第三六話 依頼
「呼び出されたので。付いてきてください。」
コクン
…まさかアニメとかでよく見る謁見の間みたいな人がいっぱいいる場所とかじゃないよね。
なんかデイクに見せた手紙からして結構な一大事って感じの反応だったから王様クラスに届いてても不思議じゃあ無いっていうのがまた怖い。
それにここ王都だし一番最初にたどり着くとしたら間違いなく王様でしょ。
困ったな、そんなところだったら紙渡せないんだけど…
そんな事を宿を出れば用意されていた馬車に乗りながら考える。
幸いなことに連れて行かれた場所は王城ですらなかった。
なんかクソでかい商会っぽい建物の応接間みたいなところに通された。
そこにそこはかとなく高貴そうな人が座ってる、その隣にヤンチャそうな子供も座っている。
何かあと魔力感知にも引っかからないし目視もできないけど気力感知に引っかかった人が一人。
どうやら拳闘士ではないようだが気を操っているようだ。
恐ろしく自然な気の流れ 私でなきゃ見逃しちゃうね。
ていうか勘だけど、この高貴そうなおじさんもめっちゃ強い。
だってこのおじさんの気は感じ取れないもん。
気を自然に見せることと完全に感じ取らせないこと、どちらが難しいかなんてわからないけどどっちにしろ強そう。
「では自己紹介からだな、私の名前はクラリア・リトランド。このリトランド王国の国王だ。」
なんか脆いたほうがいいのかなって思ったのでとりあえず脆こうとする。
ていうかこの王様は普通にいい人そうだな。
よくあるアニメとかに居る肥えた体つきの王じゃなくてかなりスレンダー王様だ。
「よい、ハル、そなたは異邦人であろう。自国の国民でないどころか他の世界の人間がわざわざ私に畏まる必要はない。それとこの場は無礼講だ」
そう、じゃあ遠慮なく。なんで私をここに呼んだの?あと私は初対面の人と話すのが苦手なので紙でやり取りします。
王様に紙を渡したらなんか子供が睨んできたけど無視。
「では私がそなたを呼んだ理由だな。それはわざわざこの時期に危険を惜しまずここまで来てくれた礼だな。まあそれと私が個人的に拳鬼の弟子に会ってみたかったからだ。まあその理由は先代の王が拳鬼と知り合いだったからだな。」
それでもう行っていいですか?
「まあ待てお礼もまだ渡していないし、私もせっかく私的な場で話すということで急いで業務を終わらせてきたのだ。だからもう少し話し相手になってはくれ。」
まあいいですけど…
「おお、それは良かった。最近は王になってから話し相手がおらんで寂しい思いをしておったのだ。まあこの国の者は無礼なことをしてしまえばこの国にいられないじゃろうからな。この国は北大陸から最も離れておる国じゃから最も安全であるしここに居られんくなっては困ったことになる者が多いんだろう。その点異邦人のそなたならこの国を追い出されてもどうにかなるだろうし、気楽に接してくれると思っておったのだ。」
妙にこの王様嬉しそうだな…
まあ私もログアウトしたら暇になるし気楽に話せる相手は多い方が嬉しい。
そういう意味じゃあ似てるのかもな。
……
「ところで本題に入るんだがハル、お主の持ってきた変異したミスリルがあるな。ああいった変異は通常はもっと北の方でしか起きないのだ。その理由は魔物のエネルギー元の一つである魔力のようでな、それが濃ければ濃いほど魔物の変異は起きやすいと言われておる。そしてその変異はその環境の特徴がよく現れたものになるのだ。だが最近はこういった変異が頻繁に起きておる。それもよく似た変異が広範囲でな。つまりこれは何者かによってわざと変異させられたという可能性があるということなのだ。」
なるほど…
そうだったのか、変異してたからミスリルなのに金色だったらしい。
「前にもこのような事件が起こったことがあるのだ。その事件の犯人?はとある龍だったんだが、龍とそれに率いられた大量の変異魔物によって一日で2つの国が消えた。まあこれは余談だがその龍を止めたのが拳鬼、お前の師匠だ。そしてこれはあのときの手口と同じかつ変異した魔物もかの龍が変異させたものと非常によく似ておる。つまりはかの龍の眷属が再び我々人類に仇をなそうとしていると考えるのが自然なんだ。そして我々は魔物の本拠地に目星はついている。だがその眷属と直接出会って逃げ切れそうな者は我が国での最上級の騎士ぐらいだろう。眷属本体はおそらくは低位亜竜だろう。殆どないとは思うが中位亜竜になるとおそらくは逃げ切れない。それに彼らは数が少ないため、人数を割きすぎるわけにもいかない。だが弱いものではたどり着くことすら出来ない可能性がある。ただここには都合よく実力がありそうで、いくらでも復活できる異邦人が居る。ただ無駄死にとなってはいくらなんでも可哀想だ。」
つまりはその魔物の本拠地着けるぐらいの実力ぐらいは示せってことでしょ。
「そうだ、すまんがワシの用意する相手と戦っていて実力の程を見せてはくれんか?お主に手伝ってもらいたい依頼があるのじゃが、それを託せるかお主の実力を見せては貰えんか?」
{クエスト 実力を示せ が発生しました。}
{クエストを受けますか?}
もちろん。