第二六話 水の防壁
いや、盗賊の強化ではなく熊の妨害ならどうだ?
早速試してみる。
イメージするのはまだ気の扱いに慣れておらず、まだ気が体の動きの邪魔をしていた金の兎との戦いである。
すぐ近くであればレベルが上でも気を操ることのできない熊の体内の気に干渉することは不可能ではない。
狙い目は私を直接攻撃するタイミングだな…
ここ!
どうやらうまく行ったな。
今回はしっかりと攻撃の速度を落としたので余裕を持って回避し、胸に潜り込んでカウンターを決めてやることに成功する。
まさか熊も先程まで回避するので手一杯だった相手がいきなり反撃に出てくるとは思っていなかったのか、意表を突かれたようでかなりいいのが入った。
そして反撃され始めたことを警戒してか、熊の攻撃が消極的になっている。
攻撃をしなければ良い的なのに、何してるんだろう?
そう思った途端熊から水が溢れ出した。
いやマジで何言ってるかわかんないかもだけど、どこからともなく熊から水が出てきた。
そしてその水が熊を覆っていく。
くっそ、しまった。
動きが消極的だったのはどうやらこれが理由だったようだ。
水の防壁、それは近接武器の天敵と言っていいだろう。
しかも見た感じでもかなりの速度で流れているようで、下手に触れば巻き込まれそうだ。
もしも水を多少でも動かせるとしたら、攻撃をギリギリで回避するのも危険だろうし安易に近づくのもダメだ。
というかおそらくはこの熊ならできるだろう。
理由はこいつが水の防壁を発生させたまま、水の槍を放ってきているからだ。
水の槍を放てる余裕があるのだから、それに使っているリソース分を防壁に回せば今行ったことも実現可能だろう。
まあ水の槍が少なくなったことで私は直接攻撃にも集中しやすくなった。
だから余裕を持って回避することが必要になることはいいのだ。
あれだけの水を出したのだ、勿論消耗も大きいはず。
ただそれには相応のメリットがある。
こちらの攻撃が通らなくなったことだ。
弓使いの矢も水の防壁に巻き込まれて攻撃を与えられない。
つまりは熊は私達の攻撃を警戒する必要がなくなったのだ。
一人一人に集中して攻撃されたらいくら水の槍が少なくなったと言ってもやられてしまう。
そう考えていたときだった。
「エンチャント・ウィンド」
盗賊の弓使いが「エンチャント・ウィンド」と声に出して言ったのを五感強化によって強化された聴覚が拾った。
その瞬間、恐ろしい速度で私の視界の端っこを何かが通り過ぎたのが分かった。
「グワアアアァァァァァ」
それまで特に咆哮なども上げていなかった熊がいきなり騒ぎ出す。
そしてその声の大きさに相応しい大暴れをした後、熊が上げた顔は怒り一色だった。
そしてその左目には深々と矢が刺さっていた。
何が起きた?今の出来事は私を驚かせるのに十分なだけの要素を含んでいた。
まさかあの防壁を突破したのか?
どうやったのだろうか?
まあいい、有利になったのはいいことだ。
と思ったが次の瞬間熊が弓使いに向かって走り出す。
まずい、先に自分を傷つけることができる者から攻撃する気だ。
あの人を守らないと攻撃の手段が失われる。
そう思いどうするべきか考える。
「強撃」
「グギャァァァ」
弓使いに続いて前衛の一人が凄そうな技を繰り出す。
これもしっかりと防壁を突破したようで、熊は苦悶の表情をする。
水の防壁が揺れる。
どうやら痛みで制御が効かないようだ。
これならいける!そう思い私は熊に近づき「青」を纏った拳を振るった。
「へ?」
そして攻撃が当たる瞬間、防壁が復活した。




