第二九話 四英雄
…あれ?MPが減ってる、なんでだろ。
いや、もしかしたら私はあの熊にMPを奪われ続けていたのかもしれない。
私だって相手のSPを奪えるのだ。
私よりも基礎的には強い熊なら私のMPを奪うことが可能でもおかしくない。
ゴーレムができなかったことから今まではこんなこともなかったのだろうが、これからはこういったことを可能とする敵が出てくるようになるかもしれない。
…私も魔力操作や感知を手に入れることを視野に入れておくか。
流石にわざわざ敵にMPを渡したくはない。
せっかくならサブジョブで魔法系を選択するのもありかな、無料で魔力操作や感知をゲットできるだろうしね。
盗賊が向かったのは本当に王都だった。
そして向かった先は高さ30mぐらいのでっかい壁があった。
そして、そこにある4mぐらいの門に向かって歩いていた。
そこで私は勘違いを正されることになった。
確かに順番待ちの行列で盗賊のくせに横入りすることができるのは不思議だなとは思った。
「よう、デイク、何かあったのか?」
何故かいきなり順番待ちの行列をさばいていた門番っぽい人が盗賊に話しかけたのだ。
えっ、なんで?
「いや〜それがな…無事に依頼の敵を倒せたんだがなちょっと困ったことになってな。……」
まあ、なんやかんや盗賊が説明して私は結局のところ別室で事情聴取されることになった。
いやね、そのね、なんかね、話を聞いていたら色々な情報が入ってきた。
私が盗賊だと思ってた人達は騎士だったらしく、最近は密輸が流行ってるのであんなところを一人で旅してる小柄な女性は明らかに怪しいということで持ち物を見せてくれって言ったら殴りかかってきたって説明が門番の人になされてた。
でも、熊との戦いにはこちらをサポートするように戦ってくれたし、大人しくついてきてくれたし実際のところは悪人なのかどうなのか判断に迷っているんだそう。
「で、実際のところはどうなんですか?」
門番が質問してくる。
騎士じゃなくて盗賊だと思ってました。
紙で答えたが別にこういう人もたまにいるのか、は分からないけど当たり前のように受け入れてくれる。
と答えると門番が「あっはっは」とデイクと呼ばれていた騎士を指さしてと大笑いを始める。
デイクは不機嫌そうに門番を見ている。
そのまましばらく笑い続け、息を切らしながら私に向かって質問をしてくる。
「もしかして君は異邦人かい」
はい
「そうか…たどり着くのはもう少し後になるだろうと思っていたがもうここまで来るものが現れるとはね。ところで君名前は?」
ハルです
「そうか、ハルか。ではハルさん、悪いがこの石に触れてくれないかい。これに手を当てれば許可した情報が開示される。この石は開示したくない情報は開示されないようになっているから、開示したくない情報は選択してくれ。ただ、できれば称号は開示してほしいかな。罪を犯したら称号に反映されるから、見せてくれないなら怪しむことは避けられない。」
はい
まあ別に不都合はないし別に隠すものはないかな。
ということですべてを許可した状態で石に触れる。
するとウィンドウが表示される、そこには私のステータスが表示されていた。
『え?』
と驚いたようにこちらを振り向く
騎士の方が驚いたように「拳鬼ってあの拳鬼!?」
と興奮したように聞いてくる
わかんないです
今度は門番が「えー!君あの拳鬼を知らないのかい?」
なんて聞いてくる
わかんないです。拳鬼って誰ですか?
「そうか〜そういえばハルさんは異邦人だったね。なら私が拳鬼について教えてあげよう。」
曰く拳鬼とは世界に4人存在する四英雄の一人に数えられる存在らしい。
因みに残り3人は剣聖、大魔導師、天弓らしい。
因みにこれは称号であってジョブとは違うみたい。
強いだけの人なら何人か他にもいるそうだが、偉業を成し遂げた場合に世界によって認められる。
という現象が起こるらしい。
因みに爺さんの偉業は「龍殺し」だってさ。
50年前に黄金の龍が現れてその龍が2つの国を落とした。
その龍を単独で殺したのが拳鬼らしい。
…えっそれマジで言ってんの?
だとしたらあの爺さんめっちゃすごい人じゃん。
弟子になっただけでスキルポイントがジャイアントキリングと同じだけもらえたのは流石に違和感を感じたけどこれが理由だったのか。




