第四三話 だが断る
{眷属になりますか?YES・NO}
ウィンドウが私の目の前に現れる。
いきなりだなと思ったがまあ何かの条件でも満たしたんだろう。
眷属か〜…と悩んだふりをしてみる。
まあとにかく今なら話せそうだし、もしかしたら王国の人達のほうが悪いのかもしれない。
それに流石に無視するのはやばそう。
ということで自然に情報を引き出そう。
「け、け、眷属ってど、どどうやってなるんですか?」
流石に字は読めないと思うので意を決して喋りかける。
「方法は様々だが今回は我の血肉を与えようではないか。」
「メ、メリットはありますか?」
「貴様の力が強化されることに加えて、我の力の一端が使えるようになる。デメリットは我の言うことには従わなければならないということぐらいだ。」
ふむふむどうやら眷属には相手の体の一部を与えられることによってなれるらしい。
なった場合強くなれるが眷属となった相手に絶対服従らしい。
まあ答えは決まっているんだけどね。
「それで、答えは決まったか?」
「…うん…やだ、やだな。羽も無いトカゲの下にはつきたくない」
だって龍の眷属の眷属ってことになっちゃうじゃん。
それは下っ端って感じで嫌だし、そもそも折角なら誰にも縛られること無く自由にやりたい。
それなのに命令されれば従うしか無い相手がいるのは嫌だ。
…というか、全然情報集められなかった。
まあ初対面の人相手によくここまで話せたよね。
というかこいつ翼がないのだ。
もしかしたら翼があればもしかしたら翼がゲットできるかも、と少しは考えたかもしれないが、実際無いので私がこの竜の眷属になりたくなる要素は存在しないと言える。
なぜ私が翼を求めているかは翼をもったことがゲームの中でも無いからだ。
「き、きき、貴様ぁぁ、この我が目をかけてやったのにその態度とは。この手で引き裂いてやるしか無いなぁ」
どうやら私の独り言が竜に聞こえてしまったらしい。
しまったな、もう少しオブラートに包んで答えるつもりだったのに。
竜がそう言った瞬間竜から数十本の炎の矢や槍が現れる。
すぐに撤退しようとするが周りが炎で囲まれている。
先程言っていた火を使うとまずいというのは周りに森があり、それに火が燃え移ってしまうからなのだろう。
ならもう炎じゃなくて水でも使えやって思うけど、火を消すことを諦めたのか、それとも何か意図があるのか…
だがその竜にとってもまずいだけでなく、わたしにとっても歓迎すべきではない事態だ。
できる限りダメージを受けなさそうな場所を探すが見当たらない。
強引にダメージを厭わず突破すると決断した瞬間、竜から炎が放たれる。
逃げられるのはヤツとしても避けたいようで私自身に向けたものよりも進行方向を妨害しようとするように動く矢の方が多い。
そのため数がかなり少なく、私は先程とは比べ物にならないほどのスピードで動く炎にも何とか対応できていた。
だがこれも長くは続かないだろう。
そのくらいは理解している。
理由は奴が近づいてきているからだ。
少しずつ離れながら逃亡を図るか?
それとも強引に?
いや、おそらく正直な話奴本体は私よりも敏捷が高いだろう。
直接攻撃でもステータスがあまりにもかけ離れていないのならば回避するならできるだろうが単純な速度勝負ではこちらに勝ち目はない。
というかそもそも周りは火の海だし、逃げ切っても強力なモンスターだらけだ。
もし逃げ切れるとしたら洞窟なんて選択肢もあるかもしれないけど…
流石に狭いであろう洞窟内で逃走の心配はないと判断したこいつの攻撃をしのげるとも思えない。
避け続けても死ぬ可能性のほうが高いんだ。
もしかしたら接近戦がめちゃくちゃ弱い竜かもしれないし、直接攻撃してみることに。
そうと決まったからには逃げるのではなく、こちらから向かって行く。
すると段々竜も私に逃げる気がないのを悟ったのか、炎を私の逃亡を妨害するように配置し、魔法で攻撃しなくなっていった。
もしかしたら向こうも自分の魔法に巻き込まれるのは避けたいのかもしれない。
そんな事を考えているうちに私は竜の足元にたどり着いていた。
ここまであっさり通してくれたという事はこいつ少なくとも接近戦でも私を圧倒することぐらいはできるって考えたんだろうな…
見るからに接近戦しか攻撃手段のない相手をここまで通す理由なんて無いのだから間違いないだろう。
「我の力が遠距離からの攻撃に限定されたものだと勘違いした代償は重いぞ。」
竜はそう言いその爪を振るう。