第四十話 王と騎士
「王よあの娘は危険です。」
ワシの側近であり、唯一と言っていいほど何でも気楽に話せる相手であるケインがワシにそう言ってくる。
「ふむ、なぜだ?」
「それは王に対しての態度からもわかるように、奴は王を敬っていませんでした。いつこちらに牙を剥いても不思議ではありません。そんな者とこのような場で気軽に話すのは危険すぎます。お控えください」
「そうだな、だがワシのほうが強い。」
ワシは王だが下手な騎士よりは圧倒的に強い。
「確かに王は強いですがあの娘は一ヶ月と少しでここまでたどり着いたんですよ?このままの速度で成長し続けたらでステータスが追いつかれる日も遠くはありません。それに私が隠れていたのを見抜いていたようにレベル、スキルと強さがあまりにもアンバランスすぎます。」
「それもそうだが奴は異邦人だ、何か特別なものがあってもおかしくはあるまい。それにいくら死んでも生き返る。そんな者の中でも将来有望そうな者とわざわざ敵対して危険な関係になるよりも、むしろ取り込んだほうがお得だとは思わんのか?」
「それにしてもあの娘は強すぎます。他の異邦人は我が国民の同レベルの者たちと比べるとむしろ弱いようですし、自身が異邦人だとステータスを偽っているか、何かの正当法でない悪事などに手を染めて力を手に入れている危険人物と考えたほうがいいのではないですか?」
「それこそ奴はワシの眼を欺くことができるレベルの化け物だということになるではないか。そのレベルであれば弱小国家である我が国では抵抗できんだろうし、どちらにせよ仲良くなっておいて損はないだろう。」
「確かにそうなのですが…できれば非公式な場で私以外の護衛を付けずに他人と話し合うのは私にプレッシャーがかかるので控えていただければと、あれほど…」
「何を言っておる。お主はこの国でも最上位の騎士に匹敵するほどの騎士ではないか、ドンと構えて居れば良い。」
こやつは自分の力に自信を持てんのか、小心者だからな…
初めの方は簡単だった。
出発は夜だったが東なのでそこまで狼は強くなく、全身に「黄」を纏っておけば、ダメージを食らわず、好き勝手に攻撃できたからだ。
そしてそのまま特に困ることもなく歩いていると稀にだが、熊やゴーレム程ではないものの、体の一部が金色がかった魔物が出現するようになった。
それらの魔物は多少他と比べて強かったが、特に苦戦すると言うほどでもなかった。
それ以外特に変わったこともなく、無事に旅を続けることが出来た。
そうこうしているとコロネッタ村に最も近かったというコンラッド村にたどり着いた。
だが何というか寂れてる。
このゲームで初めての村だが、村は街より人口が少ないとしてもいくら何でも人数が少なすぎる。
もしかしたら半分ぐらいの家は空き家なのかも、そう思わせるほどだ。
おそらくは村の中でも人口が少ない村なのだろう。
とりあえず宿屋でセーブポイントを設定。
そこから北に行ったところにコロネッタ村があるらしいので行ってみることに。
「あんたやめときな。そっちは危ないよ。」
村から出ようとしたところ呼び止められてしまった。
なんでですか?
「あんたはよそ者だろ?知らないのかもしれないがそっちの方向は金色の魔物が出現するんだよ。ここらへんに居る金色がかった妙に強い魔物が居るだろう?それよりも強い奴らがうようよしてるよ。」
その原因となる魔物の調査に来たんですが…
「おやあんたは騎士だったのかい?済まないね呼び止めて。まさかこんな華奢なお嬢ちゃんが騎士だとは思わなくてねぇ。まあ無理のない範囲で頑張っておくれよ。もし原因が取り除ければ怖がって逃げていった若者共も返ってくるかもしれないしね。」
まあ厳密に言えば騎士ではないのだが、めんどくさいので否定はしないでおく。
それにしてもこの村はどうやら魔物の影響によって人口が減少していたらしい。
まあ別に私はこの村に思い入れがあるわけでもなんでもないので、この村がどうなろうとどうでもいいのだが、情けは人の為ならずの精神でとりあえず頑張ることにする。
こうして私は村を発った。
そして少し進んでくと樹海とでも言うべきだろうか?
まあとにかく青々とした森が広がっていた
おそらくこの中に原因となる魔物、龍の眷属が潜んでいるのだろう。