第三八話 クソガキをぶちのめせ
「では試合開始」
「食らえー!」
開始と同時にアレク君が突っ込んでくるどうやらアレク君も拳闘士のようでオーラを纏っている。
だが驚くほど練度が低い。
具体的に言うとオーラが肉眼で見えてなおかつムラまではっきり見える。
大体厚さ2、3cmぐらいだ。
それにたしかに速いけどそこまででもない、動きに流れもないし、完全にステータス頼りだ。
それにどうやらアレク君はまだ全身に纏うことができないようだ。
ウフフ、これはお姉さん我慢した甲斐があるな…存分にぶちのめしてやろう。
アレク君が手に纏った「赤」が私の手に当たる瞬間、制御を奪い取り赤を打ち消す。
そしてそのまま受け止めてやる。
勿論私は肉眼では見えないレベルまで細かく、密度も高い「赤」を纏って。
そしてアレク君の気、SPを支配し全力で吸い上げてやる。
うんうん、レベルが高い分たくさん量があるねー。
その間にもアレク君は私の手から手を抜こうともがくが当然離さない。
…こんなもんかな、二十秒程ですべての気を奪い取り、SPが無くなったため息切れをしているアレク君を絶妙な威力で腹パン。
これくらいなら気絶しないでしょう。
…………
「こ、こうしゃんでしゅ、まいりまギッッ」
「最後は死なないらしいので、隙だらけだったせいで好きなだけ編み続ける事が出来たため今までにないほど密度が上昇している「赤」を纏って全力で蹴り飛ばす。」
アレク君は結界にすごい音を鳴らして激突、崩れ落ちる。
どうやら気を失ったようだ。
まあ危険がないのにそここまで諦めずに戦ったところは褒めてやってもいいかな。
初めの方は勝てないとわかっているのに必死に立ち向かってきたアレク君だったが向かってくるたびに雑に殴ったり蹴ったりで結界の端っこ辺りまで吹き飛ばしてるうちに段々涙目になって来ていた。
具体的に言うと最初は「クソ、俺が負けるわけ無い」から最後は「うううぅぅわあぁぁぁぁ」と飛びかかってきた。
勿論すべて殴り飛ばしました。
あ、一応顔は避けたよ。
あれ?王様に言われたのは物理的に跡が残らないようにだっけ…
というか戦ってみた結果多分全然騎士達のほうが強かった。
もしかしたらこの年齢にしてはこの世界でも強い方だったのかな?
まあどうでもいいか。
中央の国にバートン王国と言われるものがあり、そこには9歳から入学できる六年制の学園というものがあるらしい。
きっとこんなクソガキがいたんじゃあ学園内の人たちも困ってただろうし、もしまだ入学してなかったとしても今のうちに性根を叩き直しておけばきっと沢山の人が不快な気持ちになるのを避けられるだろう。
そう考えると私はいい仕事したな〜
おっとまだ仕事が残ってた。
回復魔法で回復してもらったアレクくんのもとに行く。
「ねえねえアレク君?アレク君は学園に通っているのかな?」
「は、はい今年で2年目で今は休みです。そ、そのハルさん、でしたよね?さっきは生意気なことしてすみませんでした。」
アレクくんが青い顔をして謝ってくる。
私は優しい顔でニコニコしていただけなのに不思議なこともあるもんだ。
「うんうん、そうだね~どんな人に対しても人を不快にさせないような言葉遣いを心掛けようね。お姉さんは口先だけの人は信用しないからね、まあ君が変わったのかは君の評判で判断させてもらうよ。」
「は、はい以後気をつけます。」
おやおや?どうやらこんな成りして敬語も使えたようだ。
これは意外かな
王様の下に戻ると何とも微妙な顔をした王様がいた
「ハル、君の力はよくわかったよ。これなら問題もなさそうだね。それとハル、お礼を言わせてもらおう。あの子のヤンチャさには前々から困らされていたんだ。きっとあの様子ならあの子も自分を改めて前に進めるだろう。」
{クエスト 実力を示せ がクリアされました。}
「そうそう依頼の話だったね、我々は魔物の被害を調べてみたんだ、するとここから東の方にあるコロネッタ村という村からここ一ヶ月で魔物によって滅ぼされたということが分かった。いわゆる開拓村と言うやつでね、まだできたばかりで人も少なかったためあまり気にする人もいなかったらしい。そしてそこの住民に話を聞いたところ数匹の金の魔物によって滅ぼされたらしいのだ。つまりこれはこの辺りに龍の眷属が居る可能性が非常に高いということだ。なんでもいいから情報を持って帰ってくれ。頼んだよ。」
{クエスト 魔物の変異の原因 が発生しました。}
そう言って私にコロネッタ村への地図と500ゴールド、それとなバッジ的なものを渡してくる。
このバッジを着けておけばなんか優遇されるらしい。
こうして私は王様の下を去った。
この依頼はかなり危険だろう。
もしも死んでしまえば、軍資金も失い、勿体無いことになってしまうので、できる限りの準備をしてから向かうことにする。