第四九話 愉快な稽古
私は今日もいつもどおりに街を歩いている。
まあクランに加入したからと言って普段の行動が変わるわけでもない。
のだが今日は街の外に向かっているのではなく、本屋に結界の種類を増やすために買い物に来た。
クッキーも基本の結界の魔法以外は結界系の詠唱は知らなかったのだ。
簡単に言うと同じ属性の魔法にも種類があるらしい。
まあ確かにあの洞窟に足を踏み入れたときに竜が使った炎の壁と炎の玉が同じ物だとは思えないしね。
見た感じどうやら結界にもいくつかの種類があるようだ。
ひとつ3ゴールドなので全て買う…事ができなかった。
…あの守銭奴め。
私は今は装備品なども没収されてしまってしまったので本当に少しの素材とブーツなどの金にならない武器、防具を残して身一つだ。
つまりはお金が必要ってこと。
という事でギルドで依頼を受け、狩りに出る。
いつもどうりにガチガチ山に行って何匹かのゴーレムを狩り、変異したミスリルゴーレムを倒そうとしたが十数人の先客がいたので一旦遠慮した。
その後私は山頂付近で狩りをしていたが、山頂での怒声と地響きがなくなったので山頂に向かうとゴーレムがいたので、殴り殺した。
このゴーレムは素材が高く売れるから、倒せてよかった。
売っぱらうときは優先的にお願いとアマメに言われていたので、セーフティーエリアでのみクラン内で売買、交換が可能な、クラン機能を使ってアマメに直接素材を送る。
はっきり言ってなんの為にあるのかわ分からないが、まあそんな機能があるのだ。
まあクランの機能を利用するために寄り集まった集団が信用できない他人に物を奪われないようにするためのものなのだろう。
私は死にやすいため、お金はほしいと言ったときに送ってくれるらしい。
だが今はどうやらアマメはフレンド欄を見る限りオフラインらしい。
その後ギルドでゴーレムを30匹狩った報酬である6ゴールドを受け取り、本屋に向かった。
魔物を狩ると自然と手に入るお金もあり、何とかもう3ゴールドも集まった。
遮断結界、被覆結界、強化結界の3つの本を買った。
一つ一つの説明文と効果を読んでいく。
遮断結界
その名の通り周りからの影響全てを遮断する結界。
通常の結界と比べると格段に強度が高いが、内外からの効果、良い効果、悪い効果、関係なく通さない。
空間に作用しているため動くことがない。
発動難易度 上級
被覆結界
体の形に合わせて全面に張られる結界。
体の動きに合わせて自動で動く。
通常の結界と比べると、強度は同じ。
発動難易度 中級
強化結界
通常の結界と比べて強度が高い。
通常の結界よりは発動しにくいものの、かなり発動しやすい。
発動難易度 下級
それぞれ詠唱で発動させていく、残念ながら遮断結界は発動できなかった。
おそらくは魔力操作のレベルが足りないのだろう。
だがそれ以外の形は覚えることが出来た、というより思い出そうとすると何らかのシステムが働いているのか分からないが、何となく思い出せるのだ。
これらは他の人でも使えそうなのでギルドメンバー共有の倉庫に本を突っ込んでおく。
気づかなかった為知らなかったがインベントリにも限界があるらしい。
それぞれスタックできる数が決まっていて合計でそれがデフォルトで500枠あるらしい。
つまりは余計なもので、使えそうなものを突っ込んでおけば誰かが有効活用してくれるかもしれないということだ。
まあ無駄な素材は出ない方がいいだろう。
それとクラン倉庫の枠はデフォルトで3000らしく、アマメ曰くクランレベル?なるものを上げていけばこれも他機能と一緒に強化されていくらしい。
まあとにかく用事は済んだので訓練場に戻る。
いつもどうりに魔力がなくなるまでは魔法の訓練。
なくなれば気を操り、魔力が回復すれば訓練する。
というルーティンを続けた。
そうこうしていると魔力もかなり自由自在に操れるようになった。
強化結界ぐらいならば特に意識せずとも使える。
この調子で行けば竜との戦闘でもいい線まで行けるだろう。
「ふむ、最近はどうしたのじゃ?訓練の頻度が増えておるようじゃが。」
そんなふうに考えているといきなり背後から爺さんが話しかけてきた。
「爺さんか、ちょっと前に龍の眷属とかいうやつに負けてさ、リベンジのために頑張ってるんだ。」
「ほっほっほ、ワシの技を受け継いでおるというのにその程度の雑魚に負けるとは情けない。」
「へ、へえ〜それは爺さんの教え方が悪すぎて爺さんの技がしっかり伝わってないんじゃない?」
「残念ながら流石にそれはありえんのう、もしお前に伝わっていないということがあるならそれはお前の理解能力不足の問題じゃろう。」
「そう思うなら結果や効果だけを教えるんじゃなくて過程を教えてよ。「どうやってこうするんじゃ」とかね」
「残念じゃが気は魔力と違い人によって合う使い方、合わない使い方があるんじゃよ。そんなことをすればそれはあくまでワシにあった気の扱い方になってしまいハルに完全にあった気の扱い方ではなくなってしまうのじゃよ。高みを目指すなら自身に合った気を把握してそれを使いこなさねばならん。基本のオーラである「赤」「青」「黄」も万人が使いやすいようにと我々の先祖が調整したものでしか無く、ワシらが持っておるような自身に最も合ったのオーラとは比べ物にならんのだ。まあどうしても今すぐ自身にあったものを身につけたいのなら実践が一番じゃ。このようにな。」
「ぶふっ」
いきなり殴られた。
久しぶりに会ってアドバイスをくれたと思ったらこれだよ。
このクソジジイはたまに実践と称して殴りかかってくるのだ。
それもその時々の気分で。
私は対応できずに殴られ、ふっ飛ばされていく。
「ホッホッホッまだまだよ、ではせいぜい精進するといい。」
「待て」
今度は私から殴りかかる。
訓練場内では死亡することがないので今の私はHP1だが生きている状態だ。
残念ながら私の拳は簡単に回避される。
この爺さんは腹が立つけどめっちゃ強い。
こんな強敵とここなら死ぬリスクなしに戦えるのだ。
こんなところがあるのに使わない手はない。
あの竜へのリベンジに勝利するためならどんな手だって使ってやる。
この爺さんが言うには実践が私が強くなる一番の近道なのだろうし、そのためには強い相手と戦う必要がある。
だがそんなところまで行くのはかなり厳しいと思う。
おそらく私が死にかけるレベルの実践ができる魔物というのはかなりの速度がないとまず成り立たない。
それにそんな速度で動ける魔物が跋扈する場所まで行くのであれば私を一撃で殺すことができるレベルの魔物がうじゃうじゃいるということだ。
それなりに強いと自信を持っている私でもそんな敵達を相手に長いこと生き残ることができるとは思わない。
数が多ければ尚更だ。
きっと、いちいちそこまで行くのがかなりの時間の無駄になることだろう。
だがこの町にも強者の心当たりがある。
四英雄の拳鬼とか言う大層な名前を冠する爺さんだ。
私どころか竜を遥かに超える実力者に違いない。
これがおそらく私が強くなれる最短の道だろう。
「ねえ、毎回少しアドバイスして弟子を殴って帰っていくけどそれは師匠としてどうなのさ?師匠ならもう少し弟子の訓練に付き合ってもいいんじゃない?」
「…そうじゃな、まだお前には早いと思っておったが不出来な弟子の成長のためじゃ、師匠であるワシが胸を貸してやろう。」
{クエスト 愉快な稽古by拳鬼 が発生しました。}