第二八話 盗賊と王都へ
おや、ほとんどダメージが無いぞ?
驚いたことに私はほとんどダメージを受けていなかった。
全身に纏ったとしてもこれ程ダメージを受けないのは経験的にはおかしい。
なぜだろう?
っと考える余裕は今はないかな。
どうやら盗賊の皆さんは壁役の私が途中で消えたせいでやられてしまったようだ。
かなりの数の水の槍が私に迫ってくる。
私はそれを余裕を持って避けた。
なぜ簡単に避けられたかって?
理由は簡単、足に「赤」を纏っているからだ。
そのおかげで地面を蹴る力が上がり、速度が早くなったのだろう。
ただ、攻撃する手段が存在しないということに気づく。
どうしたものか…やはり盗賊の皆さんも特殊な攻撃力の高い技で無理やり防御を破っていたように思う。
同じことを真似できるとも思えないし…
カッコよく技術の力で貫通させるなんて方法も思いつかない。
そろそろMP切れを起こさないかな…
だが案の定、中々MPを切らす素振りを見せない。
仕方ない、こっちから攻めるか。
とりあえずまた水の防壁に巻き込まれるなんてことにはなりたくないので近接戦はできれば避けたい。
とりあえずそこら辺にある石やら木やらを投げつけてみる。
ただやはりと言うべきか効果なし、水の防壁に巻き込まれて消えてしまった。
ここはやはり力技で貫くしかなさそうだな…
ということで気合を入れて気の密度を普段が1.5倍程で使用しているのに対して3倍に引き上げる。
ぐっ、やはり密度を上げるのは簡単でもすべての気を操るのは手間だ。
というかめっちゃ大変。
この量を操るには気の一つ一つに割くリソースを極限まで減らさなければならない。
ということは〜気を編みます。
気を編めば支配力を更に上げることができるためこの量でも操りきれるだろう。
いつも維持している雑な出来の編み込みを外し、丁寧に丁寧に繋げていく。
…よし、完成したぞ
これで決めたいところだ。
ここまでまた編むのは流石に勘弁してほしい。
急がないと気の編み込みが解けるかもしれない。
熊が腕を振るい、水の槍を創り出す瞬間、私は動いた。
足に「赤」を纏い、一気に距離を詰める。
そして水の防壁を無視して両手に纏わせた「赤」が奴の胴体に次々と突き刺さる。
こうして熊を完全にポリゴンに変え私は戦いに勝利した。
ワールドアナウンス{徘徊型ボス アクアベアーが初討伐されました}
こうして最後は呆気ない勝利。
勝った、勝った、と勝利の嬉しさが勝利を実感してからしばらくしてやっと感じられるようになる。
こんなに嬉しいのはいつぶりだろう。
まあとにかく勝つことができてよかった。
スタミナが限界に近いため寝っ転がっていると。
盗賊が起き上がったのが感じられた。
「おい、そこの君!先程仲間が気に障ることをしたならすまなかった。そしてさっきは助かった。俺たちに協力し、俺たちを生かしたことからあなたに敵意はないと思ったのだが、王都までついてきてくれなか?」
するとなぜだか盗賊が、王都について来いというか提案をしてきた。
…いやありえないだろ、なんで盗賊が王都に行くん?
それに敵意がなかったんじゃなくて忘れてただけだし…
十中八九嘘だろうが、本当ならば王都まで連れて行ってくれるのはありがたい。
一応ついていくか。
了承の意味を込めて頷く
するとどうやら向こうはあかさまにホッとして、「ついてきてくれ」と言って、歩き出した。
ステータスを確認しながらついて行く。
名前 ハル
種族 獣人 level81
ジョブ 拳闘士 level90 :サブジョブが獲得可能です
HP530/1000+50
MP2/292
SP455/2240+50
攻撃100+10
防御100+10
敏捷195+10
魔攻0
魔防5
生命0+5
魔量0
持久80+5
器用0
幸運7
ステータスポイント42
スキル
(五感強化level34)〔気力感知level15〕〔気力操作level16〕(SP消費緩和level14) (拳術level5)
(HP回復速度上昇level2)(SP回復速度上昇level3)(攻撃強化level2)(防御強化level2)
(敏捷強化level2)(生命強化level1)(持久強化level1)
スキルポイント60
称号
(プレイヤー)(拳闘士)(C級冒険者)(ジャイアントキリング)(拳鬼の弟子)
おや8レベルも上がったのか。
まあ、あいつ強かったしこんなもんかな…
ああ、そうそう私は最近魔法に脅威を感じて魔防にボーナスポイントを振ってるんだよね。
たったの5だけどこれのおかげで水に巻き込まれた時もそこまでダメージを受けなかったんじゃないのかなと思う。