第二十話 龍の残滓
こ、こいつは諦めるという単語を知らんのか…
ワシはあれから3日間ほどハルの成長を見守った。
ハルはあれから今まで全く諦める素振りを見せず、自身と向き合っておる。
当たり前のように毎日のように数時間訓練し、どんどん気力を操る精度を上げておる。
しかもそんな事ができるほどに集中しておるというのに、当たり前のように休むことをせん。
こいつ大丈夫かの?
まあ異邦人じゃから大丈夫だと思いたいところじゃが流石にこれは心配してしまう。
おそらくこうして休むことなく気を操り続けることができるからこそ、ここまで短期間でこのレベルまでスキルレベルを上げることができたのじゃろう。
にしても異常な集中力じゃ…休むことなく操り続けるだけでなく、自分に可能なだけの精度を常に維持しておる。
…なんと!ハルのやつもう気力を編む技術を身に着けかけておる。
どれ少しイタズラでもして、練度を試してやるか。
ホッホッホ、まだまだよ。
ハルのやつはワシのイタズラに対して怒ったのか殴りかかってきよった。
だがまだまだ気の支配力が弱いので楽々気を奪えてしまう。
…にしてもハルの成長具合は見ていて面白いものがあるな。
とにかくおそらくはここまで編めるようになったのなら、後は自分一人でも練習する事が可能じゃろう。
ということで実際はもっと早くに教えるはずじゃった気の圧縮、つまりは密度を上昇させる技術を教えた。
っとそうじゃそうじゃ危うく忘れるところじゃった、ギルドの方から聞いておけと言われておったことを忘れておったわい…
…質問に対してハルは知っていると答えた。
それは別に良い、ただその後出したものが問題じゃった。
それはあのときの龍、その仲間の中でも強めの生き残りが存在しているということを証明する証拠だったのだから。
最近金を纏った魔物が増えてきていると話題になっていた。
まあそんなこともあるだろう、しょせん生き残りがいたとしてもそこまで大したレベルでもあるまい、そう思っていたがそれが間違いだったことに気付かされた。
…このレベルでミスリルゴーレムを変質させるとは…最低でも亜竜級じゃろう。
まさかそこまでのレベルの者を取り逃がしておったとは…
まずこの金色はあの目立ちたがりの眷属じゃろうし、ここまで活動的になったのならばそろそろなにか仕掛けてきそうじゃな…
おそらくはあと2ヶ月ほどで起きる魔物の氾濫と同時期に動くつもりじゃろう。
いくらワシでも人類がなんの理由もなく多大な被害を受けるのを良しとするわけではない。
ハルにでも王都に行かせて注意喚起でも出してもらうとしよう……




