第一二話 詐欺師
俺の名前はジャックス
裏社会の人間だ。
まあその中でも下っ端も下っ端なので特にすごい力があるわけではないが。
俺は今自分が最高に運がいいと思った。
何故か?理由は簡単
異邦人が金になるものを背負ってきたからだ。
それも特大の。
そもそも異邦人というのはここ数日の間にいきなりどこからか湧いてきた存在だ。
そしてそいつらは自分が騙されるなんてことを全く考えていないだから俺らからすれば格好の的なんだ。
と詐欺が得意な俺の同僚は言っていた。
それに今俺の目の前にいるカモが持っている物は非常に珍しいラビットの突然変異であるホーンラビットが更に非常に濃い魔力を浴び続け、進化したものの角だ。
俺も人生で見るのはこれで2回目になる。
特にこいつの角は非常に硬い上に、魔力の通りが非常によいため品質が良ければ300ゴールドを超えることもあるらしい。
ただこの値段はこれらの効果故のものではなく、貴族様方に観賞用として購入されているからの値段らしい。
ちなみに一度目はかなり前に王都の大規模なオークションだ。
俺は人に詐欺をするのは苦手だが、仕方ない。
大金を得るにはこれしか方法がないからな…
目の前にいる異邦人はこう見えても特殊なホーンラビットを倒した手練だ。
個体によって大きく強さは異なるらしいがこいつが倒したのが最弱レベルだったなんて希望的観測はできない。
俺も多少は戦えるが、もしこの異邦人が単独で撃破したのだとしたら勝率は5分5分だろう。
奴らはインベントリというものを消したり召喚したりするスキルを持っていて消す前に奪い取ることともなるとほぼ不可能だ。
それに俺らは死ねば一ヶ月後に復活するのに対し奴らは瞬時に復活することもできるらしい。
やはり騙し通すしか方法がないだろう…
ちょっと強引に不信感を持たせてでも騙して奪い取り、こいつが気づいてもその時には他の街に向かっている。
みたいなことも考えた。
ただ後3ヶ月で4年周期に起きる魔物の力が何故か最大限に強化され、大量発生する魔物の氾濫が起きるだろう。
とにかく普段なら一人で王都まで行けるが、今の魔物はかなり強くなっている。
行けるかもしれないがかなり危険だろう。
やはり完全に騙して違和感すら感じさせないのが理想だろう。
………
いけた。
あっさりと行けてしまった。
娘が病気で、もはや一刻の猶予もないとかありもしない作り話をでっち上げ、早期の選択を迫った。
多分誰かに相談されていたらすぐに看破されていただろうから。
ははっ
それにしてもマジで行けるとは
やはり同僚の言う通り異邦人はカモだぜ。
さっさと売っぱらっちまおう。