこれぐらいは予想されていたのか火の壁が地面から瞬時に発生、私の行く手を阻む。

かなり高く、私が結界で空中を移動できることを知っているため、簡単に飛び越えてこないようにという、向こうの考えがうかがえる。


私は結界だよりに無視して突っ切り、壁の中で隠密を使い気配を紛らわし奇襲することにする。

どうやらそれなりに分厚いようで、直ぐには抜け出せない。

それに竜も火の壁から距離を取っているため、奇襲は難しそうだ。


あくまで隠密は気配を無くすだけであり、目視されては意味がないのだ。

大人しく奇襲は諦め、姿を表すことにする。


その瞬間ゾクリ、と背筋が凍る事態に気がついた。

竜の頭に魔力が集中している。

未だに魔力、気力、共に底が見えないものの魔力が集中していることぐらいは容易に気が付く。


早く気付くべきだった。

わざわざあそこまで分厚い火の壁を作る必要なんて無いからだ。

魔法を使う時間は作れるだろうがあの竜のことだ、魔法ぐらいならすぐに使えるはずで、特に必要とも思えない。


それに火の壁は物理的な防御力が低いため無理をすれば私が突っ切ってこれることもよく分かっていたはずだ。

自身の視界も塞いでしまうため、本当に近づかれたくないのなら、もっと他に方法があっただろう。


例えば火の壁よりも小分けにして武器で散らされにくいようにしながら大量の火の玉で足止め、等そちらのほうがよっぽど効果的だし魔力の無駄も少ない。

火の矢をあれだけ大量に放ってきたのだ、不可能なはずがない。


それに火の壁よりダメージが高く、無視して食らい続けるわけにも行かないのだ。

だが火の壁はかなり見掛け倒しで、範囲は広いもののダメージはかなり少なく、多少の魔防があれば簡単に突破できてしまうだろう。


よくよく考えれば特に意味のない行為だった。

その割にそれなりの魔力を使っていた。


だからそもそも利用理由が違ったのだ。

足止めではなく目眩まし。

竜自身が何をしているのか悟らせないためのものだったのだ。


元の圧倒的な魔力の密度のせいで気づきにくかった。

竜の口元に魔力が集中していることに。

そして火の壁が消え、私の姿が露わとなる。


そして竜はというと、予想道理のブレスを構えてこちらを見ていた。

口はすでにかなりの光を発しており、今にも放たれそうな気がする。

私は今火の壁を解いたことからからブレスを止めることは不可能だと悟り、ブレスに耐えるための準備をすることにした。


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