第六一話 魔物乱獲による影響
さて、どうやらどこで魔物を狩ったかなどは貢献ポイントに一切関係がなさそうだったので私は予定通り、最も魔物が強いと思われる王都の周りで狩りを行おうと思う。
因みにあの竜との約束した日は明後日だ。
こうして私は始まりの街、ファトルスを旅立った。
…
今私は王都に向かっている途中なんだが確かに魔物が強化されている気がする。
まあ誤差だけど多少は動きが良くなっている様だった。
そしてどうやら経験値量も増加しているようだった。
多分これぐらいならどっちも1.2倍ぐらいの上昇かな?
そしてどうやら薄いが金色の魔物を頻繁に見かける。
先も群れのリーダー的な存在である狼の上位種らしき魔物が金色となり強化されていた。
金色の魔物もそれなりの数はいたがここまで頻繁には見なかったはずだ。
あと明らかにプレイヤーだと思われる方々の集まり?にも遭遇した。
明らかに異種族同士で喋っていたし、ほぼ間違いなくプレイヤーだったのだろう。
街はいちいち門で軽い身分の確認だったりが入るし、SPも消費緩和やら回復速度上昇のせいで町中を通ると有り余ってしまうのでもったいない精神で魔物の多そうな森を通りながら直進コースで向かっていたらなんかでっかい穴を見つけて興味を惹かれて入ってみたところ大量の魔物プレイヤーに遭遇したというわけだ。
片っ端から殺していったけど経験値がそこら辺の魔物の経験値よりかなり多いし、数も多いしでかなり経験値を稼ぐことが出来た。
また寄ってみてもいいかもしれない。
こうして私は予定通り丸一日かけて王都の南側にたどり着いた。
ただ目的地はここでは無い。
勿論前回も行ったあそこだ。
しかし王都にたどり着いたはいいがそろそろSPが底をつくということで王都に寄ることにした。
魔物討伐で手に入れたお金でSPポーションを購入、そこらへんの宿に泊まりリスポーン地点を更新する。
やはりクエストでない魔物討伐はお金の入りがどうしてもクエストをしているときと比べるとかなり悪い。
素材をアマメに売ったものの預けておいたものを引き出しても100本が限界だった。
勿論解毒薬も含めいくつか必要そうなものは買い揃えているので、これくらい有ればかなり満足して良い量と言える。
ただ出来る限り向こうで狩りをし続けたい私としては少々少ないように感じた。
っといつから私は敵の攻撃を食らうことを前提とした戦い方をするようになったんだ?
そう考え直し私がよく行く狩り場である(といってもまだ4回目)コンラッド村に出発した。
だが私が見た感じ普段と村の様子が違う。
村が荒れているのはいつもどうりだが村の雰囲気がそもそも変わっているのだ。
遠目?からでも分かるその違和感は、村に近づけば近づくほど増して行った。
村が崩壊しているのだ。
…あれ?私ここまで壊したっけ?
確かに家の壁の中に入った金貨袋を偶然見つけてからは家を壊して小遣い稼ぎ?をしていたがここまで壊した記憶はない。
意外なところにそれなりの金額が入っていたため私も味をしめて家を壊しまくっていたのだがここまでではなかった気がする。
そんなふうに考えながら門をくぐればその違和感が正しかったことが証明される。
門をくぐった私が目にしたものは…魔物の群れだった。
純粋な金色は見当たらないものの薄い金色の魔物はちらほら見える。
具体的に言えば薄い金色の魔物の数は14、5体だろう。
「ウォーーーン」
いきなり遠吠えする狼はまだいい方で、挨拶すらよこさず飛びかかってくる鶏、猪、などなど。
崩壊した村は非常に見通しがよく、かなりの数の魔物がいたことで連鎖的に私に気付き、襲いかかってきたのだ。
だがほぼ全方位からの攻撃と言っても差し支えのないそれは狐の面を手に入れる前であれば数発は受けていただろう。
だが今は違う。
どこからの攻撃であろうと見逃すことはなく、その攻撃を回避する最適解を導き出すことさえできればこの程度のスピードの攻撃を避けることなど造作もない。
敵の包囲網から抜けて手早く弱いものから順に殺していく。
敵の魔物たちも私がおよそ全体の数の半数ほどの魔物をポリゴンへ変換させたあたりで、これはまずいと思い始めたのか、同種の魔物とコミュニケーションを取っている節が見られた。
だがそんな事をしていれば私の標的になることも仕方がないだろう。
同種が多い魔物から積極的に狙っていき、連携を取らせない。
こうしてまともに撤退の判断すら取れなかった魔物たちはそれから5分としない間に姿を消した。
私は魔物の領域となり魔物がスポーンするようになったこの廃村でゆっくりとすることにした。
しかしその判断は間違いだったとすぐに突きつけられる事となった。
理由は簡単。
ここは森と比べ見通しが良すぎるのだ。
もしここが森の中であれば私のことを補足できなかったであろう鳥、鹿などの目線に頼る以外の方法で敵を見つける能力が乏しい生物達。
そんな生物でもここであれば簡単に私という存在に気づくことが可能なのだ。
私であれば森の中は魔物に気づかれにくい、かつ視覚に頼って敵を発見するわけではないため見通しもそう何処と比べても変わらない。
そのため魔物に気づかれやすくなったぶん、私を襲う魔物の数が増えるだけでなんの得も無いとまでは言わないが、少なくとも森でも不自由することのない私であればここで休憩するメリットは無いと言えるだろう。
こうして私は、半ば強制的にまともにSPの回復が済まないままに森へと入ることになった。
森の中は大した変化は見られなかった。
強いて言うならば金色の魔物たちの出現率が悪くなっているくらいだろうか。
いや、金色の魔物に限らず、全体的にこの森での魔物とのエンカウント率が下がっている気がする。
もしかしたらここにいた魔物たちも街の方をを襲いに行っているのだろうか…
まあ問題はない。
ここはそもそも桁外れに魔物とのエンカウント率が上昇かつ一匹一匹の強さも上昇しているのだ。
理由は簡単、私が魔物を狩りまくることにある。
私が森の魔物を狩りまくる。
しかしその魔物たちが復活するまでの間、もぬけの殻になった森では魔物が魔力から新たに誕生する。
それを私が狩る。
これを繰り返し続けた結果、私が去ってしばらくしたあとの森は復活した魔物と新たに生まれた魔物たちが混ざって魔物の数が恐るべき数になるのだ。
敵の数が多くなりすぎて魔物が顔を合わせる機会も増えるだろう。
そこで顔を合わせた者同士が同種であればよっぽど飢えたりしていない限り問題はないのかもしれない。
しかしかなりの種が共存している森において、むしろ同じ種に出会うほうが珍しいと断言できる。
そのためそこで出会った魔物同士は争うのだ。
仲間を守るために、縄張りを守るために。
そうして勝った者はより強くなり負けたものは淘汰されていく。
しかしいくら何でも元通りの数に瞬時に戻るのは難しい。
そしてやはり魔物の平均的な強さも強化される。
どうしても元々強かった金色の魔物が生き残りやすく、殆どの場合は金色の魔物が強くなる。
因みに金色の魔物たちは竜の眷属的な存在だからなのか、争うことはない。
そして私以外に魔物を積極的に狩る者もいない。
そのため魔物の数が減らず、多くの金色の魔物は生き残り、強くなっていた。
とはいえちょうどポーション無しで狩り続けられるぐらいの頻度と強さで魔物が出てきてくれるため、これくらいで丁度よい。
ただ、暫くの間ここで狩りを続けていると弱い魔物ばかりになっていた。
どうやら戦いに生き残った強い魔物たちはほとんど狩り尽くし、新しく現れた魔物たちが今、私と主に戦っている相手なのだろう。
強い魔物との楽しい戦闘は終わった。
そのため今は深層に移動しながら魔物を狩っている。
そこの魔物もある程度は強化されている為、強さは少しずつだが上がっていく。
段々とSPにも余裕が無くなっていく。
そのためポーションも何本か飲んでしまった。
だが今までよりも遥かに余裕がある。
そのため私は今まで足を踏み入れたことのない程の奥地まで進むことを決意する。
…おそらくは竜が出てきた穴から更に北に進んでいた。
穴をスルーして北へ向かうとやはり金色の魔物たちが私を出迎えてくれた。
強さはむしろ竜の穴(竜が出てきた穴)の手前にいた魔物たちよりも弱いぐらいだっただろう。
素のままであればおそらくより北の魔物のほうが強かっただろうが、村近くの魔物たちは同じ条件で勝ち、なおかつ力も強くなった、いわば魔物の中でも精鋭だ。
そこから先は特に強さの変化はなく、むしろ金色の魔物たちが少なく、金色も薄くなっていく一方で進むに連れて余裕さえ出てきた。
そうこうして一時間はたっただろうか?
私の目の前には巨大な山がそびえ立っていた。
「ここから山登りですか…」